シブヤ大学

授業レポート

2011/3/9 UP

自然との共存を身をもって知る2日間

普段のキャンパスを飛び出して群馬は赤城に向かう、この授業。集合時は天候に恵まれず、大雨の中を出発しました。一行が乗り込んだのは通称"天ぷらバス"食用廃油から精製した燃料で走るエコなバスです。

本日の行き先であるサンデンフォレストは、自販機や冷蔵什器のトップメーカーであるサンデンの持つ工場です。自然と共存する工場のコンセプトのもとにつくられ、社内には工場建設に際して、専門の部署がたちあげられました。森林の整備や敷地内の自然を活用した環境教育を継続的に実施し、工場と自然という一見、相反するような二つのバランスを上手にとっている不思議な場所です。

施設に着いて、赤城自然塾の皆さんと合流すると、いよいよプログラム1のスタートです。まずは施設の概要や松枯れの現状を伺いました。この赤城の地には、戦後、水害をふせぐために、大量の松が植えられました。しかし、木材が売れなくなり、人の手が入らなくなると、整備のために農薬を使うようになります。近年、人体や環境への影響から、この農薬散布をストップしたところ、急速に松枯れが進んだといいます。野菜を育てる時に間引きをするのと同じように、森もほったらかしにしていては、一つ一つの木が健康に育たないのだそうです。他にも、酸性雨などを原因とする節もあり、過去の授業では、雨によって酸性化した土壌を中和するために、枯れた松を炭にして、それを土に撒く作業をしたそうです。自然は自然にしておけば問題ないのだと思っていたのですが、昔と違う暮らし方をしている今では、きちんと手を入れてやる必要があるのだということが分かりました。

森づくりの重要性がわかったところで、ここからは実践編。鎌や草刈り機で下草を刈り、チッパーという機械で細かく粉砕します。簡単そうに見えるのに、硬い篠には手こずるし、草刈り機は回した途端に蔓が絡むしで、さっそく作業の大変さを実感しました。
それでも、大勢で汗を流すと楽しいものです。都会では、なかなか経験できない作業にすっかりはまってしまい、チェーンソーのような危険な刃物も一人残らず、体験しました。
最後に披露して下さった牽引型の伐採は迫力満点。
安全を確認しながら目的の方向へ木を切り倒す作業は、想像以上に緊張感を伴うものでした。

一汗ながした後は、リサイクルセンターやビオトープなどの場内の施設を見学しました。ここでは、ゴミを97種類に分別して、99.9%リサイクルしているそうです。毎日そんな細かい分別を実践するのはさぞかし面倒だろうと思いますが、環境を守るとは、そのぐらいの意識で取り組まなければいけないことなのだとも思わされました。でも、この工場ができて、管理をするようになったことで、生物の種類が増えたという話を聞くと、そんなところに頑張り甲斐を見出せるのかなと思います。蛍が見られる職場なんて、そうそうないですよね。

施設に戻ると、森の土壌の保水力についてを実験で解説してくださり、最後に感想をシェアして、理解を深めました。この一日で森に対する考え方が変わった人も多く、今後こうした活動をどう広めていけばいいのかといったアイディアを交換した班もありました。

山の日暮れは早く、宿泊所へ着く頃には辺りは真っ暗。ご飯も食べずにナイトウォークに出かけると、空には星がいっぱいです。都会に暮らす身には、これだけで来た甲斐があるというものです。
涼しい風の通り抜ける道を行くと、松枯れの激しい土地も見ることが出来ました。申し訳程度に数本生えている松も心なしか風にかしぐ姿が弱々しく見えます。
改めて、松枯れの深刻さを感じることができました。

締め括りは地元の方との交流会です。赤城の綾小路きみまろこと六本木さんのリードで、最後には、お互いの幸せ観を共有するまでになりました。お開きになった後も、まだまだ話し足りない!とばかりに、1つの部屋に集まり、まるで、気心のしれた仲間との合宿のようでした。


【2日目】
ツーリズムの朝は早い。
6:30 から散歩と宿泊者たちが集まり、ラジオ体操で朝がスタート。眠い目をこすりながらも、快晴の森の中を歩き、体操をすると自然と目が覚めてくる。森を歩く前には、生徒に呼吸法のトレーナーをしている方がいて、「朝の深呼吸の授業」がスタート。まさに誰でも生徒誰でも先生のシブヤ大学ならでは。突如始まるイベントにも快く参加してくれるなんて今回の参加者さんたちは本当に優しい人が集まったなぁと有り難く思う。

そんなこんなで朝食を終えたら、すぐに部屋の片付け!シーツの向きまで調整し、完璧なる状態で部屋を出ます。こんなに厳しいチエックは学生の合宿以来かも。きっとみんなもこの一泊で学生気分を味わったに違いない。

バスに乗り込み、向かった先は、「林牧場・福豚の里、とんとん広場」。入り口には可愛いブタちゃんがお出迎えしてくれる。ブタってかわいい!と改めて思ったその直後、施設に入ってすぐに始まったのは豚の脱骨解体作業。普段見慣れない光景にびっくり。職人技で解体する技にもびっくりだが、すごくキレイな肉の色にも目を奪われる。なんだか、さっき入り口で見たブタちゃんたちと目の前にある肉のカタマリが同一のものとは思えなかった。私たちはあまりに当たり前に包装された肉のカタマリだけを見ていて、命あるものから食べさせてもらっていることを忘れてしまう。いつも食事は美味しく、残さず!そして感謝の気持ちを持って頂きたいと思った。
その後は人生初のウィンナー作り。意外と簡単に腸詰めが出来てすごく楽しかった。このウィンナーはお土産に持って帰れる。帰ってからの楽しみが一つ増えた感じだ。
お昼はそのまま林牧場が提供する『福豚』のしゃぶしゃぶを頂く。ここの豚さんはとても衛生的で大事に育てられているので、しゃぶしゃぶ灰汁もほとんど出ず、本当に美味しかった!つけあわせも、近くの農場で取れた新鮮な野菜を一緒に頂きました。自分たちで取った野菜をすぐに食べられる喜びはなかなか味わえない体験です。


お腹がいっぱいになったメンバーが向かった先は、「ぐんま昆虫の森」。雑木林や小川、田んぼに畑。里山の環境の中で色々な生きものに触れられる場所です。普段は見慣れない昆虫が館内はもちろん、森のいたるとこに!それでも普通に歩いていたら、見逃してしまう。なんたって虫たちは隠れるのがすっごく上手だから。ここで我らの救世主、昆虫の森のガイドボランティアの方と一緒に回ると、あそこにも、ここにも!次々と見つけてくれる。色々な虫を見て、さすが昆虫の森!と満足してしまったけれど、園長さんのお話を聞くと、都会に比べれば多いものの、昔に比べると虫の数はどんどん減っているらしい。環境の変化に虫達がついていけないのだ。すごいスピードで変化している地球環境を目の前に、自分では何が出来るのだろう。地球は人間だけの住む場所じゃないのに、人間の都合で世界を変えてしまった。それでも、もう手遅れだ!と諦めないで、今から出来ることをしていきたい。持続可能な社会って、きっとみんなでこれから作っていくんだ。最終日にして、いろんなことを思い出し、そう思った。

名残惜しくも、あっという間に帰宅の時間が迫る。帰りは電車で、みんな思い思いに語り合い、連絡先を交換して、次に繋がる出会いがいっぱいのエコツーリズム。この二日間で出会えたみんなにありがとう!って言いたい。本当にありがとうございました。


(1日目レポート ボランティアスタッフ:茅野小百合)
(2日目レポート ボランティアスタッフ:笹尾実和子)