シブヤ大学

授業レポート

2010/11/24 UP

手のひらにちいさな世界 ~豆本をつくってみよう~

「豆本」。
それは、手のひらに乗るような、小さな本。
今日の授業では、なんとこの豆本を作ります!
ミニチュア好きの私としては、それだけでワクワクしてきます。

先生の赤井都さんは、豆本のプロフェッショナル!
本の中身の物語から、なんと製本・装丁まで、全てご自身でやってしまうとか。
実際に、赤井先生が出版された「そのまま豆本」を、手にとって眺めてみました。
それはなんと、本のページを切り取って組み立てると、自分で豆本を作ることができるという優れもの!
本そのものを眺めるだけでも楽しい!
さらに出来上がった豆本は、小さいのに、物語がちゃんと印刷されているだけでなく、
カバーやしおり、帯までついているものや
豆本ならではの変わった形のもの(ビスケット形、アコーディオン形、カバン形、…)などなど、
とっても可愛い!豆本の世界って、こんなに広く深かったんですね!


<材料>

今日教えていただくのは、「継ぎ表紙」という方法。
表紙と背表紙が硬い厚紙でできている、いわゆるハードカバー本です。
最近は書店でも見かける機会が少なくなりましたが、
こういうしっかりしたつくりの本って、大切にしたくなりますよね。

さっそく、材料選びです。表・裏表紙、背表紙、内側の見返しの紙、と、各自の好きな色・柄を選びます。
ここで早くも、生徒さんそれぞれの個性が!
ちなみに私は、表・裏表紙は赤、背表紙はピンク、見返しは黄色を選びました。

そして、赤井先生の「特製キット」として準備された材料は、こんなものたち。
(専門用語が多いのですが、なるべく使わずに書きます。)

・本文用紙(見返しを付けて二つ折りにして、綴じ穴を開けたもの。ここまでは先生の手作り!)
・表・裏表紙用と背表紙用の台紙(ボール紙)
・表・裏表紙用と背表紙用のオモテ紙(中性紙など)
・のり引き紙、新聞紙
などなど。

その他にも、カッター、カッティングボード、ボンド、筆、はさみ、針、糸、鉛筆、
…その他、先生オリジナルの道具がいろいろ。


<つくり方>

本当はとても繊細な作業なのですが、ここでは大雑把に説明します。

(1) 背表紙用のボール紙(台紙)を、背表紙用のオモテ紙の中央に置きます。背表紙の台紙から、左右5mmの間隔をあけて、表・裏表紙にあたるボール紙を並べます。この5mmの溝が、本を開け閉めする時の、遊びの部分になります。(先生は、幅を取るためのオリジナル道具として、幅5mmの板を用意されていました!) そして、 背表紙用のオモテ紙に、ボール紙をボンドで貼り付けます。

(2) 綴じ穴を開けた本文用紙は、細い麻糸を使って、先の丸い針で綴じます。ミシンで縫うと、一ヵ所切れただけでほどけてしまうけれど、手縫いだと簡単にはほどけないそうです。

(3) (1)(背表紙と台紙を貼り付けたもの)に、表・裏表紙用のオモテ紙を、背表紙オモテ紙に1~2mm重なるように貼ります。貼り付けられたら、オモテ紙の余った部分を、後ろ側に折り込んで、ボンドで留めます。

(4) (2)(糸で綴じた本文用紙)の背にボンドを塗って、背表紙台紙に貼り付けます。見返し部分はデンプンのりで、それぞれ表・裏表紙に貼り付けます。ここまでで、本の形が完成!

(5) 一体になった本を、紐でしばって新聞紙でくるんで、一晩プレスすると、豆本の完成!


本文では簡単な説明になりましたが、この豆本を作るにあたっての先生の工夫には、
本当に頭が下がる思いでした。
まず、一つ一つの道具をご自分でカスタマイズしていること。私たちが今日作った豆本だって、先生が準備してくださった「特製キット」があったから、できたようなもの。まさか自分でハードカバー本を作れるとは思わなかったけれども、先生が目の前でお手本を示してくださって、アドバイスしてくださったおかげで、なんとかそれらしいものを作ることができたのです。
今日の授業では、作ることを楽しみながら、プロのお仕事の片鱗を見たような気がします。

これからハードカバーの本を見るたびに、きっと私は、この授業を思い出すことでしょう。そして一冊の本に、これだけの想いがこもっているということを。


(ボランティアスタッフ 田中万里子)