シブヤ大学

授業レポート

2010/6/25 UP

一見さんいらっしゃい。日本料亭のおもてなしに触れる

凛とした空気、という表現がピタリと合うその空間は、
渋谷駅から望めるセルリ アンタワー東急ホテルの地下2階「数寄屋 金田中」。
今回の授業は、日本二大料亭に数えられる「新ばし・金田中」の若女将・岡副徳 子さんを先生にお迎えして、
「おもてなし」の心や料亭でのマナーを学ぼうというもの。

お食事代として一人15,750円をいただくということで、
募集しても定員いっぱい にならなかったらどうしよう……
という、今回の授業コーディネーター望月くんの 心配とは裏腹に、
10名の定員に120名もの応募があったとか。


11時半からスタートした授業は生徒さんの自己紹介からスタート。

「料亭って興味はあったけど敷居が高くてなかなか自分では行けないので
今回はとても楽しみにしてきました!」


きっと今回授業に応募した多くの方が同じように感じていたのではないでしょうか。
生徒さんだけでなく僕たちスタッフも、
まだ覗いたことのない新しい世界へ 踏み入れるようなワクワクとちょっとの緊張と、そんなスタートです。


早速、若女将の岡副さんが登場。

「こうゆうのは私も不慣れなもので」と言いながらも、
ご自身でご用意くださっ たレジュメを元に、
料理屋と料亭の違いや金田中の歴史、芸者さんのお話から料 亭でのマナーなど、
一からわかりやすくお話してくれました。

まず料亭とはその国の食と文化を楽しむ場所であるということ。
料理だけでな く、芸者さんなどと言った日本の文化を楽しむというところが料理屋さんとの違 いなのだと。
そして日本料理に一番大切なのは四季を料理に反映させること。

「前シーズンの名残と、今の旬と、次のシーズンのはしりを料理に取り入れ、
四季をお皿に映していくのです。」


更にお話は続きます。

料亭を利用する時の目的というのは誰かが誰かを「もてなす」時。
だから料亭で のマナーというのは、お店に対してどうこうということではなく、
一緒にいる人 と楽しい時間を共有するのが一番のマナーなのだと。
そのためには、予約の時に いかに仲居さんとよいコンタクトをとり、
その会の趣旨や段取りを伝えるかがポ イントなのだとか。


ふむふむ、なるほどなぁ。

一通りのお話を聞いた後、お待ちかねのお料理がスタート。
最初に登場したのは 竹筒に入ったとうもろこしのすり流しと枝豆のすり流し。
和風のヴィシソワーズのような感覚で、
お味はもちろんのこと、氷の敷かれた台に青竹の筒と小さな蓮の葉といった演出が、
僕たちを五感から楽しませてくれます。


「お着物が素敵ですね」
「やっぱり女将修行って厳しいんですか?」

すっかり場も和み、会話も弾み、お酒も進み、
旬の鱧の椀や鮎の塩焼き、お造り 等、次々と運ばれてくる料理にただただ楽しいだけの時間。


そこへ金田中3代目・岡副真吾氏も登場。

「料理人としては箸を止められちゃうのが一番困りますからね、さぁどうぞどうぞ!」

と、なんとも気さくに話しはじめ、料理の説明からご自身の話まで、
いろいろな お話をしていただきました。

「日本人は盃の文化なんですよ。食を共にし、盃を交わしながら人間関係を築 く。
そして文化が生まれる。遊ぶことこそ文化なんです。」


〆のご飯にデザートまでいただき、気付けばあっという間に楽しい時間も終了。


何かを学ぼうなんてことはすっかり忘れて、ただただ楽しい間に終わっちゃった なぁ……。

あっ! そうか、これがおもてなしなんだ!


凛とした空間、美味しい料理、それらを演出する器、女将との会話、つかず離れずの仲居さんたちのサービス。
ひとつもかけること無くその全てが僕たちを喜ば せてくれました。

授業の中で、おもてなしとはなんぞやということは一言も出てきませんでした。
でも、この感覚こそがおもてなしなのでしょう。



最後に「皆さんも、なじみの料亭のひとつやふたつをお持ちになられるのもいいものですよ。」と若女将。


道のりはそう近くなさそうですが、
こういった素敵な場所に見合う自分になれるように頑張ろうと思ったのは僕だけではないはず。


金田中のみなさま、素敵な時間を本当にありがとうございました!
またお会いできるの日を楽しみにしています!!


(ボランティアスタッフ:杉山 文野)