シブヤ大学

授業レポート

2009/5/28 UP

     

【第一章】
15回目になるシブヤ大学ツーリズムの舞台は、沖縄北西部にある『BEACE ROCK VILLAGE』です。
那覇市街に集合し、そこから村へ向かうために乗り込んだバスの中で、村で待つ今回の先生、イセハナコさんからの手紙が届きました。
“流れ星に願ったら、夢が叶っていた”
森を一冊の本に見立てたというハナコさんから、物語が始まるような一節を受け取り、皆さんもうれしそう。
だんだんと森が茂っていく道を眺めながら、これから始まる物語に期待はどんどん膨らみます。

空も真っ暗に更ける頃、ようやく村に到着。ハナコさんや村のスタッフ達に迎えられました。
「とりあえず、バーがあるので行きましょう!」と自己紹介もそこそこに宴の中へ促され、ハナコさんと、村のスタッフと、その日訪れていた旅人達と一緒に乾杯です。
沖縄のお酒と旅の話があれば、さっきまでのよそよそしさは嘘のよう。村に着いて1時間もしないうちに、初対面同志とは思えないほど打ち解け合い、宴は遅くまで続きました。

【第二章】
二日目の朝、ニワトリの声で目覚めた私達を迎えてくれたのは、夜には見えなかった絶好の景色。
圧倒的な自然に囲まれていて、深い緑と遠くに見えるブルーの海が本当にきれいでした。
皆でひとしきり写真を撮ったあと(笑)、さっそくプログラムの開始です。

■「朝食つくり・朝のそうじ」
全てを自給自足でまかなうこの村では、畑、牧場の世話はもちろん、水だって村の麓から運んでこなければ成り立ちません。
朝は、毎日分担をしてこれらの仕事をする村のスタッフのお手伝いです。
料理上手のスタッフさんの指示に従いながら料理をする班と、馬や牛の世話、糞を混ぜて堆肥を作る班に分かれて作業を行いました。
なかなかの力仕事もあり、終わる頃にはみんなお腹がペコペコ。
お釜で炊く少し焦げたごはんと採れたて野菜で出来た朝食は、一仕事終えた私たちには最高に贅沢な食事に大満足でした。

■「BEACH ROCK VILLAGE案内&探検」
朝食の後は、この村の村長であるアキさんに連れられ、この村を探検します。
何もかもが手作りでできているこの村のあらゆる建物は、自然と調和されていて、それでいてオシャレ。
トイレやお風呂はもちろん、カフェやテラス、鶏小屋にガーデン、ピザ窯やギャラリー、ツリーハウスや巨大ブランコ。
所々に散りばめられた工夫や遊び心満載なそれらを、のんびり散歩しながら案内してくれました。
そして、村中のあらゆる所に隠されているというハナコさんの描く物語が詰まった宝箱を探します。
ひとつはツリーハウスの上に。
ひとつはファクトリーの中の小さな隠し部屋に。
ひとつは風通しの良いカフェのテーブルに。
いたる所に隠された物語や文章の切れ端を、「夜誰かと一緒に読むのもいいし、朝ひとりでこっそり読んでもいい。この旅の中で、想い想いに宝箱を見つけてください。」とハナコさんは楽しそうに私達に伝えます。
まるでこの村全体がハナコさんとビーチロックの皆のテーマパークのよう。
皆さんも気持ちよさそうに村中を探検して回る姿が印象的でした。

■「ネピア刈り」
お昼ご飯を終えた後は、「ネピア」という葉を刈る体験です。
村の麓にある、馬や牛のエサになるネピアを準備するのも自給自足をする上で大事な仕事。
自分の背丈よりもずっと高いネピアの葉を、使い慣れない鎌を手に、みんなで必至に刈り続けます。
これが本当に大仕事!!
ようやくトラックから溢れる程大量のネピアを刈り終えた頃には、皆さんすでに足腰が辛い状況に。(笑)
この作業を村のスタッフは2日に一度は行うそう!馬たちの食欲と、スタッフのバイタリティに驚きを隠さずにはいられませんでした。
そして、頑張ったご褒美といって、予定にはなかった沖縄のビーチへ連れて行ってもらうことに!
やっぱり沖縄の海はキレイ!!全員、服のまま海へダイブしたのは言うまでもありません。(笑)

■「先生のお話」
シャワーも浴びて夕飯を食べ終えたあとは、ティパ(遊牧民スタイルのテント)の中で、ハナコさんと、村長のアキさんのお話を伺います。

沖縄の島々を回るハナコさんのお話で印象的だったのは、2,000年前のおむすびのお話。
2,000年前のおにぎりの化石に出会ったというハナコさんは、しっかりと三角の形をしている今と変わらないおむすびの姿に感動されたそう。
おむすびは、食べやすいように、持ち歩けるようにと、誰かが誰かを思って握るものであり、最高に思いやりの詰まったもの。その思いはこうやって2000年前も今と変わらずに存在していたのですね。

アキさんからは、この村を作り始めた頃からの写真と共にその頃と今の思いを語ってくださいました。
音楽と自然を愛するメンバーと共にこの土地を開拓し村にまでしてしまった経緯は、当然簡単なことばかりではなかったけれど、今では世界中から訪れる旅人たちの拠点ともなり、出逢いの場所にもなっているこの地を誇りに思うとおっしゃっていました。

そしてお話を聞いた後は、もちろんバーへ向かいます。沖縄のお酒を楽しみ、満点の星空を楽しみながら更けていくのでした。

【第三章】
ついに最終日。朝の仕事を終えた後は、思い思いに過ごす自由時間です。

■「自由時間」
夏のように晴れたこの日での自由な時間は、皆さんそれぞれがのんびりと楽しんでいました。
ハナコさんの隠した物語の宝箱を探す人。
ツリーテラスの上で本を読んだり、風の吹き抜けるソファーでビールと飲み音楽を聞く人。
カフェの屋根の上で手紙を書いたり、ピザ釜で焼かれたピザをほおばる人。
ハンモックに揺られてお昼寝をする人。
ハナコさんの世界観を再現したような村と、突き抜けるような笑顔のスタッフ達に囲まれて、最高に気持ちの良い時間を過ごすことが出来ました。

【最終章】
そしてついに、仲良くなった村のスタッフやハナコさんとの名残惜しい別れの時間に。
ハナコさんと、村のスタッフ達とあいさつを終え、村をあとにします。
帰り際にスタッフが、「みんな来た時よりもいい笑顔になってる!」と言ってくれた通り、この3日間の旅の想いは、ひとりひとりの笑顔が物語っていました。

自給自足の暮らしは決して楽なものではないけれど、ビーチロックビジレッジでの暮らしに“エコ”とか“環境問題”とか、そんな言葉が当てはまらない程、そこにはただただ“気持ちのよい空間”が広がっていました。
確かに、人はあの大自然の中で暮らしたら、あのスタッフ達のような底抜けの笑顔で、毎日音楽を奏でながら土をいじり始めるのだと思います。
“人は圧倒的な自然を前に、一体何が出来るのだろう?”
旅の冒頭ハナコさんから問いかけられたこの質問に、そんな答えを見つけることのできた旅となりました。

(ボランティアスタッフ 嶋村 千夏)