シブヤ大学

授業レポート

2009/5/12 UP

やっぱり今でも好き

「この人たちはたしかに人生の哀しみとか優しさとかいうものをよく知っているわね」
(村上春樹 著『ノルウェイの森』)

【ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!】
僕がビートルズを聴き始めたのは兄の影響で中学の頃でした。当時は熱心に聴いていましたが授業に先だって久しぶりにビートルズを聴き返してみると色褪せてしまったのか当時ほどの感動は蘇ってきませんでした。
宮永先生は冒頭に今回の授業の意図はビートルズを深く味わうためのものであって辻説法のようなものであるとおっしゃっていました。授業が行われたお店も『ペニーレーン』(ビートルズの曲名)で、近くの『オリエンタルバザー』という古美術店には1966年の来日時にジョンがホテルを抜け出して立ち寄っているという、ビートルズを味わうには表参道は、うってつけの場所だと思いました。

【4人はアイドル】
ビートルズの歴史は前期・中期・後期に分けることができ、当時の珍しい映像も見せて頂きました。前期のアイドル的人気の時代、観客の女性達の叫び声と警官の顔が印象的でした。大きなムーブメントというものは商業的な計算だけで起こせるものではなく、ビートルズは純粋に好きなことをやっていただけで、時代や4人の個性が出会った奇跡などの偶然性も大きく作用するものだと感じました。

【All You Need Is Love(愛こそはすべて)】
中期の全世界同時衛星中継でビートルズが世界中に伝えたかったこと『All You Need Is Love』(愛こそはすべて)の映像は技術の進化によりカラーで見せて頂き、ビートルズの歴史や精神性を理解して改めて聴くとメッセージがより深く伝わってきました。平和の意味も込められているこの曲はビートルズが最も伝えたかったことが集約されていると思います。『She Loves You』や『Yesterday』も聴こえてくる、まさに集大成の作品だと感じました。
ちなみにビートルズの『Rubber Soul』を聴いたビーチボーイズが名盤『Pet Sounds』を作り、『Pet Sounds』を聴いたビートルズが最高傑作と言われる『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』を作ったと聞いたことがあり、いい話だなと思いました。

【The End】
ビートルズ解散前のポールとジョージが口論する映像は痛々しくて見ていられないほどでした。そして後期の最後の曲『The End』は僕の気持ちとぴったりのような気がしてズシッときました。「君が受ける愛は、君が与える愛」という歌詞も深いなぁと思いました。

【Let It Be(あるがままに)】
ビートルズは解散してしまったけれど残された曲や言葉は今でも心を打つものばかりで改めて偉大さが分かりました。ビートルズ再起を求めて原点に返って作った『Let It Be』(あるがままに)は大人になった今、改めて聴き返してみると森田療法にも通ずる、人生を生きていく上でのひとつの処世術だなと感じました。

【Free as a Bird(鳥のように自由に)】
今回の授業で特に嬉しかったのはシブヤ系の音楽と絡めてビートルズを論じてくれたことでした。シブヤ系の音楽はいわゆる温故知新、先達をリスペクトして自分達の音楽に引用する研究者のような姿勢が特徴的でしたが、ビートルズもカバーの名手として原曲よりも魅力的に聴かせることに長けていたという指摘には納得しました。
僕がビートルズあるいはフリッパーズ・ギターに惹かれるのは自由な空気とユーモアそしてメンバー同士の友情が感じられるからです。来日時の有名なJALのハッピ姿も初めジョンがスーツの皺を気にしており、それを見た添乗員が、「日本の伝統衣装を着用すると日本のファンが喜ぶ」と助言したのをビートルズ全員が快諾したというエピソードが残っています。単なるカッコつけバンドでは絶対できない芸当でビートルズの偉大さが分かるエピソードだと思います。何でも良いと思うものは自由に受け入れ、どんどん成長して進んでいく姿に憧れます。
そして1995年の『Free as a Bird』(鳥のように自由に)では厚い友情を感じて、ほとんど泣いてしまいそうでした。PVも想い出が走馬灯のように蘇ってくる感じで僕が見たビートルズはTVの中しかないのに何故だか懐かしい気持ちになって感動しました。

【拝啓、宮永先生】
授業後の飲み会で初めて公の場でフリッパーズ・ギター解散を伝えたのが宮永先生と伺い『さくらももこのオールナイトニッポン』に出てたと知って、ポールに会って固まっていた人は先生だったのかと気付いてびっくりしました!
そしてライブでの共演をきっかけにプラスティック・オノ・バンドとコーネリアスがなんと一緒にレコーディングしたそうです!

この授業の後、改めてビートルズを聴くとやっぱり今でも好きなのだと再確認できました。
本当にありがとうございました!

P.S.文章の冒頭の『ノルウェイの森』もビートルズの曲名ですが2010年に映画化されるそうです。2010年には誰と僕はこの映画を観に行っているのだろう。

(ボランティアスタッフ 厚沢 英俊)