シブヤ大学

授業レポート

2008/3/11 UP

『そうだ、明治神宮へ行こう。』

疲れたな~、ちょっと自然に癒されたいな~と思ったとき、明治神宮に行ったこと、ありませんか?
歩いているだけで癒される空間、「杜」。

モリ??「杜」には神が鎮座するとされていて、神社などの神様を祭ってある「森」という意味で使われます。今でこそカシやシイが生い茂っている明治神宮。ところがここは「人工の杜」だというから驚きです。 明治神宮の杜を管理されている林苑課の方を先生に迎え、杜のつくりかたを学びました。
まずは社務所にて座学。

【明治神宮と常緑広葉樹】
88年前のこの場所は、荒地だったそうです。そこで、杜をつくることになったのですが…
この当時、東京の大都市では公害が進んでいたために木がどんどん枯れていきました。

『永遠に続く杜にするには、何を植えたらよいのか?』
林苑関係者たちが出した答えは、<常緑広葉樹>でした。
スギを植えることを望んだ政府に負けず、常緑広葉樹を植えたからこそ、今の杜の姿がある!
のです。

そして、多くの方の協力があったことも忘れてはいけません。約10万本もの木々が日本全国、さらにサハリンや台湾から献木として集まったそうなのです。そしてこの木を、11万人にもおよぶ青年がボランティアで植林したことによって、杜が生まれました。
当時365種12万本あった木々は、自然の循環により246種に減ったものの17万本にも増えています。土台を造ってくれた当時のボランティアの皆さん、ありがとうございます!

…と、歴史を振り返るとすごいなぁと思ってしまいますが、杜づくりが始まって88年、やっと<常緑広葉樹の杜>のスタートラインに辿り着いたところなのです。果てしない…。
それは目指すべき林層へと3段階に分けた「想定図」を見てみるとよくわかります。
最初に生長の早いマツやヒノキ・サハラなどの針葉樹を植え、徐々に常緑広葉樹を植えていく様子が描かれているのですが、そのスパンは50年後・100年後・150年後という単位。
自然の循環に任せて杜を育てるということは、到底一世代では成し得ないこと。長い長~い子育てのようです。

【Let's 杜散策】
机に座っての授業もここまで。さぁ、散策スタートです!

皆さん上を向いて「ほ~」足元を見て「へ~」。外に出て、実際に木々の傍で改めてお話を聞くとやっぱり気持ちがいいです。

さて、参拝に訪れる人の目を引く、木造の鳥居日本一を誇る「大鳥居」にて先生からワンポイント講座。この大鳥居の隣に植えてある木々、皆さん注目して見たことがありますか?
ここは、見る人が見れば『人工』の杜だとわかるポイントだそうで。

・クスノキ ・スダジイ ・アラカシ ・シラカシ ・アカガシ

普通は同じ場所では育たないこの5種類の木々が、隣り合わせに植えられているのです。
うーん、見分けるのは難しいです…。

【御苑内でも新発見】
先生に御苑内も案内して頂きました。ここには、コナラ・イヌシデ・タカオモミジなどの落葉広葉樹林が育っています。ここでは植物に注目しましょう!

夏には睡蓮が咲くという「みなみ池」や7月頃に150種の花菖蒲が咲き乱れる「菖蒲田」。
花菖蒲が咲いていないこの季節の「菖蒲田」には、花の名前が書かれた木札が一面に立てられていました。
例えば、“峰の雪”は白い花、“江戸自慢”は江戸紫色…と思い思いに花の色を表現しているようです。
ほかにも“水玉星” “三笠山” “獅子怒”などなど。
どんな色の花が咲くか楽しみですよね~!

散策は終盤へ向かい、「清正の井」という井戸へ到着しました。
こんな都会なのに湧き水(今でも湧いてます!)で、水温は四季を通じて15度前後と一定しているとの説明の後。せっかくなので、皆さん順番に並んで井戸へ手を入れてチェックしてみることに。「なんだ、冷たいじゃん!」との声が聞こえましたが、この季節なのでご勘弁を。。

そしてゴールは本殿です。
手水舎で手水の取り方を教わり、皆で参拝しました。散策しながら杜の歴史を堪能した皆さんは、すっきりとした表情で写真撮影をして締めくくりました。

【自然循環で永遠に続く杜を】
今まで何気なく通り過ぎていた明治神宮の杜=献木やボランティアの人々、常緑広葉樹を植えると決断してから日々見守ってくれている林苑関係者に支えられて、ここまで「育ってくれた」のですね。
先生が「杜の営みの中では私たちが関われるのは一瞬」とおっしゃっていたのがやはり印象的でした。これからも、私たちの癒しの杜がすくすくと育っていけるよう、この環境を次の世代へ繋げることが大切なのだと思います。そして、当時の若者が木を植えてくれたことを知り、杜がなんだか身近な存在に感じました。

都会に疲れたら。この癒しスポットに、ふらっと出かけてみては?

≪授業の後で≫
先生と「明治神宮だけでなく、森を育てていくネットワークができればいいですよね…」と話していました。知り合いに枯れゆく林を再生させようとしている人がいます。
人の手を加えなければ助からない林や森が増えている今、『明治神宮の杜』の成功事例は心強い存在だと感じました。

(ボランティアスタッフ 中里真衣)