シブヤ大学

授業レポート

2025/4/14 UP

あなたの「気になる」を考現学的に体験してみよう!

春の訪れを感じる3月15日土曜日、幡ヶ谷社会教育館に続々と参加者が集まってきます。本日は楽しい街歩き!ですが、皆さん心なしか少しばかり緊張したご様子。それもそのはず、実は「考現学」というあまり聞き慣れない学問について調査、発表する街歩きなのです。教室に入ると椅子だけがランダムに並べられていて、期待と不安を胸に授業開始を待ちます。全員揃ったところで、まずは本日の4名の先生がニックネームで自己紹介。次に参加者の自己紹介でもニックネームで呼び合うことで、一気に和気あいあいムードに。次に先生が考現学という馴染みのない学問について、スライドを使いながらわかりやすく説明していきます。考古学との比較、考現学の歴史や、これから始まる屋外での考現学的観察のポイント等の説明について皆さんとても興味津々。説明が終わり熱量も高まってきたところで、近くにいた参加者同士で3~4人のグループを組み、そこに先生が1名つきます。計4グループが結成されたところで間髪いれずに颯爽と街へと飛び出していくスピード感!はたしてこれからどんな街歩きになるのでしょうか!?

本日の調査場所は、幡ヶ谷社会教育館に隣接する、六号通り商店街と六号坂通り商店街の2つの通り。大通りを挟んで南北に延びるこの2つの通りを2グループずつ分かれて、約30分間調査していきます。まず、大通りから南に延びる六号通り商店街のあい先生のグループでは、商店街を歩きながら観察する参加者もいれば、立ち止まって熱心に定点観測する参加者も。村田先生のグループでは、参加者の方がそれぞれ興味のあるものを早々に見つけて、それぞれが自由に商店街を歩いていくスタイル。参加者の皆さんは熱心にメモを取ったり写真に収めたりしています。まさに、調査のやり方や着目点も十人十色、といった様子です。

続いて六号坂通り商店街。こちらはその名の通り、大通りから北に向かって緩やかな下り坂が続いています。ケーシー先生のグループでは、商店街の入口の時点ですでに盛り上がりを見せている様子。先生の考現学的ポイントを聞きつつ、それぞれが興味のあるものを観察。とてもまとまりのあるグループという印象です。じゅん先生のグループでは、グループ内に近所にお住いの方がいて、これぞ街歩きの面白さ!というものを実感します。途中でケーシー先生のグループと遭遇し、お互いにどんな視点で調査しているのだろうと気になりつつ通過。そしてなにやらアパートの壁のガスメーターをじっと見つめているじゅん先生。先生も参加者の皆さんも無我夢中で調査して、気づけばあっという間の30分!皆さん足早に幡ヶ谷社会教育館へと向かいます。


休憩を挟んで教室に戻ると、すでに大きな机がグループごとに並んでいて、「わたしの発見シート」というA4の紙が置いてあります。これからの15分間は、この紙に観察して気づいたことを自由に書き込む時間。参加者の皆さん、最初は少し苦労しているのか静まり返った様子でしたが、記憶を辿りながら段々とペンを走らせる音が聞こえてきます。メモやスマホに収めた写真を見返しながら、熱心に書き込んでいる様子。

アウトプットの時間もあっという間に終わり、次はそれぞれの参加者が席を立って他の参加者が書いた発見シートを見て回り、気づいたことを付箋に書いて発見シートの近くに貼っていきます。文字だけでまとめている人、マインドマップのように言葉を繋げている人、スケッチのみの人と、表現方法やまとめ方は様々。豊かな表現方法や自分とは全く違う着眼点を見て、どよめきや感心の声があちらこちらで沸き起こっています。まず六号通り商店街のグループでは、建物と建物との隙間に着目した参加者や、傘を持っている人の数、停めてある自転車の数と種類や犬を連れている人と犬種を数えた人も(なんと犬種は全て異なるという結果に…!)。また、和服率の高さを調べた人がいましたが、近くに和服関連の施設があるのかも気になります。また六号坂通り商店街は、建物の素材や色に着目する人、ハチペイなど電子決済に注目し、その表示に注目する人、そしてなんと虫の視点で地面のタイル模様に着目する人も。また建物も面白く、2階建ての建物の1階には柔らかいフォントのお店で、2階には事務所が多いのか明朝体等のかっちりとした印象のフォントなど、看板のフォントに着目した人や、お店のダクトの形状の違いをスケッチだけで表現していた人も。たとえスケッチだけでも、言わんとしていることがなんとなく伝わってくるという面白さがあります。

付箋をつけながらこれは是非皆さんの考えを聞きたいという欲求が最高潮に達したところで、ついに発表タイムへ突入!4グループ1人ずつ発表していきます。まず同じ風景を見ているにもかかわらず、誰一人として同じ視点ではないという驚きと、そもそも他者の視点を知ることができて、それぞれの人となりがわかるという面白さ。発見シートに書かれてあるスケッチや言葉ではわからなかった部分も、発表を聞くことで腑に落ちる部分もありました。また、他の参加者の発見シートを見て自分とは違う視点で面白いという感想や、自分も違う表現方法にすればよかったという意見も。ちなみに、アパートの壁のガスメーターをじっと見つめていたじゅん先生、二つ並んだガスメーターの表示形式がアナログ式とデジタル式という違う表現方法で面白い、という種明かしをしてくれました。

今回の考現学という視点での街歩きを通して、考現学という学問が日常的でとても身近なところにあるものだと気づきました。六号通り商店街と六号坂商店街で街の特性があることもわかり、街の細やかな部分を知ることで、街全体の魅力の再発見にも繋がっていくとも感じました。また、観察している人自身を観察することによっても新たな発見があり、街の風景、その場所での人の生活、それを観察する人、その全ての振る舞いを俯瞰して見ることで、考現学がさらに魅力のあるものになったのではないかと思います。


(授業レポート・写真:諌山俊之、グループレポート・写真:久保田真理、隅谷宗男、諌山俊之、竹田憲一)