シブヤ大学

授業レポート

2024/4/2 UP

継承の場面12~被災地での支援活動を止めないために

シリーズ授業12回目となった「継承の場面」〜被災地での支援活動を止めないために〜、会場は千駄ヶ谷社会教育会館での授業の様子をお届けします。
講師の先生はお二人。一般社団法人日本リ・ファッション協会・代表理事の鈴木純子さん、そして福島県いわき市の温泉旅館16代館当主である里見喜生さん。
参加者14名、スタッフ7名、椅子を円形にして皆の顔の見える形での授業がスタートしました。 まずは、講師お二人の簡単なご紹介と参加者・スタッフの自己紹介を行いました。 参加の皆さんは、講師の先生のご紹介であったり、被災地支援の経験者であったり、年齢層も幅広い参加でした。

シブヤ大学学長よりご挨拶
3.11東日本大震災当時、大学生であった学長は、この災害を大きなきっかけに自分たち若者がこれからの社会を考えなければならないという使命感を持つきっかけとなったとのこと。このためこの授業が並々ならぬ想いをもって企画してきたものであり、今日は参加者の1人として学びたいということでした。 震災当時感じたこと、13年経つ中で変わってきたこと、関東にいる私たちにできる支援を止めない、誰でもが参加できる仕組みづくりをしていくという言葉から、みんなの学びの想いも深まる導入となりました。 また、今回のシブヤ大学への寄付は日本赤十字社を通じて能登半島地震の募金とする旨の説明がありました。

里見喜生さんからのお話し
本日の講師のおひとりである里見さんは、福島県いわき市の温泉旅館16代当主を営みながら、東日本大震災を大きなきっかけに地域社会を支える様々な活動を拡大されており、「震災」と「継承(承継)」のこの2つの重さを切に感じてこられたと話されました。
そして、幾つもの苦難を乗り越えられて気付いたことは、重さを感じていることではなく、今の暮らしと人との繋がりを“楽しむ”ことが、復興や防災を語り継ぐこと、家業の継承にも繋がると感じているということを語られました。

「東日本大震災についてどう思われますか?」
という質問をよく受けるということですが、その回答には2つの視点に分けて考える必要があると説明されるそうです。
1つは「自然災害」という視点、もう一つは「人災」という視点。
自然災害は、日にちを選ばず、まさに共生しなくてはならいないが、人災(東日本では原子力災害)は次の世代に教訓を残し防ぐことができるという点に分けるということで、里見さんからそのことを印象づける質問がされました。「みなさん、3月11日は東日本大震災が起こった日、それでは、3月12日は何の日かわかりますか?」
無言の数秒が過ぎた後、
「3月12日は、原子力発電所が爆発した日なんです。」
人災は社会・経済・国際的繋がりにより語り継ぐことを控えていく風潮がありますが、防ぐ方法が見つけられるものであり、忘れてはいけないこと。一方で語り部がいる自然災害であっても、時間の経過のなかで、沿岸部に暮らすことの災害に遭うリスクはわかっていても、そこに暮らすことには理由がある。つまり人災は防ぐこともできる側面も持っている一方で、自然災害でも防ぐことができないでいる深い事情がある点は整理して語り繋いでいくが必要があると話されました。

このように、人災の語り部になることを控える風潮の中で、里見さんは相当な「覚悟」をもって自らが営む旅館の中に資料館(原子力災害考証館)を原子力事故発生から10年経った2021年3月12日に作られたということです。資料館を作るにあたっては風評被害になると観光事業者などからの風当たりも強かったものの、現在では観光マップにも掲載され、運営のはげみにもなっていると話されました。

本日の大きなテーマである「継承」がご自身の家業の「継承」にとどまらず、震災からの復興支援や人災の語り部の「継承」と重ね合わせられ行動を起こしてきたことは、色々な方との出会いは財産となり、次の日の励みとなり、次の一歩に繋がる。「辛いけれど、嬉しいことが上回る」という言葉には大変深いものを感じました。

鈴木純子さんからのお話し
鈴木さんの人生のテーマは「誰もが幸せに暮らせる社会」を作ること。
ファッションで持続可能な循環型社会を実現するために、東京都墨田区、茨城県日立市、福島県いわき市の三拠点で、都会と地方(被災地)を繋ぐリ・ファッション活動をされているということです。

例えば、「衣育」(食育のようなイメージで衣食住の「衣」の部分を通じた教育)として、避難先で使うペットボトル湯たんぽのカバー作りをしたり、地域コミュニティの1つとしてこどもファッションショーをしたり、被災地に集まる衣料品の75%は使えないという実態があるということで、古着を新しく生まれ変わらせるアップサイクルコンテストをしたり、今後の経済支援にも繋がる手仕事支援等々、直接の物資支援提供だけではなく中間支援団体として「必要な時に、必要なモノを、必要な分だけ届ける」ことができるようなしくみ作りをされていることです。
使い道に困った支援物資に新たな息を吹き込み、決して無駄にしないという取り組みに大変刺激を受けました。

また、「ハンドマッサージ」などを通じて、距離を縮める関係を築くきっかけとなると話されます。ふれあいをもつことで、なかなか本音の言えない被災者の方が、困っていることや悩みを言えるようなきっかけとなり、実際にして欲しい支援につながり“心の復興”につながるということです。能登半島地震被災地支援に向けても、こうした活動の準備をされているとのこと。

支援はしたいけれど、何をしてよいかわからないという声もよく耳にしますが、今回多岐に渡る“中間支援”という活動を知れたことは、被災地支援のあり方として「何か私にもできる」という気づきを得ることができました。

質問&対話タイム
里見さんから…自分1人で赴いて繋がりをもとうとしたら、長続きはしなかった。地元とのネットワークがあることにより、紹介者を介して支援先に行けることが、円滑な支援活動につながっていると、鈴木さんが感じていらっしゃると聞いて励みになりました。改めて、全国に友達がいっぱいいるといいなと感じました。大切なのは気持ち、特別なことではなく日頃の得意技を支援にも活かすことで届きやすい人に届き、地域の人との連携も高まると思います。

鈴木さんから…地元の方の紹介だと、被災者の皆さんに最初から安心していただけることは、支援に行って早い段階で信頼関係のある効果的な活動となり、被災者の方もまたきて欲しい、支援者の立場としても又行こう!という気持ちになれるものです。

里見さんから…東日本大震災では漁師の方でも職を失われた方も多いけれど、タイプは3通り、能登半島地震被災地支援でも他県へ転出する人もでてくるだろう。

漁業から土木建築へ転職 ローン支払いのために働いていた60歳以上の人は仕事を辞め、年金暮らしの選択保障の中で細々暮らす 参加者からも活発な発言がありました。 ・鈴木さんのような中間支援活動は、とても大変であると思うけれど、経済的に成り立っていけるのか?という問いに鈴木さんは 確かに、どんどん貯金がなくなっていく経験もしてきた。
しかしながら、日頃の生活の見直しをすることで成り立つようになってきたということです。例えば、多くのサブスクをやめるなど、出費を見直す工夫をされたそうです。入りが少なければ出も少なくすれば良い、自分の空いている時間にできることをやるといった具合にミニマムな暮らしの循環ができてきたということです。

・社会、家庭、支援の3つがうまく回る、循環することが大切だと思う。
・ふるさと納税で、NPO支援活動を選択できる自治体もある。
・災害時のトイレについて考えておくことは大切。コンポストトイレはじめ自然と共生しておくことは大切。コンポストトイレは都会でも開発したい、自然との共生が大切、雨水活用についても考えていくべき。
・都会ではマンホールがトイレになるそうです。
・身体の入り口(食べる)と出口(出す)について整えておくことはとても大切。日頃の健康管理が被災した時も支援者となる時も大切。
・お二人の講師の話が聞けたことがとても嬉しい。この声を自身の活動に還元して行こうと思う。
・この場にいない人との共生、いかに繋がるかを、今日のように考える機会があると、自分ごととしてとらえられるようになる。
・支援はお金のある団体がお金を出せば良いというわけではない。お金は麻薬みたいな側面もある。
・地域のつながり・共生といった点では、男性は比較的苦手であり、大丈夫かなと思う。
・里見さんの「嬉しい」が「悲しい」を超えるというところにとても共感した。
・真実に向き合い、共感できた出会いに感謝。

最後に講師お二人から
里見さん…一期一会を座右の銘としていますが、かけがえのない時間を過ごしました。いわきにいる鈴木さん、離れている首都圏の皆さんと、これからも良き化学反応を起こせたら良いと思います。

鈴木さん…熱心に話を聴いてもらってとても嬉しい。コロナ禍で気持ちが内に秘めていた時期もあったけれど、こうやって話をすると元気になれると実感しました。

机を配置してアンケート記入
「継承の場面」としては今回の12回目開催で一段落となりますが、新たな形で授業企画をしていく予定ということです。「継承」という大きなテーマを胸に更に繋がりを深めていけたらいいなと思います。
里見さん、鈴木さん、ご参加の皆様、ありがとうございました!

(コーディネーター:佐藤、写真:堀江・今田、レポート:安西)