授業レポート
2021/7/30 UP
みんなの妄想会議
~人と人がつながるカフェを全国に~
「人と人がつながる場をつくる」とはどういうことなのか?
場のイメージや続けていくための仕組みについて、参加者全員で妄想してみる授業を開催しました。
今回のゲストには、社労士として働きながら沖縄で「ブックカフェAETHER(アイテール)」を立ち上げた下田直人さんをお招きし、ブックカフェを立ち上げる動機づけになった価値観の変化、そして、カフェという空間の中で人と人がつながるための創意工夫された「恩送りカード」という仕組みについて、たっぷりと語っていただきました。
今回は「妄想会議」ということで、下田さんの取り組みのお話を聞いたあと、参加者の皆さんには、3つのお題をもとにチームに分かれて妄想をふくらませてもらいました。授業レポートでは、下田さんのゲストトークの簡単な要約と各妄想会議でのチームディスカッションの一部について簡単にまとめてみますので、皆さんもぜひ妄想をふくらませながら読んでみてください。
----------
■下田さんがカフェを始めたきっかけ
・アイテールのコンセプト
「コミュニケーション」
ー目の前の人との対話、自分の内面との対話、(過去や未来との)時空を超えた対話
・沖縄でブックカフェを始めたきっかけとなった出来事
やりたい!という想いだけで始めたカフェだが、その起点となる3つの出会いと、そこでの価値観の変化があった。
(1)カンボジアにある「伝統の森」 森本さんとの出会い
クメールという織物を作っているみんなが静かに幸せに暮らす村。自然と調和する空気感に感銘を受けた。
(2)「陽明学者」 難波先生との出会い
陽明学の良知(良心)という言葉と出会う。
良知(良心)は誰の心にも備わっているもので、現代の言葉に置き換えるなら、良心=本来人が持っている心、良知=本来人が知っていること。
目の前で困っている人がいれば助けたくなり、助けなかったときには罪悪感を感じる。こういった良心は本来人が持っているものであるという考え方。
(3)「宮田運輸」 宮田社長との出会い
良心が本来的に人が持っているものなのであれば、それを発揮する仕組みをつくれたらよいのでは?
と考えていたときに大阪の物流会社「宮田運輸」と出会う。
物流会社として、どんなに管理を徹底してもトラック事故は防げない。
どうしたら事故を減らせるか考えていた際、子どもの絵を運転席に飾っている社員の「これがあるとついつい安全運転になるんですよ」という言葉にヒントを受け、良心が育まれる仕組みをつくる発想を得る。
その後、子どもの書いた絵をトラック全面にラッピングする「子供ミュージアム」という取り組みを開始したところ、ドライバーのアクセルの踏み方が丁寧になり、燃費が格段に向上したそう。
これらの3つの出会いが起点となり、個人が個人らしくいられる場所づくりを、沖縄の地でカフェという形で具現化した。
■下田さん考案 人と人のつながりをつくる「恩送りカード」について
過去にお店に来た人と今いる人が時空を超えて対話することはできないか?と考えたところから、「恩送りカード」という取り組みを始めた。
「恩送りカード」は、お客さんが今後来店する見知らぬ誰かにコーヒーをご馳走できる仕組み。
店内に貼られている「〇〇な人へ」といった様々な宛先が書かれた恩送りカードの中からピンときたカードを店員さんに渡すと、そのカードの送り主のご馳走で、コーヒーを一杯飲むことができる。
自分もご馳走したくなったら、500円でカードを購入し、また次の誰かに向けたカードを書いて、店内に貼る。
同じ場所に違う時間に訪れた誰かとつながる、まさに時空と空間を超えて人がつながる仕組み。
恩返しではなく、恩送り(pay forward)の発想で、使えば使うほど心豊かになっていき、楽しく心が優しくなっていく仕組みとして多くのメディアに取り上げられた。
----------
■妄想会議⓪「自分たちがつくりたい場所がどんな場所か考えてみよう」
各グループから出た意見:
・肩書を外して、交流できる場所
・色々な世代が気軽に交流できる場所
・ただ話すというよりは、人生の、社会の勉強ができる場所
・人間対人間だけではなく、人間対自然のつながりがとある場所
・地域の人をまぜて、文化的なふれあいができる場所
・居心地の良い場所。ハード面では、席や机などの見た目も重要。硬い椅子ではなく、ソファがある場所
・好きなこと、価値観を持っている人たちが不意に出会える場所
・敷地内に畑があり、耕したり立ち寄ったりできる場所
・テーマを持ち寄って会話ができる場所
・オンラインでも参加できる場所
・名前を知らなくても話せる、ほどよい距離感が保てる場
■妄想会議① 「恩送りカードの可能性を考えてみよう」
・同じ悩みを持つ人とつながる可能性を生み出せるかも
・自分の知らない誰かとつながって、自分が使わなくなったものや不良品をあげられるといい
■妄想会議② 「自分たち独自のつながりを生まれる仕組みを考えてみよう」
・自分のできることや提供できるものをカードに書き、店内で貼る。例えば、「カウンセリングができる」「英語を教えられる」など。また、自分がお願いしたいこと、してほしいことも店内で貼り、店主がマッチングさせる。
・ホワイトボードやキャンバスを店内において、お客さんに自由な絵を描いていってもらう。月ごとにテーマを決めて描き足していってもらう。皆で1つのものを描くことでつながりが生まれる。
・お客さんに1日店主をやってもらう。店主とお客さんの立場を入れ替えてみる。
・お店の前に野菜自販機を導入して、野菜の売り買いができる仕組みをつくる。
・今、エンディングノートが流行っている。普段なかなか話せない、自分たちの「終わり」を語る場をワークショップとして開催する。
・何でもしてくれるレンタルおじさんを置いておく。
・自分のやりたいことに誰かを巻き込める仕組みをつくる。誰かに巻きこまれたら、次は誰かを巻き込んでいてもよい権利が得られる。
・旅先で地元の人が多いと入りづらいお店や居酒屋がある。敷居を下げるため、店主がお客さん同士をつなげる。お店の外に、どういうお店かが分かる掲示板をつくる。
・人とつながるときは、距離感が大事。人と人の間に他の媒体があるともっとつながりたいと思える。朝顔などの植物のを育ている様子を観察できる観察カフェ、布の端切れを持ち寄り、店に来るたびにつないで大きなラグをみんなで作り上げてる仕組み。(そのラグを作る目的が何か?目的の部分に共感が集まると良い仕組みになりそう)
■妄想会議③ 「自分たちの考えた仕組みを全国の街角に定着させるにはどうしたらいいか考えてみよう」
・カフェの店主同士が直接情報をやりとりするのではなく、自治体を媒介できるといい。
・チェーン店のようなビジネスモデルを増やすのではなく、みんなが仕組みに乗っかっていく、オープンリソースが全国に広まっていくといい。
----------
妄想会議の名前の通り、
「何かしらの形で場作りに関わってみたい」
「自分で何か始めてみたいけれどどんなふうに始めればわからない」というそれぞれに熱い想いを持った方が積極的に参加してくださいました。
この授業自体が、人と人がつながる場づくりの「オープンリソース」となる可能性を秘めた、多くの知識とアイディアが共有された場となりました。
(授業レポート:横山浩紀)
場のイメージや続けていくための仕組みについて、参加者全員で妄想してみる授業を開催しました。
今回のゲストには、社労士として働きながら沖縄で「ブックカフェAETHER(アイテール)」を立ち上げた下田直人さんをお招きし、ブックカフェを立ち上げる動機づけになった価値観の変化、そして、カフェという空間の中で人と人がつながるための創意工夫された「恩送りカード」という仕組みについて、たっぷりと語っていただきました。
今回は「妄想会議」ということで、下田さんの取り組みのお話を聞いたあと、参加者の皆さんには、3つのお題をもとにチームに分かれて妄想をふくらませてもらいました。授業レポートでは、下田さんのゲストトークの簡単な要約と各妄想会議でのチームディスカッションの一部について簡単にまとめてみますので、皆さんもぜひ妄想をふくらませながら読んでみてください。
----------
■下田さんがカフェを始めたきっかけ
・アイテールのコンセプト
「コミュニケーション」
ー目の前の人との対話、自分の内面との対話、(過去や未来との)時空を超えた対話
・沖縄でブックカフェを始めたきっかけとなった出来事
やりたい!という想いだけで始めたカフェだが、その起点となる3つの出会いと、そこでの価値観の変化があった。
(1)カンボジアにある「伝統の森」 森本さんとの出会い
クメールという織物を作っているみんなが静かに幸せに暮らす村。自然と調和する空気感に感銘を受けた。
(2)「陽明学者」 難波先生との出会い
陽明学の良知(良心)という言葉と出会う。
良知(良心)は誰の心にも備わっているもので、現代の言葉に置き換えるなら、良心=本来人が持っている心、良知=本来人が知っていること。
目の前で困っている人がいれば助けたくなり、助けなかったときには罪悪感を感じる。こういった良心は本来人が持っているものであるという考え方。
(3)「宮田運輸」 宮田社長との出会い
良心が本来的に人が持っているものなのであれば、それを発揮する仕組みをつくれたらよいのでは?
と考えていたときに大阪の物流会社「宮田運輸」と出会う。
物流会社として、どんなに管理を徹底してもトラック事故は防げない。
どうしたら事故を減らせるか考えていた際、子どもの絵を運転席に飾っている社員の「これがあるとついつい安全運転になるんですよ」という言葉にヒントを受け、良心が育まれる仕組みをつくる発想を得る。
その後、子どもの書いた絵をトラック全面にラッピングする「子供ミュージアム」という取り組みを開始したところ、ドライバーのアクセルの踏み方が丁寧になり、燃費が格段に向上したそう。
これらの3つの出会いが起点となり、個人が個人らしくいられる場所づくりを、沖縄の地でカフェという形で具現化した。
■下田さん考案 人と人のつながりをつくる「恩送りカード」について
過去にお店に来た人と今いる人が時空を超えて対話することはできないか?と考えたところから、「恩送りカード」という取り組みを始めた。
「恩送りカード」は、お客さんが今後来店する見知らぬ誰かにコーヒーをご馳走できる仕組み。
店内に貼られている「〇〇な人へ」といった様々な宛先が書かれた恩送りカードの中からピンときたカードを店員さんに渡すと、そのカードの送り主のご馳走で、コーヒーを一杯飲むことができる。
自分もご馳走したくなったら、500円でカードを購入し、また次の誰かに向けたカードを書いて、店内に貼る。
同じ場所に違う時間に訪れた誰かとつながる、まさに時空と空間を超えて人がつながる仕組み。
恩返しではなく、恩送り(pay forward)の発想で、使えば使うほど心豊かになっていき、楽しく心が優しくなっていく仕組みとして多くのメディアに取り上げられた。
----------
■妄想会議⓪「自分たちがつくりたい場所がどんな場所か考えてみよう」
各グループから出た意見:
・肩書を外して、交流できる場所
・色々な世代が気軽に交流できる場所
・ただ話すというよりは、人生の、社会の勉強ができる場所
・人間対人間だけではなく、人間対自然のつながりがとある場所
・地域の人をまぜて、文化的なふれあいができる場所
・居心地の良い場所。ハード面では、席や机などの見た目も重要。硬い椅子ではなく、ソファがある場所
・好きなこと、価値観を持っている人たちが不意に出会える場所
・敷地内に畑があり、耕したり立ち寄ったりできる場所
・テーマを持ち寄って会話ができる場所
・オンラインでも参加できる場所
・名前を知らなくても話せる、ほどよい距離感が保てる場
■妄想会議① 「恩送りカードの可能性を考えてみよう」
・同じ悩みを持つ人とつながる可能性を生み出せるかも
・自分の知らない誰かとつながって、自分が使わなくなったものや不良品をあげられるといい
■妄想会議② 「自分たち独自のつながりを生まれる仕組みを考えてみよう」
・自分のできることや提供できるものをカードに書き、店内で貼る。例えば、「カウンセリングができる」「英語を教えられる」など。また、自分がお願いしたいこと、してほしいことも店内で貼り、店主がマッチングさせる。
・ホワイトボードやキャンバスを店内において、お客さんに自由な絵を描いていってもらう。月ごとにテーマを決めて描き足していってもらう。皆で1つのものを描くことでつながりが生まれる。
・お客さんに1日店主をやってもらう。店主とお客さんの立場を入れ替えてみる。
・お店の前に野菜自販機を導入して、野菜の売り買いができる仕組みをつくる。
・今、エンディングノートが流行っている。普段なかなか話せない、自分たちの「終わり」を語る場をワークショップとして開催する。
・何でもしてくれるレンタルおじさんを置いておく。
・自分のやりたいことに誰かを巻き込める仕組みをつくる。誰かに巻きこまれたら、次は誰かを巻き込んでいてもよい権利が得られる。
・旅先で地元の人が多いと入りづらいお店や居酒屋がある。敷居を下げるため、店主がお客さん同士をつなげる。お店の外に、どういうお店かが分かる掲示板をつくる。
・人とつながるときは、距離感が大事。人と人の間に他の媒体があるともっとつながりたいと思える。朝顔などの植物のを育ている様子を観察できる観察カフェ、布の端切れを持ち寄り、店に来るたびにつないで大きなラグをみんなで作り上げてる仕組み。(そのラグを作る目的が何か?目的の部分に共感が集まると良い仕組みになりそう)
■妄想会議③ 「自分たちの考えた仕組みを全国の街角に定着させるにはどうしたらいいか考えてみよう」
・カフェの店主同士が直接情報をやりとりするのではなく、自治体を媒介できるといい。
・チェーン店のようなビジネスモデルを増やすのではなく、みんなが仕組みに乗っかっていく、オープンリソースが全国に広まっていくといい。
----------
妄想会議の名前の通り、
「何かしらの形で場作りに関わってみたい」
「自分で何か始めてみたいけれどどんなふうに始めればわからない」というそれぞれに熱い想いを持った方が積極的に参加してくださいました。
この授業自体が、人と人がつながる場づくりの「オープンリソース」となる可能性を秘めた、多くの知識とアイディアが共有された場となりました。
(授業レポート:横山浩紀)