授業レポート
2020/3/6 UP
一年の計は「運針」にあり!
~布巾をひたすら縫う~
今回は和裁士の坂田直さんを講師にお招きして、「運針」と「補綴(ほてつ)」の授業です。
「運針」とは読んで字のごとく「針を運ぶ」こと。和裁の基本となる技術です。
「補綴(ほてつ)」は、ほころんだ衣類を自分で繕う、直しの手法のことを言います。
畳の匂いが心地良い和室で、互いの顔が見えるように机を囲み、授業開始です。
まずは基本となる針の持ち方から。
最初に右手中指の中節に指あてをはめます。
次に、右手でOKの形を作り、糸を通した針の真ん中あたりを親指と人差し指で挟むように持ちます。このとき、人差し指から5ミリ程度針が出るくらいの長さが、適当な針になります。
そのあと、残りの中指・薬指・小指で垂れた糸を握り込み、中指の指あてに針のお尻を当てるようにします。
知っているようで意外と知らなかった基本の持ち方にみなさん四苦八苦。
「手がつりそう…」「指あてってこう使うんだ!」など様々な声が聞こえました。
苦労しつつも手の基本形が整ったところで、早速運針と補綴のおけいこ。
最初に先生がお手本を披露して下さりました。流れるような動きでするするっと針を進めます。この時ポイントなのが左手。布を持ちながら上下に動かしていきます。
(動画はこちら→)
先生の運針の速さ、そうして出来あがる細やかで均一な縫い目に、思わず「ほお~」と感嘆の声が漏れます。先生はわずか一日で浴衣をまるまる一着縫い上げることもあるそうです。
その後、それぞれ好きな色の縫い糸を選んで、いざ実践です。
はじめは、慣れない針の持ち方と動きに皆さん苦戦していましたが、先生の丁寧なレクチャーで少しずつ針が進んでいきます。
合間には、縫い針の違いや舞妓さんの振袖についてなどの小話もいただき、皆さん興味深そうに聞き入っていました。
ちくちくと縫い進めながら、おしゃべりも盛り上がります。
小学校の家庭科の話や放送中の朝ドラの話など、様々な話が飛び交います。
机を囲んで和気あいあいと自由に言葉を交わす様子は、まさに寄合のようでした。
「運針の授業を受けてみたい」という想いから繋がり、今までご縁の無かった人とこうして会話を楽しむことの出来る面白さと新鮮さは、シブヤ大学の授業の魅力のひとつだと思います。
そんな教室も、2時間半ほど経つとやがて静かに。
皆さんひたすら手元の針と布に視線を落とし、黙々と集中していました。
忙しい日々のなかで、こうして何かに無心で没頭できる時間は貴重なのではないでしょうか。
ひたすら運針を極めるひと、補綴に挑戦するひと。それぞれのペースで進めながらも、皆さん針仕事を楽しんでいる様子でした。
そうして完成した作品たちがこちら。
個性豊かな作品が出そろいました。
大きい縫い目、小さい縫い目、曲がった縫い目…不揃いであっても、またそれが味となって作品に温もりと愛らしさを与えています。
この日は珍しく冷たい雪がふぶく、寒さの厳しい一日となりましたが、教室ではゆったりとした和やかな空気と、充実した時間が流れていました。
「衣類を自分で作り、繕い、いつまでも大切にしたい」という日本人の想いと知恵が詰まった技術、「運針」と「補綴」。
簡単に何でも買い、直すことができるようになった便利な現代だからこそ、自分の手で針と糸も持ち、針仕事をする時間はより贅沢で、あたたかな想いのこもったものになるのではないでしょうか。
(授業レポート:小野多恵/ 写真:片山朱美)
「運針」とは読んで字のごとく「針を運ぶ」こと。和裁の基本となる技術です。
「補綴(ほてつ)」は、ほころんだ衣類を自分で繕う、直しの手法のことを言います。
畳の匂いが心地良い和室で、互いの顔が見えるように机を囲み、授業開始です。
まずは基本となる針の持ち方から。
最初に右手中指の中節に指あてをはめます。
次に、右手でOKの形を作り、糸を通した針の真ん中あたりを親指と人差し指で挟むように持ちます。このとき、人差し指から5ミリ程度針が出るくらいの長さが、適当な針になります。
そのあと、残りの中指・薬指・小指で垂れた糸を握り込み、中指の指あてに針のお尻を当てるようにします。
知っているようで意外と知らなかった基本の持ち方にみなさん四苦八苦。
「手がつりそう…」「指あてってこう使うんだ!」など様々な声が聞こえました。
苦労しつつも手の基本形が整ったところで、早速運針と補綴のおけいこ。
最初に先生がお手本を披露して下さりました。流れるような動きでするするっと針を進めます。この時ポイントなのが左手。布を持ちながら上下に動かしていきます。
(動画はこちら→)
先生の運針の速さ、そうして出来あがる細やかで均一な縫い目に、思わず「ほお~」と感嘆の声が漏れます。先生はわずか一日で浴衣をまるまる一着縫い上げることもあるそうです。
その後、それぞれ好きな色の縫い糸を選んで、いざ実践です。
はじめは、慣れない針の持ち方と動きに皆さん苦戦していましたが、先生の丁寧なレクチャーで少しずつ針が進んでいきます。
合間には、縫い針の違いや舞妓さんの振袖についてなどの小話もいただき、皆さん興味深そうに聞き入っていました。
ちくちくと縫い進めながら、おしゃべりも盛り上がります。
小学校の家庭科の話や放送中の朝ドラの話など、様々な話が飛び交います。
机を囲んで和気あいあいと自由に言葉を交わす様子は、まさに寄合のようでした。
「運針の授業を受けてみたい」という想いから繋がり、今までご縁の無かった人とこうして会話を楽しむことの出来る面白さと新鮮さは、シブヤ大学の授業の魅力のひとつだと思います。
そんな教室も、2時間半ほど経つとやがて静かに。
皆さんひたすら手元の針と布に視線を落とし、黙々と集中していました。
忙しい日々のなかで、こうして何かに無心で没頭できる時間は貴重なのではないでしょうか。
ひたすら運針を極めるひと、補綴に挑戦するひと。それぞれのペースで進めながらも、皆さん針仕事を楽しんでいる様子でした。
そうして完成した作品たちがこちら。
個性豊かな作品が出そろいました。
大きい縫い目、小さい縫い目、曲がった縫い目…不揃いであっても、またそれが味となって作品に温もりと愛らしさを与えています。
この日は珍しく冷たい雪がふぶく、寒さの厳しい一日となりましたが、教室ではゆったりとした和やかな空気と、充実した時間が流れていました。
「衣類を自分で作り、繕い、いつまでも大切にしたい」という日本人の想いと知恵が詰まった技術、「運針」と「補綴」。
簡単に何でも買い、直すことができるようになった便利な現代だからこそ、自分の手で針と糸も持ち、針仕事をする時間はより贅沢で、あたたかな想いのこもったものになるのではないでしょうか。
(授業レポート:小野多恵/ 写真:片山朱美)