シブヤ大学

授業レポート

2019/8/7 UP

地域コミュニティ×学生
-学生と地域の幸せな関係はどうつくる?-

渋谷おとなりサンデーの特別プログラムとして開催された、地域コミュニティに関する5つ授業のうちの最終授業。

この授業では、地域コミュニティと「学生」をテーマに、学生とまち、シニアを繋げる活動をしているNPO法人の街ing本郷の代表理事の長谷川大さんに来ていただきました。
長谷川さんは、普段は商店街で魚屋さんをやっていて、この授業の少し前まで、魚を売っていたそうです。
授業では、どのような活動を行っているか、地域と学生のあるべき姿や課題、将来について話し合いました。

【街ing本郷】
長谷川さんは「街のつながりを乗り越えて何かをしたい!」という思いから街ing本郷を設立しました。
その背景には、様々な活動を商店街で行っていくときにイベントや商店街の担い手が高齢化し始めている現状を重く受け止め、若い商店街の担い手同士を少ないながらも繋げようという思いがありました。
最初は商店街の人たちから色よい言葉は貰えませんでしたが、少しずつ活動を続けていく中で信用を得ていき、実際に担い手が少なくなった現在では「街ing本郷」は商店街を続けていく上で重要なファクターとなっています。

【1つ屋根の下プロジェクト】
街ing本郷の活動として行っているのが、「1つ屋根の下プロジェクト」です。
商店街がある本郷では、大学が多くあるのですが、本郷時代の家賃が高く、大学周辺に住むことが難しいという難点があり、遠くから通っている学生が少なからず存在します。そのような学生に街ing本郷が仲介し、独居のシニアの方を繋げ、空き部屋を有効活用かつ、寂しくない状態を生むというプロジェクトです。
かなり需要がありそうなプロジェクトですが、成功例ばかりではないそうです。むしろ失敗の方が多く、住まわせる学生の親が食事の面や、老人と一緒に住むことに心配してしまようです。
また、それ以外にもニーズに関してシニアの要望が少なく、学生からの要望が圧倒的に多いという状況になっています。それぞれに交流を望んではいるのですが、シニアの方々は一緒に住むことに関しては、望んでいないのだそうです。

【書生生活プロジェクト】
書生生活というプロジェクトでは、まちに関わりながら暮らす学生の新しいライフスタイルを模索しています。本郷で増加している空き部屋を利用し、学生を書生として安く住まわせ、まちと関わりながら楽しく安く暮らしていくというプロジェクトです。プロジェクトの始まりは2011年、街との関わりを義務でなく、楽しいと思える人を入居者にしています。
書生生活では、暮らしていく上で、学生が様々なセミナー(授業)を開きます。例えば、小・中学校の夏休みの宿題を手伝ったり、読書感想文を考えるサポートをしたり、卓球教室、将棋教室なども開催しています。勿論、学生達にはプランニングのみで終わらせないよう、代表や街ingのメンバーが見守ります。

【学生と地域の幸せな関係はどう作るか?】
まちの中は複雑に絡みあっており、この重なり合いを認識し、それを活用している団体がうまくいくのだと長谷川さんは言います。
街ing本郷のミッションとして「つないで、笑顔に!」を掲げています。つなぐことも大切なのですが、それに対する責任を持つことも重要です。誰かの家にお邪魔するときも、突然伺うのではなく、事前にメンバーから訪問先に一声かけておくことが大切です。

【これからの地域コミュニティと学生】
町会には入らないけど、NPOには入ってくれるという人も増えるようなりました。そうした人たちが、活躍しやすい、入っている人それぞれの役割が存在する、その人に遭った役割があるような環境づくりが重要になり、そのような環境づくりを心掛けていると、長谷川さんは話してくれました。
多様性という言葉をいたるところで聞くようになりましたが、言うだけでそれをうまく実践に組み込めているところは多くはありません。実際問題、かなり難しいと思います。楽な道ではありません。ですが、それ故に、考えていかなければならず、いつかは向き合わなければいけない問題でもあります。
皆さんもこれを機会に自身と関わりのある、地域とコミュニティの課題について考えてみてはどうでしょうか。

(レポート:赤坂駿介)