シブヤ大学

授業レポート

2019/2/14 UP

音楽をつむぐということ

思いを伝える歌詞ってどうやって作るんだろう?そう疑問に感じたことはありませんか?
「音楽をつむぐということ」──今回の授業の先生はシンガーソングライター、リリィ、さよなら。のヒロキ先生。

 様々な思いを抱えて集まった生徒を前に、先生のオリジナルソング『フラッシュバック』の演奏から授業がスタート。空気がほぐれたところで先生の自己紹介。音楽を始めるきっかけや続ける理由を語っていただきます。


「初恋の子とカラオケに行ったら褒められたのがうれしくて笑。
初めて曲を作ったのは中学生の頃、夏休みに扁桃腺の手術で2~3週間入院している間に。
友達と行きたかった花火大会のことを書いた曲でした」





学生時代の、それも夏に入院は辛い。行きたかった気持ちが強く表れた曲だったのだろうなと思いました。 

「自分が感じたことを整理してかたちに残したい。曲は『伝えたい』という気持ちからできる。
普段から浮かんだらファミレスのペーパーナフキンに書いたり、ボイスメモに残したり、いつでもどこでも作っています。どうして音楽を続けるのか?といったら、たとえ自分が死んだとしてもかたちが残ったらうれしいから。

自分が生まれた意味を感じるのが僕にとっては音楽。
諦めなければ夢は叶うとは思わないけど、夢を叶えた人は一度も諦めなかった人。
『続けること』が大事」

 

ここで一度先生への質問タイム。直接話が聞ける機会に次々と質問が飛び交っていました。 

授業の後半に入る前に、先生のオリジナル曲をもう一曲。
高校生の頃、大好きな先輩が遠くに行ってしまった時の曲、『プラットホーム』。
電車が来て先輩を連れ去ってしまう……聴いていてそんな景色が目の前に広がる曲でした。


ヒロキ先生が歌詞をつむぐ上で考えていること4つ。

・作詞をする上で「何を言いたいのか」を自分が理解しているか

・「ありがとう」や「愛している」、
「悲しい」や「せつない」気持ちをいかにさまざまな角度から言葉で表現する

・最終的に伝えたい気持ちを「ゴール」として、いかに歌詞をストーリーのように構成していく

・歌詞にのせる「自分の思い」のパーセンテージをどれだけあげられるか 

そしてここからこの授業のメインパート、
生徒のみなさんが事前に宿題として提出した歌詞の中から、先生が気になったものをいくつか取り上げていきます。
実際に取り上げられた歌詞の1つを紹介します。 

――――――

今日から君は大切な人と
新しい道を行くんだ
いつでも僕はここで待ってると
言えない言葉、握りしめている
精一杯の笑顔で見送るよ

ぎこちなくて不細工かもしれない
ドレス纏って幸せそうな君は
悔しいけれど世界一綺麗だ

――――――

この歌詞を先生が読み上げると教室から「ああ…」という声が上がります。
この一節だけでどういう状況なのか、そこにいる全員が共有できる歌詞ですね。
「素晴らしい。ほとんど直すところはない。語尾くらいかな」と少し先生が手を加えます。 

――――――

ぎこちなくて不細工かもしれない
ドレス纏って幸せそうな君
悔しいけれど世界一綺麗でさ

――――――

「せっかくだから…」ヒロキ先生が即興でメロディーを付け、生まれたばかりの歌詞を曲にして歌い上げます。
自分が作った歌詞が曲になるなんて感激ですよね。
メロディーに乗せたことによって、せつない歌詞がよりせつなく響きました。

この授業で印象に残ったのは「続けること」という言葉を先生が授業の中で何度も言っていたこと。
続けていると良いこともあれば悪いこともある。それでも続けることを大事にしていきたいと思いました。
私にとっても、伝えることについて振り返る良い機会になりました。



(レポート:鹿沼茉希子、写真:高橋正)