授業レポート

2017/3/22 UP

ニッポンの手仕事を、どう残していくか?


今回は先生が2人!
「ニッポンの手仕事を、残していく」をコンセプトに掲げる動画メディア『ニッポン手仕事図鑑』の大牧さんと、書道用具の製造販売を行う専門店、宝研堂の硯工房の製硯師、青栁さんです。
大牧さんはマクロの視点、青栁さんは職人さん自身、より現場に近い、ミクロの視点で。
「ニッポンの手仕事を、どう残していくか?」についてのトークセッションを行いました。


【第一部】19:00〜19:30

まずは大牧さんから『ニッポン手仕事図鑑』の説明

・そもそも『ニッポン手仕事図鑑』って?
・立ち上げのきっかけは?
・継続していく中で感じたこと
・これから目指していく方向性

美しい日本を残す=地方の手仕事を残す、だという発想から生まれた『ニッポン手仕事図鑑』。
コンセプトは「ニッポンの手仕事を、残していく」。

「残していく」には
①「記録」として、
②「ビジネス」として、
③「発信者」を「残していく」
という3つの意味があるそうです。

①「記録」として残していく・・
この部分は単なる手順の記録ではない、ストーリーを持った記録・・動画・インタビューという形で、多くの反響を呼びました。
②③の部分についても職人さんの販路の開拓や職人さんと探している方を繋げることなどが出来たそう。

2017年1月で2周年を迎えた『ニッポン手仕事図鑑』、ここまでの2年間は「まずはファンを増やすことに専念しよう」と、特に収益を求めず、
例えば、メディアではあるものの、紹介する職人さんたちからは1円も貰わずに映像を制作し続けてきました。
このスタンスは今後も変わりませんが次のステップとして、ここまで培ってきたネットワークを活かして新しいサービスを立ち上げ、
そちらで収益を上げていくことで、さらにたくさんの職人さんを知ってもらうための映像を持続的につくっていきたいとのこと。

また、たくさんの反響を得ている『ニッポン手仕事図鑑』ですが、大牧さんは1つの課題を感じているそう。
というのも、大牧さんが現場で生で見た感動と比べると、映像で伝えられることには限界がある、ということ。
そしてまず何より、「残していく」には「伝統工芸は稼げない」という固定概念を外すことが大事。

そのために、映像だけでなく、実際に見て体験してもらう場(ワークショップ、工房見学、そして職人さんを撮影してもらうカメラ講座・・等々)を計画されています。
こちらも以降、『ニッポン手仕事図鑑』のWebサイトでお知らせされると思いますので、お楽しみに!
https://nippon-teshigoto.jp/



【第二部】19:30〜20:00

次は製硯師、青栁さんのお話。
青栁さん前のテーブルには硯の材料となる原石、工具が。
普段使用している工具、硯に適した石、作製手法(肩でノミを押す・・手の力を使わないそう!)などなど硯づくりに対するエピソードが盛りだくさん。



硯で墨が磨(す)りにくい・・小学校の書道の授業でそう思った方は多いでしょう。
しかし本来はもっと磨りやすいもの。
適切な石に磨る機能を与えれば年賀状350枚分の墨を10分で磨れるそうです!
途中では参加者が硯づくりの体験も(希望者多数のため”じゃんけん”で決めることに)。
思いのほか力が要る作業。
石を磨る音は澄んだ空気の中にいるような不思議と落ち着く音でした。

そして、「ニッポンの手仕事を、残していく」には?というお話。
ここでも「稼げる」というキーワード。
大学の講師、メディアへの出演などご自身でも積極的な発信をされている青栁さんですが、やはり職人業で「稼げる」ことが大事。
硯が出来上がるまで-山から石を切り出し、切る、磨く、彫る・・四五平(一般的な硯のサイズ)で、販売価格は約5000円、
一日に彫り上げられるものが1枚だとして、公務員と同じくらいの収入を得ることは可能だそう。
ただ実現している方は全体の3割くらい。独立して一人で工房をもつ、となるとなお厳しいという現実。

そして第三部へ・・


【第三部】20:00〜20:30

ここからはクロストーク。

まずは大牧さんから青栁さんへ、「稼げる」ためにはなにが必要?という質問。
青栁さんからは、そもそも毛筆で書く文化が残ることが必須、まず文化の土台が耕されることが必要との回答が。

ここで、万年毛筆(筆ペン)が登場。青栁さんお勧めの筆ペンで「普段なかなか毛筆を使わない」来場者の皆さんに試し書きをしてもらいながら、
「みなさん、「字が下手だから毛筆は使わない」、ですか?」

多くの方にとって「書く文房具」の”最上位”はおそらく万年筆。この認識を崩すことができないか。
「書く文房具」について、万年筆がゴールではなくて、毛筆という選択肢もあること。
そう認識されるように、「文化を耕していく」ことを目指すのだというお話。
でも、、構えず書いてみると楽しい・・筆ペンのほうが意外に悪字を誤魔化せます(笑)
そして、よく音楽を聴きながら工房で作業をしているという青栁さん。

iPhoneからの音だけだと何か味気なく感じていたときに、iPhoneを硯材の上に置いたら音の響きが不思議と良くなったという経験から着想、硯材で作ったiphoneスピーカーを見せてくれました。
このように常にアンテナを張り、なにか新しいものにもチャレンジしていきたいとのこと。



そろそろ終盤。
青栁さんが製硯師になった背景には、子どものころから墨を磨るということ、書くということ、その体験が身近にあったと言います。

書家の親族のところでは墨を磨ると100円、硯職人の親族のところでは墨を磨ると200円!ということで、よく墨を磨っていたそう。

(そして、硯職人の方が稼げるのかも?!と思ったとか)
文化を残す、育てていく。
「稼げない」「敷居が高い」という概念を無くすには、
やはり子どものころから伝統工芸に触れる機会を増やすこと。
そのための発信がやはり大事です。

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最初、一人一枚便箋が用意されていたので、
授業では毛筆体験がみっちり行われるのでは・・とカンチガイしていました。
でも実際登場したのは筆ペン!
「毛筆で書くこと」をいきなりお勧めするのではなく、まずは筆ペンで書いてみる。
筆ペンが楽しくなったら、つぎは毛筆・・というところと、「製硯師は黒子、道具は使ってくれる人のモノだから、製作者の名前は入れない」というお話。
何だか、職人さんならではの落ち着きのような、どっしりとしたものを感じました。

『ニッポン手仕事図鑑』、このページから青栁さんの工房「宝研堂」の様子が見れます。
https://www.youtube.com/watch?v=98KM6V-txpk
冒頭の石を磨る音がとてもきれいで印象的。
ぜひ聴いてみてください!
ありがとうございました!

(レポート:本多由佳 写真:小林良也(ニッポン手仕事図鑑))