シブヤ大学

授業レポート

2023/12/25 UP

活動・起業を始めたキッカケに迫る vol.1
〜離婚後の子育て"共同養育”をサポートする「りむすび」代表の場合

はじめに
人生が変わった「キッカケ」は、皆さんにとって何でしょうか?人は同じ経験をしても、それがキッカケで会社を起こす方、活動を始める方、はたまたその経験では人生に大きな変化が起きない方など様々です。その違いは一体何か。その「キッカケ」を深掘りすることで“何か”が浮かび上がってくるのではないか。そんな疑問から生まれたのが「活動・起業のキッカケに迫る」シリーズです。今回は第一弾として一般社団法人「りむすび」代表、しばはし聡子さんの体験をお聞きしました。内容としては、「共同養育」と「起業」という二つのテーマでした。

しばはしさんにとっての「キッカケ」
現在しばはしさんは、離婚後の子育て“共同養育”をサポートする「りむすび」を経営されていますが、一体なぜ起業に至ったのでしょうか。それは、しばはしさんご自身の離婚にまつわる原体験がきっかけでした。しばはしさんは、離婚の際に息子さんを引き取りシングルマザーになりました。初めは、元旦那さんに対して反感を抱いており、息子さんを元旦那さんに会わせたくないという思いが強かったそうです。しかし、離婚してしばらくして、息子さんが不安定になっていることに気づいたしばはしさんは、共同養育について考え始めます。そこで、夫婦が「争わないこと」が、夫婦にとっても子供にとっても最善なことだと気づきます。その結果、離婚後も両親が共同で子供を養育する「共同養育」の仕組みが社会に絶対なくてはならないと考え、起業を決意されました。
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「共同養育」の必要性〜争わない離婚?〜
ここからは、今回の授業の一つのテーマである、「共同養育」についてご紹介します。まずここで質問です。みなさんは、離婚後、別居親が子供に一年に一度でも会っている割合はどれくらいだと思いますか?私は5割くらいかと予想していました。しかし、現実は約3割の子供しか、離れて暮らす親と会えていません。では、なぜ会えていないのか。原因は様々ですが、一つには裁判を利用して離婚を処理することがあげられます。しばはしさんのお言葉で、「離婚は感情9割、条件1割」だと言われていたことが印象的です。つまり、離婚は「親権をどうする」「養育費はどうする」といったように淡々と条件だけを決めていくだけでは不十分で、むしろ感情を整理していくことの方がより重要だということです。しかし、裁判という手段をとると、弁護士との話し合いの場では、感情を度外視して条件だけを次々に決めていくことになりがちです。そうすると、顔の見えない条件の出し合いの結果、調停は長期化し、さらに夫婦関係は悪化していきます。これでは、「共同養育」なんて到底考えられるはずもありません。そこで、りむすびでは、調停の際に、「ADR」という方法を取られています。ADRとは「裁判外紛争解決手続き」といい、裁判という形をとらずに、その場に関係者が集って問題を解決していく方法のことを指します。りむすびの場合も、カウンセリングの場に夫婦両方が出席することで、お互いの顔を見ながら、お互いの気持ちを言い合うという形式を取るため、感情ありきの相談になります。そうすることで、結果的に、夫婦はお互いを理解し合い、関係を再構築し、最終的にほとんどが「共同養育」を選択できるそうです。それは、ひいては子供が親の顔色を窺うことなく、素直な気持ちを発言できることに繋がります。両親にとっても、子供にとってもウィンウィンな関係が、「共同養育」は実現できるのです。
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しばはしさんの考える起業 〜私は絶対に起業できないと思っていた〜
では、ここからはしばはしさんがご自身の経験から考える、起業の工夫について見ていきたいと思います。しばはしさんは、とてもパワフルで、人を惹きつける力をお持ちのように見えましたが、初めは「私は絶対に起業できない」と考えていたそうです。なぜなら、それまでの人生は、“ぬるま湯に浸かっている“ような安定した生活を過ごされており、自分で何か事業を始めるなんて想像したこともなかったようです。
しかし、ご自身の離婚がきっかけとなり、離婚についてのブログを始めていきます。それから徐々に、会社に隠れて活動を拡大していくうちに、「共同養育」の社会的ニーズに気づきます。“共同養育は社会になくてはならない。”そう確信したしばはしさんは、安定していた会社を退職し、一般社団法人として「りむすび」を始められました。ここで、しばはしさんは、起業をする人は、「したいことがわからない」「あったらいいな」ではなく、「なくてはならない」と思う何かを見つけた際に起業することをお勧めされました。それは、ご自身が、共同養育はこの社会になくてはならない、それによってこの社会を変えていくという強い意志がきっかけで会社立ち上げに成功し、さらにその思いを現在でも持ち続けていることが、事業の継続につながっていると感じているためでした。最近は起業ブームで、何かと起業を後押しする発言が多い中、しばはしさんのように「なくてはならない」という意志が固まってからの起業を勧める声は稀だと感じ、現実を素直に語ってくださるしばはしさんらしさが溢れたアドバイスだと感じました。部屋に集まっている人々<br />
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参加者も教え、学び合う
今回の授業の参加者は七名で、年代は20代〜60代、男性も女性も様々でした。しかし、しばはしさんが参加者に積極的にお話を振っていくことで、本音が飛び交う、発言しやすい場が形成されていました。参加者の中には、ご自身も離婚を経験されている方もいました。妻と、夫と、自分の親が、、、、様々な立場から自身の経験を発言し合い、時には本音で語り合う。自分とは違う視点との対話によって、参加者同士が自分の経験を別の視点から捉え直すことができる「キッカケ」ができているように私は感じました。

この授業も「キッカケ」になる?
お話いただいた「共同養育」と「起業」の二つのテーマは、どちらも非常に内容が濃く、時間があっという間に過ぎました。授業を終えた後もしばらく教室で参加者の方々が互いにお話をしている姿をみて、この授業が「キッカケ」となって参加者の人生が大きく変わることもあるのではないかと感じました。キッカケを語る場さえもキッカケになる。今後の「キッカケ」シリーズにもぜひご参加ください。

ポーズをとる男性グループ<br />
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(レポート、写真:中村ひかる、神田益規)