シブヤ大学

授業レポート

2017/7/26 UP

あっぱれ!昆虫食

皆さんは、地球上で昆虫を日常的に食料としている人がどのくらい居るかご存知ですか?

100万人? 1億人? いえいえそんなものではありません!正解はなんと約20億人なのです!!

この数字は、2017年時点の世界人口の約30%弱ということで、どれだけ多くの人が昆虫を食しているのかお分かりいただけるかと思います。世界では、主に東南アジア、アフリカ、中南米で食料として流通しており、広範囲で昆虫食の文化がみられるのです。

しかしながら、日本では、昆虫食がいまいち浸透していないのが現実です。そこで、現在、ワークショップや企業との共同開発等を通じて、昆虫食の魅力を発信しているのが、今回の授業の先生である篠原祐太さんです。

授業は、各テーブルの真ん中にコオロギやミールワームが入った虫カゴを囲んで、生徒さんの自己紹介からスタートしました。

昆虫食に興味のある方々が参加して下さり、皆さん笑顔で、どのテーブルからもわくわくしている様子が伝わってきました。

参加のきっかけを聞くと、「以前から興味があった」、「体験したかった」という声がいちばん多く、「昆虫食は未来食を考えるきっかけになると聞いて参加した」、「海外で食べたことはあるけど、他にどういう食べ方をするのか知りたかった」といった声もありました。




~なぜ虫を食べ、虫を勧めるのか~

参加者の皆さんの緊張がほぐれたところで、篠原さんより、ご自身のこれまで経歴と活動についてお話がありました。

4歳から昆虫を食べるようになった篠原さん。当時は昆虫を食べることは“普通じゃない”という周囲の視線もあり、人目を忍んで昆虫食を楽しんでいたそうです。

そのような少年時代を過ごす中で、篠原さんが昆虫食を周囲に広めようと思ったきっかけは、2013年に発表された【FAO(国際連合食料農業機関)】という国際機関の食糧問題を解決する可能性として昆虫食を推奨する報告書でした。

報告書には、昆虫食のメリットとして、栄養価が高いという健康面、飼育効率が良いという環境面、経済格差に関係なく誰もが手軽に採集、繁殖させられるという社会面がそれぞれ挙げられていました。

国際機関が注目し、食糧難を解決する可能性があるという後押しもあり、篠原さんは昆虫食の魅力を広く公に伝えていくことを決心しました。ただ、実際に魅力を伝えても、嫌悪感を拭えなかったり、距離を置かれてしまう人がいたりと、すんなりとは受け入れられませんでした。その一方で、少数ではあるものの、興味を持つ人もいて、そのような方々に昆虫食の魅力を伝え、結果として「美味しかった」、「新しい発見ができた」、という声を聞けることが活動の原動力になりました。


~昆虫食の魅力~


篠原さんは、昆虫を食する際に、「興味本位で食べてみる」ではなく、「栄養価が高いから食べる」でもなく、純粋に「食べたいから食べる」というポジティプな思いで、昆虫食が広がってほしいと強く思っています。そのために、情報ではなく、経験をとても大切にしていて、気軽に昆虫食に挑戦できる場づくりとして、将来的に昆虫食を取り扱う飲食店を展開したいという目標があります。

これまでの活動で、実際にコオロギの出汁を使ったラーメンを提供し、完売するほどの大盛況だった実績があることから、虫を使ったラーメンは魅力を伝えやすい、体験しやすい場になるとお話していました。


以下、篠原さんから教えてもらった昆虫食の魅力を箇条書きでご紹介します。


○自分で採って食べる面白さ(魚釣りと似たような感覚ですね)
○自然との触れ合い(気持ちいいし、童心に返った気持ちになります)
○頭も体も動かす、勝負事の様(採るか逃げられるか)
○発見の連続(どんな味?どの食材と合うか?等々)
○飼育しやすい(簡単に育てられる、お金もかからない)






~実食~

篠原さんのこれまでの活動のお話を聞いた後は、皆さんお待ちかね、メインコーナーの実食です。美味しいという味の評判は聞いていましたが、どんな食感なのか気になって、授業中もずっとドキドキしていました。

まずはコオロギとミールワームの素揚げから実食。

生徒全員、キラキラした目で生きたコオロギ、ミールワームをそのまま油の中に投入して調理する様子を見学。その光景はさながら小学校の理科の実験や家庭科の実習のようで、懐かしい思い出がよみがえりました。

素揚げの味付けは塩のみで、みなさん、エビやコーンや卵の白身の味に感じたりと、いろいろな味の感想がありました。共通していることは、香ばしくて、パリパリとした軽い食感で、“しっかり美味しい”こと!

また、「ビールのおつまみに合うね~!」という声がとても多く、「スナック感覚で食べたい!」という声もありました。揚げたてがテーブルに並んだ瞬間、「キャー!!」という歓声と同時に、あちこちから手が伸びて、すぐにお皿が空っぽになるほど大人気!



2品目は、コオロギとミールワームの素揚げとクリームチーズをトッピングしたクラッカーです。

クラッカーの上にコオロギとミールワームの素揚げをのせ、クリームチーズをトッピングして、お好みでサルサソース、アボカドソース、コオロギソースをかけたら出来上がりです。彩りも鮮やかで、一変にオシャレな食べ物に早変わり!


参加者の皆さんがにこにこしながら“インスタ映えする盛り付け”を楽しんでいて、味覚ではなく、視覚から昆虫食に入るのもいいきっかけになるのではと思いました。





3品目は、コオロギの出汁を使った佃煮入りおにぎりです。

コオロギの佃煮が入っていますが、こちらも“コオロギ感”を全く感じることなく、一般的な佃煮と同じように甘いお醤油の味がベースだったこともあり、美味しく食べることができました。揚げ物と違い、こちらは少し柔らかい食感が印象的です。





最後に締めのスイーツはトノサマバッタのパンナコッタです。

トノサマバッタが粉末状になって入っているので、見た目も食感もパンナコッタでした(笑)


バッタがほんのり抹茶に近い味を感じさせてくれて、洋菓子なのに和菓子を食べているような不思議な気持ちになりました。

また、今回の授業には特別ゲスト(?)として、篠原さんが飼っているハリネズミさんにもご参加いただきました。昆虫食を体験しながら、昆虫食の大先輩であるハリネズミさんが昆虫を食べている様子を観察しました。

篠原さん曰く、ハリネズミさんが美味しく虫を食べているかどうかも、昆虫食を広めていくうえで参考になるそうです。たしかに、誰かが美味しそうに食べていたら、美味しそうに見えますよね。



昆虫食を体験して感じたことは、何よりも“美味しかった”という驚きです。調理のバリエーションも様々あり、特別な味付けも必要なく、食感も楽しむことができました。

また、経済面や効率面(飼育スペースや繁殖数等)においても、「省エネで食糧が確保できる」というメリットがあるようです。人類誰もが平等に気軽に食べることができる食糧は昆虫だけだと思うと、愛着が湧き、地球の未来に欠かせない立派な食事になるのでは!?と思い、昆虫食の可能性を強く感じました。

米、肉、魚、野菜、虫、食卓に並ぶ未来は、もうすぐそこかもしれません!



(レポート:牧野祐也、写真:金澤由紀)