シブヤ大学

授業レポート

2017/1/26 UP

東北の伝統針しごと「一目刺し」で飾る生活の布

最近、雑貨屋さんなどで可愛い蚊帳ふきんやこぎん刺しの小物をよく見かけるようになりました。今回、参加された生徒さんの中にも、自己紹介で「和雑貨から刺し子に興味を持ち、自分でも刺してみたくなりました。」とおっしゃる方が多くいらっしゃいました。でも「何から初めてよいのか分からなかったので、この授業はとても楽しみでした。」とのことで、皆さん気合い充分!!


 しかし、はやる気持ちを抑え、まずは皿指ぬきの運針の基本練習。私も挑戦しましたが、本当に難しい。約7㎝の布団針(手の小さい方は和裁用の大くけでも可)が、全く言う事を聞いてくれず、どうしても針のお尻が、指ぬきから離れてしまうのです。「運針が出来るようになると、速く、真っ直ぐに縫えるようになりますよ。」という先生の言葉を励みに、自己流になりそうになる誘惑と戦うこと30分。いよいよ、コースター作りへ。

  通常、初めての方は、練習用に更級(さらし)を使います。でも先生は「生徒さん達に是非、本物の伝統に触れて欲しい。」というお心遣いから、三河木綿と松阪 木綿の帯をほどき、コースター大(14㎝角)にカットした生地を用意して来て下さいました。ふと、気が付くと手のひらが、手汗で色落ちした藍色に。これも、本物の藍染の布ならではの味わいです。



 今回は「柿の花」という模様が選ばれました。日本特有のモチーフと思われそうですが、先生によると「インドにも全く同じ模様がある」とのこと。「シルクロードから伝わったモチーフなのかしら。」などと想いを馳せながら針を進める幸せなひととき。

 でも、はたから見ると、皆さん全く休憩を取らずに、息をすることさえ忘れて取り組まれているようでした。先生が「皆さん、呼吸はして下さいね。」と心配される程でした(笑)。

  そして、先生も最後までノンストップで、ひとりひとりに、針の持ち方などの基本から、とても丁寧に分かりやすく教えて下さいました。

 その結果、皆さん全員が、完成したコースターを手に帰路につかれました。 「また、是非、参加したいです。」とリクエストして下さる方も多く、スタッフ一同、清々しい充実感でいっぱいでした。



 針を進めるうちに、みるみる浮き上がる無限の幾何学模様の宇宙。
 その神秘的な美しさは、厳しい北国に生きる人々を癒し、心の支えとなったことでしょう。

(レポート:花岡奏/ 写真:横溝遥)