シブヤ大学

授業レポート

2016/11/24 UP

古民家の「再生」と「活用」で
地域の誇りと産業を創る

今回の先生は、一般社団法人NOTEの星野さん。
建設コンサルタントやブランディングファームのブランドマネージャーとして活躍後、ポートランドへの短期留学を経て一般社団法人ノオトに参画しています。
※ノオトとは、本社を篠山に置く民間の公益法人。
古民家活用を軸とした地域再生と、研究開発・コンサルティングに取り組んでいます。

ノオトのミッションはかっこよくいうと…
「日本の歴史的建築物の価値最大化と活用と収益化を通じて次世代に継承する」こと!

最初に言います。
今回の授業かなり盛りだくさんな内容でした。
具体的なスキームの説明や実例の紹介があり、実践的なお話がたくさん(^^)
今後、古民家活用や地域活性化に関わっていきたい方にとってははじめの一歩を踏み出すヒントを得られたのではないかと思います。

まずは日本社会の変化のお話から。
 日本の総人口は、2004年をピークに、今後100年間で100年前(明治時代後半)の水準に戻っていきます。この変化は千年単位で類を見ない、きわめて急激な変化。人口が急激に増加していた時代と急激に減少する今の時代とは、全く逆の価値観なのではということ。昔は、押し寄せてくる開発から歴史的資源を守ろうという流れでしたが、人口減少社会の現在では全く逆で、開発は押し寄せてくることはなくなり、古い町並みや建築物を守っていく担い手がいなくなっていくことで、まちの内側から崩れていく流れとなっています。
 そして、この人口の激減と共に「豊かさ」の考え方が変化しています。高度経済成長・グローバル化の中で、日本のさまざまなモノが失われてきました…たたみ、集落、まつり、和紙、里山、商店街、いろりなどなど。
確かに、古き良き時代の日本では当たり前にあったモノや風景が徐々に失われつつありますよね。価値観が逆になる現代では、そういったものが大切になるのではないかという提言でした。

地域の「負の遺産」だと考えられていた古民家も、NOTEにとっては「宝物」
そんな古民家の魅力とは…
 自然との対話、緩やかな時間の流れ、その土地の土や木などに包容されている感覚(安心感)が得られること。NOTEは、改修によって「その建物が一番輝いていた時代」のきらめきを取り戻します。水廻りなど必要な改変を加え、さらにかっこよく仕上げるのです。

 ここで丸山集落(実例)の紹介。
丸山集落とは、篠山市の山奥にある小さな集落です。
そこの空き家3軒を活用した宿は、ノオトと集落の方々が共同で運営をしています。
接客は、集落の方々がメイン。近くに住んでいるおばあちゃんがベッドメイキングのアルバイトをしたり、集落の娘さんが女将をしたりと、地元の方々がうまく入り込んで運営されています。さらにフレンチレストランを併設しており、シェフの手によって更に洗練された料理、朝は地元のおばあちゃんたちの手作り朝食を楽しむことができます。食材はもちろん地元のものばかり♪

トーク前半の終わりは、皆さんのワークタイム♪
「きっと皆が知らないあなたの地元自慢を教えてください♪」というテーマについて
参加者同士が盛り上がりました。
「私の地元には何もない…」という声をよく耳にしますが、よくよく考えてみるとやはりそこにしかない文化や食べ物、お祭りなどがいっぱい残っているのですね。

さてさて後半は、超実践的なお話から!

まず、家主が空き家の活用を断る一般的な理由としては
・仏壇がそのまま残っている。
・荷物がそのままになっている。
・盆や正月には子供が帰ってくる。
・貸すと盗られる。         などの理由が挙げられます。
しかし、本当の理由は、
・変な人に貸すとコミュニティに迷惑がかかる。(何勝手にやっとるんじゃ ヒソヒソ)
・売ったり貸したりすると余計な詮索をされる。(あそこ金に困ってるんちゃうか ザワザワ)
…なるほど!!仏壇があるから貸せないよ、と言う話はよく聞きますが
本音を探ると、知らない人に貸してしまって周りからごちゃごちゃ言われることを心配している方々が多いようです。田舎ならではのご近所関係にヒビが入るかもしれない、という不安が最も大きな原因となっているんですね。

そこで、空き家を流動させ活用するためには
・地域合意がカギ。まちづくりのきっかけとする。
基本的にはその地域に入り込み、「この建物は地域の活性化のために使うんです、うまく活用すればこんな風にまちづくりに役立つんですよ」と地元の方々に説明。
そうすれば「ああこの家はコミュニティの役に立つのか フムフム」と地域の方々に理解してもらえます。
・空き家活用の検討を通じて、コミュニティのニーズ(地域の夢)を顕在化させる。
・貸せない理由を、創意工夫でクリアしていく。    ことが重要とのこと。

ではここで、古民家活用の5つの方法をご紹介~
①転売方式
②サブリース方式
③地域運営方式
④活用提案型指定管理方式
⑤ファンド方式

①転売方式
物件を取得し、改修して、希望者に販売。
・残された荷物を片付け、耐震補強、補修等のスケルトン改修を実施することで販売できる状態にするというシンプルな方法。
・仕上げ工事のオプションつきで販売。

②サブリース方式
空き家を10年間無償で借り受け、必要な改修を行ったうえで、事業者(クリエイティブな人々など)にサブリース(又貸し)。
・NOTEは事業者から家賃をもらい、改修にかかった費用を回収。
・10年後、改修された状態の家が家主の手に戻る。
・10年後に家主が使用しないという場合は再度サブリースで活用。
・今までで一番多用してきた方法。収益化に繋げるのがなかなか難しいがチャレンジしやすい。

③地域運営方式
空き家を10年間無償で借り受け、必要な改修をしたうえで、地域コミュニティと連携して運営する。丸山集落はこの方式。
・サブリース方式のように人に貸すのではなく、地域と共に自分たちで運営する。
・コミュニティビジネスを創出。10年間で投下資金を回収。

④活用提案型指定管理方式
民提案・公設・民営により、指定管理料ゼロで施設を運営。
(朝来市と豊岡市で実現)
・普通は歴史的な建物を、行政が購入して運営するとなると、入り口に受付の方が配置され入館料がかかる。受付の方や草刈りをする方への人件費がかかる=管理費がかかる。
・しかし、この方式の場合、自治体はNOTEを指定管理者に指定する(指定管理料=0円)
・NOTEが、施設を運営し(管理運営、賑わい創出の役割)、管理費も収益の中でまかなう。
・基本的にはコンペ方式で活用提案。「この施設をどのように使いますか」というコンペが行われる。
・自治体が、NOTEの計画提案にもとづいて建物の改修工事を実施。(文化財保護の役割)

⑤ファンド方式
ファンド資金で物件を買い取り、改修したうえで、運営事業者にサブリース。
(篠山城下町ホテルNIPPONIAで実現)
・NOTEがSPC(特別目的)を設立してファンドを受け入れ。(投資と融資を頂く)
・運営事業者とも連携して、建物改修を実施。
・改修した建物を事業者に賃貸し、運営経費と出資者へのリターンを確保。
・ディベロッパーの役割。

今後、古民家を活用して何かやりたいと考えている方は
ぜひご参考になさってくださればと思います♪

そんなNOTEの篠山城下町ホテル(NIPPONIA)のコンセプトは、「町全体をホテルに」。
都会のホテルは、1階がロビーとカフェ、おみやげコーナー、2階がパーティー会場で3階から客室、トップフロアはバーなど全ての施設がひとつの建物にまとまっています。
NOTEは篠山町全体を「ホテル」と見立てて、様々なホテルの機能を町全体に展開しました。現在ジュエリー店、レストラン、カフェ、温泉施設、5棟12室の宿が町の中に点在しています。
NIPPONIAの素敵な外観やご馳走の写真を見ながら話を聞いていたら、今すぐにでも飛んでいきたくなりました。なんと築400年もの古民家をリノベーションしたそう。
丸山集落の大自然に囲まれ、古き良き時代の日本を感じつつ、贅沢なフレンチに舌鼓…う~んたまりませんね!

NOTEの使命は「歴史地区を再生しつつ、未来に繋げること」
具体的には
①歴史的な空き家の活用
②この地域に残っている食文化・生活文化を表現してそれを楽しんでもらう
③創造的な人材を地方に回帰させ、産業を生み出す    の3つがミッションです。

ちなみに日本国土の現状としては、日本国土のたった5%のエリアに人口の70%以上が住んでいるそうです。地方は過疎化により空き家化、空耕作地化が進んでいますが、観光地として日本の暮らし文化が体験できる場所がまだまだたくさんあります。

だからこそノオトは歴史的建築物の活用3万棟を目指してこれからも走り続けていきます。

超実践的かつ具体的なお話ありがとうございました。
質問タイムも大変盛り上がり、90分間だったとは思えないような充実した内容でした。
ありがとうございました。

兵庫県篠山市に遊びにいきます♪

(レポート:鈴木麻美/写真:榎本善晃)