シブヤ大学

授業レポート

2016/6/3 UP

だまされて売られる子どもを守りたい。
〜かものはしプロジェクト、カンボジアからインドへ〜

「世界には人身売買にあってしまう子どもたちが毎年180万人、毎分3~4人もいます。」

かわいそうと思うのは簡単だけど、解決するにはどうすればいいのか、私たちに何かできることはあるのか、そもそもこの問題について正直な所、あまりよく知らない、、、

このように思っている方、多いんじゃないでしょうか。私もそうでした。

今回のThinkCollegeは、この問題を知ることから始まり、参加者同士で話し合うワークと、かものはしの軌跡のお話しを中心として、真正面から考える展開となりました。

先生を務めてくださったのは、認定NPO法人かものはしプロジェクト、広報・ファンドレイジング部担当の草薙直基さんです。悲しく重く感じてしまうテーマでしたが、軽快にテンポよく授業を進めてくださいました。



<かものはしプロジェクトのはじまり>
「ベトナムのある女の子は、家が貧しいため自分が働いて家族を助けたいと思いました。
カンボジアのカフェで働かないかと誘われ連れていかれた場所は、売春宿でした。
毎日10人以上のお客をとらされ、心身ともに傷ついてしまいました。」

かものはしプロジェクトは、このような子どもを守りたいと強く思った大学生3人が2002年に立ち上げた団体です。そして10年間の活動で、カンボジアの人身売買被害にあう子どもの数を10分の1まで減らすことができました。強い気持ちを行動に移して、ここまでの成果をあげられたこと、本当に素晴らしいですよね。年齢は関係ないんですね。

ワーク① この問題の根本的な原因は何か。どのようにして解決していくか。
早速、大きな問いです。参加者からは、貧困や格差が大きな原因ではないかという意見が多く出ました。



かものはしプロジェクトは、人身売買のビジネスモデルを壊すことを解決策と考え、2002年から、カンボジアで活動を開始します。

活動1:子どもたちが出稼ぎする必要をなくすこと→コミュニティファクトリーの経営
貧しい地域の子どもたちを雇用し、いぐさの織物をつくり販売する仕事の場:コミュニティファクトリー、を提供することで貧困を解消し、人身売買の被害を減らすというものです。コースター、ブックカバー、ポーチ、ランチョンマット・・・とっても色鮮やかで可愛くて、細かい作業が必要な織物です。
コミュニティファクトリーでは、職業訓練や裁縫技術だけでなく、読み書きや計算も学びます。彼女たちがインタビューで、ベストを尽くすこと、プロとして仕事をする心がけを学んだと答えていたことが印象的でした。コミュニティファクトリーでは、生きる力も学ぶことができるのです。

活動2:売春宿・客を取り締まること→法執行(警察支援:LEAPプロジェクト)
カンボジア内務省、警察、NGO団体等と協力し、研修費用や実技講習プログラムの提供により、10年間で逮捕者が82人から720人へと増加しました。逮捕を恐れてビジネスをやめたり、新規参入をしなくなったりと、売春宿のオーナーへの抑止力となる成果をあげました。

<カンボジアからインドへ>
そして、2012年からインドで活動を開始します。

ワーク② インドについて、どのようなイメージを持っていますか。
2つ目の問いです。参加者からカースト制度が古くからあるため、貧富の差がカンボジアより根深いのではないかといった意見が出ました。



かものはしがインドを選んだ理由は、レスキューされ村に戻った少女たちの社会復帰が困難だからでした。
男尊女卑が根強い、性産業に関わると被害者でも差別されてしまうといった文化がインドにはあります。村へ帰ることができても、友達だった人に無視されたり、村八分にあったり、外出中に自宅を放火されたりしてしまうというのです。

インドの少女、サリナのお話。
ウェストベンガルという貧しい農村に住むサリナは、両親が共働きでしたが、家計が苦しく、兄弟たちも十分に食べられなく、仕事を探し始めました。いとこの女性が仕事を紹介してくれるとのことで家へ遊びに行き、出された飲み物を口にするとその中には睡眠薬が入っており、気がつけば電車の中、隣には知らない男性。「おまえは騙されて売り飛ばされたんだ」と告げられます。次に気が付いたときには、ムンバイの売春宿にいました。
売春宿のオーナーが、いとこの女性や電車の男性を高額の報酬で雇っていたのです。このような人たちを、トラフィッカーといいます。

サリナは幸運にも、レスキューされ村へ帰ることができました。しかし村の人たちに受け入れてもらえず、家に閉じこもるように。見かねた母親が、かものはしプロジェクトと協力関係にある現地のNGOに相談し、サリナはカーリヤプロジェクトを実践することになりました。村から少し離れたところで雑貨屋を開き、経済的自立、精神的自立、自尊心を取り戻すというものです。

そして、サリナはトラフィッカー、いとこの女性や電車の男性と裁判でたたかう準備をするほどの気持ちになりました。「もう被害にあう子どもたちをつくりたくない」からです。サリナがこう思えるようになったのは、かものはしが寄り添い支え続けてくれたからですね。

このように、かものはしプロジェクトは、インド内で
①売春宿から救出する団体、
②救出された少女たちの心をケアする団体、
③トラフィッカーを逮捕するために裁判で訴えることを支援する団体等
とパートナーシップを組み、有罪判決を勝ち取るための活動をしています。

有罪判決になるのは、まだまだ100人に1人という少なさ。特に、少女たちから証言を得るのがとても辛いことだけど、重要なんだそうです。

「だまされて売られる子どもを守りたい」という気持ちがひとつひとつの行動になり、一人ひとり救われる子どもが増えていること、とても素敵ですよね。私たちにできること、知ること、知ってもらうこと、コミュニティファクトリーの商品を買うこと、ボランティアとして参加すること、募金をすること、たくさんあります。

最後はいつも通り、みんなで写真。手にしているのがコミュニティファクトリーの商品です。いいねこれ、かわいいねーと、あちらこちらで聞こえてきます。

平日週半ばの水曜日、仕事帰りにちょっと疲れてるけど、そんな気持ちもどこかへ行ってしまうような、大きな実りのあるお話を聞ける機会、考える機会、話し合う機会が、渋谷駅前の西武池袋店で毎月第3水曜日にあります。今後もThinkCollegeに注目ですね!!


 
(レポート:中村香織・写真:榎本善晃)