シブヤ大学

授業レポート

2015/10/19 UP

珈琲茶会 〜大坊勝次さんを囲んで〜

汗ばむようなお天気の中、
一昨年閉店してしまった「大坊珈琲店」の店主・大坊勝次さんを先生に迎えて授業を開催しました。
近年、ハンドドリップで淹れるサードウェーブコーヒーが流行する中、伝説的なお店として、その名をご存知の方も多いかもしれません。

授業の流れは、以下のように行われました。
● 大坊さんのコーヒーを2杯頂く
● 大坊さんを囲んでコーヒーなどのお話しを伺う

20名弱の参加者の方は、まず大坊さんのコーヒーをいれている間に、それぞれ席の近い人と今回の授業についてや、コーヒーについてなど少し雑談をしてもらいながら待ち時間を楽しんでいただきました。

ただ、普段のシブヤ大学の授業とは違い、
参加者の皆さんは大坊さんがコーヒーを入れている姿を静かに見つめる時間が十数分流れました。

大坊さんが珈琲を入れるタイミングはとってもゆっくりで丁寧です。
真剣勝負といったようなすこし緊張感のある空気が流れます。
“職人技”という言葉が本当にぴったりな空気感というか、その行為の前ではムダ話がなんとなく雑音的で、自然と大坊さんが珈琲を入れる姿を静かに見入ってしまいます。

大坊さんのコーヒーはとっても深煎りだけどとってもまろやかです。
豆は、ご自身で焙煎を行っており、飲んだ時に酸味を感じない(酸味ゼロで、大坊さんのレベル分けでは、“7”と表現)まで豆を焙煎されるそうです。また、豆の甘みや苦味、香りなどを加味し、コロンビアやタンザニア、エチオピアなど様々な国の豆を個性に合わせて焙煎し、配合を行うそうです。
その焙煎の具合を“笑顔”で例えられているなど、大坊さんのユニークな焙煎の表現や考え方が印象的でした。



参加者の方々は、「大坊珈琲店」で大切に利用されていた思い出深い珈琲カップやデミタスカップで珈琲を楽しみました。すごく高価なのもの(大坊さんは特に触れていませんでしたが参加された方が仰っていました)や、金継ぎが施されたものなど、お店で大切に使われていた個性豊かなカップを大坊さんにはご持参いただき、珈琲の味をより高める役割を果たしていました。

もう閉店してなくなってしまった「大坊珈琲店」。
今回の授業では、お店で使用されていた絵やお店で流れていた音楽、器などを利用し「大坊珈琲店」を体験できる場が提供されました。
そしてその雰囲気の中、味や雰囲気はあくまでも参加者皆さんが感じることで、その価値を押し付けることなく、楽しんでもらいたいという配慮をどこまでも追及されていた大坊さんの姿が印象的でした。


(レポート:山口由季子/写真:榎本善晃)