シブヤ大学

授業レポート

2015/3/17 UP

本を持ってきて話そう。
自分らしいまちライブラリー的生き方、働き方を考えよう!

【わたしの学び】

●公私混同な生き方もありだということ

●損得勘定抜きで付き合えるものがライフワークであるということ

●誰かにペイフォワードする生き方は素敵だということ

 

【本によって、拡がり繋がる人と街】

生徒のみなさんが思い思いの「好きで、誰かと語り合いたい本」を持って集まった今回の授業。
グループになって、お互いの持ってきた本の話をすることからのスタートでした。

「なぜ、この本が好きなのか」を話すことは、
本を介さない自己紹介とは違い、
プライベートな興味や関心を語ることにつながります。
肩書きなどからではない入り方の自己紹介で、どのグループもとてもよい雰囲気になっていました。

一斉に机に並べると、写真集からビジネス書、小説まで幅広く、
「人の感性ってこんなに違うんだなぁ」と当たり前のことを、しみじみ感じてしまいました。
本から見える人間性、ダイレクトに感じられておもしろかったです!


そこから、礒井さんのお話に入っていきます。

どのように「まちライブラリー」という活動を始めることになったのかを、丁寧にお話ししてくださいました。

「森ビル」の社員として「六本木アカデミーヒルズ」の運営に関わることになった礒井さんは、
試行錯誤を繰り返しながらアカデミーヒルズの形を構築しバリバリと働いていましたが、
長く続けていくにつれ、自分はやりたいことを本当にできているのだろうか、
これでいいのだろうか…と考えられたそうです。

その後、自分の仕事を見つめなおし、結論に至ったことは、
「やりたいことは、ライフワークで実現しよう。
   効率や実益を突き詰めて追うような組織の仕事はライフワークにはできない。
 損得勘定抜きで付き合えるものがライフワークだ。」
ということ。

 
その頃出会ったのが、礒井さんの「心の師匠」である、友廣さんです。

半分ほども自分よりも年齢が下の友廣さんは、
大学卒業後、日本全国70以上の農山漁村を訪ねる旅をしており、

「その日出会った人の役にたつ、行動の意味を考えない」


そういう生活の話を聞いた礒井さんは、自分と真逆なことに驚き、
友廣さんを師匠として一緒に行動をともにすることで、さらに自分のやりたいことを模索して「まちライブラリー」という活動にいきついたのだそうです。

またその後知り合う友廣さんの師匠である友成さんとの出会いも礒井さんに大きな影響を与えたそうです。


「右肩あがりだけをよしとする社会の価値観ではない別の生き方」を体感させ、
「組織にとらわれず個人が生き生きと生活できる生き方の大切さ」を実感させ、
礒井さんの再出発のきっかけとなった…
お二人との出会いは、本当に素晴らしいなあと、羨ましくなりました。



さて、そうして始まったこの「まちライブラリー」は、
メッセージをつけた本を媒介にしたコミュニティで、自宅・カフェ・オフィス・居酒屋など、まちのあちこちに共有本棚を設置し、本にメッセージをつけて交流、人の輪が生まれる仕組みです。

また、そこでできたコミュニティで学び合い触発される「まち塾」で「学縁」をつくることもすすめています。

ありそうでなかった!
と、私は思いました。
本が、人を繋げ、関係性を拡げ、それが街にも拡がる。すごく素敵な仕組みです。


さらに驚いたのは、このプロジェクトを礒井さんはボランティアでされているということ。
連絡があれば相談にのり、一緒に本棚をつくることもあるそうです。。。
感じ入ってしまいました。

誰かにペイフォワードをするように、
また礒井さんの思いに賛同して、
現在は142箇所のまちライブラリーが誕生しているそうです。

各ライブラリーは、
「人」が主役のライブラリーであり、
オリジナリティー豊かで楽しく、
活動は必要以上に無理をせず、
足りないところは誰かの助けを借り、
しかし自分の力で歩いていく自律的な相互関係を築いています。


きっと、このようなライブラリーが増えれば、
素敵な人の繋がりもまた増える、
そういうことです。
 

何かを変えようとするときに、
外側を力ずくで変えるのではなくて、
中にいる一人一人が変わっていくことで良くなっていく…礒井さんはそう仰っていました。
 

「本」からはじまる
「人」が主役で、「個」が主役の、
そんなムーブメントのなのかもしれないな、
と強く感じました。

 
もっともっと拡がると
人が、街が、社会が、変わるかもしれません…!


写真:池田愛、レポート:渡邉祥子