シブヤ大学

授業レポート

2014/11/26 UP

渋谷で働く一人の視点から見た、渋谷で働くことと街を楽しむこと。

働く時に、仕事の内容やどんな人と働くのか、といった会社の中の環境に加えて、
どの街で働くか意識することはありますか?

今回は、働くことと街との関わりについて考える授業です。
現在渋谷で働く2人の方をお呼びして、「渋谷で働くということ」について伺いました。



授業の流れとしては、渋谷で働く二人の先生のお話を聞いた後に、参加者同士で働く街についての意見交換をするという構成で行われました。
本日の先生は、学生のころから海外を旅していて、帰国してからも様々なお仕事をなさっている吉村さんと、留学せずにずっと日本で英語を勉強・出版のお仕事をされている富岡さんという対照的なお二人でした。


●変わった経歴をお持ちの吉村さん

吉村さんのお話を聞く中でびっくりしたのが、学生時代からの経歴です。
大学在学中から通算4年8ヶ月海外に滞在し、現在まで49カ国を訪問。
大学卒業後は地元の会社に就職した後、青年海外協力隊としてコスタリカに2年間滞在。そして中東へ渡り、その後デンマークでデザインと手芸を学びに留学&エコビレッジで有機農業を行う。その後5年ぶりくらいに日本へ戻ってこられて、現在、渋谷ヒカリエのコワーキングスペース Creative LoungeMOVのスタッフをされています。
それぞれの国で取り組まれてきた活動もとても興味深いものでした。

▶︎いろんな場所に滞在して、仕事をしたり、多くの人と関わってきた吉村さんが、どうして渋谷で働くことを選んだのか?そしてこれからも渋谷で働きたいと思っているのはどうしてなのか?

ひとつは、渋谷という街が、まるで海外にいるように、多様な人たち、多様な仕事がある場所だということ。国籍もばらばらであったり、フリーランスやスタートアップ、大企業の役員といった人たちがサードスペース的な使用をしたり、本当に様々な人が働いている場所である。だからこそか、街には自由な雰囲気があふれている。
今までの10年間は移動しながら働いてきたけれど、渋谷は街そのものがいろんな出会いがある。自由な雰囲気があふれているから、今までの自分の経歴が受け入れられやすかったり、自分らしさを残しながら仕事をしていける。実際に街に出ても、ちょっと路地を入ると落ち着いたり、新しい発見があったり、散歩をするのが楽しい。
そういう意味でも旅をしているような毎日だ、
と吉村さんは言います。

・働くこと、いきること。ゆずれないものはなんですか?
吉村さんが渋谷の街の魅力を語ってくださった後、
働くことや生きていく中で、自分のゆずれないものはなんですか?という問いかけがありました。
自分のやっていることが、本当に好きかどうか?楽しいかどうか?心地いいか?
そんなことを忘れずに、そして、ゆずらずに生きてきたという吉村さん。
「場所や仕事内容ももちろん大切だけど、自分のゆずれないものを大切にできれば、
どんな場所でもどんな仕事でも大切にできるはず。」
自分にとって何が大切なのか、もう一度考えさせられるようなお話でした。


●英語パーソナルトレーナーの富岡さん

富岡さんは、吉村さんとは対照的に、留学せずに日本で英語を勉強し、現在TOIEC対策など英語の本を執筆・出版されている英語パーソナルトレーナーです。
東京に生まれ、中高時代を箱根で過ごし、その後また東京(特に渋谷)で働く富岡さんは渋谷をどんな街に見ているのでしょうか?

今日の会場でもあるコワーキングスペース”Creative LoungeMOV”を利用する富岡さん。
その場の特徴として、いろんな人が集まっていて、国籍も経歴も面白くて、創作活動がしやすいこと。さらに創作活動を見守ってくれる仲間もいるから、この場所を見つけられたのは自分にとって大きな喜びだったと言います。
また、渋谷だからこそ、そういう人が集まってくるのではないか?とも感じているそうです。

・渋谷という街も生きている
富岡さんが渋谷で働きながら感じていることをいくつか語ってくださいました。
仕事を進める中でいろんな人に声をかけられたり話が脱線して、仕事が予定通りすすまない場合がほとんどだ、と笑いながら話します。しかし、仕事のアイデアが雑談をしながら生まれることが結構あるのだそうです。あえて仕事の中にフリーな時間を入れ、仕事が煮詰まった時に、ちょっと渋谷の街に出てリフレッシュしたり、イベントに顔を出したり、、、
その時に起きた流れに乗ってみることを大事にしているそうです。そんなことができるのも渋谷という街ならではなのでしょうか。

「小さな頃から渋谷を見ているけれど、どんどん街の風景が変わっていく。
いろんなお店が移り変わったり、いろんな服装をした人々が街を歩いていたり。街も生きているんですよね。変化があるこの街は、これからどうなっていくんだろう?という好奇心があるのでこれからも働き続けながら街を楽しんでいきたいです。」
そう話す富岡さんが、とても生き生きとしていたのが印象的でした。


■質疑応答

渋谷で働くお二人の話を聞いたあとは、参加者同士で意見をシェアする時間。
出てきた質問から一部抜粋します。

・(富岡さんに)海外で英語を試してみたいという気持ちはありますか?
海外に出る前に、まだ日本でやることがあると思っています。渋谷にいたら、海外の人と友達になれるし、旅欲が満たされているのかもしれないです。
どこか違う場所に行くというよりは、人に会いたい、人と深く関わりたいという気持ちが強いので、今広がる目の前のことに対して、深さを味わっています。

・(吉村さんに)海外に行かない富岡さんに海外をすすめないのですか?
海外や日本、という風に分けて考えるのではなく、私たちは目の前にあるものの捉え方が似ているんだと思います。
今、目の前にある人や場所をどのように愛せるかというプロセス、価値付けの部分が大切だと思っているので、海外や日本だから、という部分に囚われずに、世界をどう見るかではなのではないでしょうか。

魅力的な2人のトークと参加者との意見交換で、90分があっという間に過ぎていました。



学生の私は、どこで働くかなんてほとんど意識したことがありませんでした。仕事内容や関わる人を一番に考えて、場所については、最後の最後にちらっと思い浮かぶ程度です。
でも普段歩く街を思い出してみて、私も街や周囲の環境といった「場所」に、無意識のうちに影響を受けているのかも・・・と改めて気付いた部分があります。
地方で働く、という流れもできている今、どこで働くか、どこで暮らしていくかについて意識していくことは思った以上に大切なことかもしれないと感じています。


(ボランティアスタッフ:深澤まどか)