授業レポート
2014/11/21 UP
地域づくりの時代に
1限目:「シビックプライドの育て方」
"自分のいる場所に対する誇り"
今回の授業のテーマは「シビックプライド(civic pride)」。
シビックプライドとは、市民が都市に対してもつ自負や誇りのこと。
シビックプライドの歴史は19世紀のイギリス、産業革命によって急激に人口が増え、都市の数も増えた頃にまでさかのぼります。当時、自分たちが所属している都市に対しての誇りを具現化するために市庁舎が立てられました。
やがて時代は流れ、各都市の間で住民や観光客をめぐって競争が激化していきます。その際、各都市が自らを他の都市と差別化するべく、都市を魅力的にしようと努めた結果、この競争が、今自分がいる場所に対する誇り—シビックプライドを高めることとなりました。
市民がシビックプライドを持つことにより、その都市に自治能力のあるコミュニティが形成されたり、都市全体の一体感が高まる分、印象や雰囲気が良くなります。そして結果として、都市の魅力がより一層高まるのです。
(行政が頑張るだけでは、自治能力は育まれにくく、いつかほころびがでてしまうそうです。)
実はこのシビックプライド、ここ日本においても近年脚光を浴びています。
地方分権やアジア都市間競争など、「都市」の力が問われるような時代となってきたことが密接に関係しているそうです。
さて、それではそのシビックプライドはどのようにその都市の中で育んでいけば良いのでしょうか?
"シビックプライドの育て方は、都市によってちがう"
シビックプライドの育て方。実は、都市の数だけその育て方があるのです。
紫牟田さんは、いくつかの都市の良い例を紹介してくださいました。
例えば、オランダ・アムステルダム。
この都市は「I amsterdam」というキャンペーンを行い、「市民こそが都市である」というメッセージを発信しています。市民のフォトブックや、「I amsterdam」というロゴ入りのグッズを制作・販売したりなど、市民が都市と接する機会を創り出しました。
このキャンペーンは結果として多くのビジネス客や観光客がアムステルダムに対して親しみを感じるようになり、市民にとってもアムステルダムに対する誇りを呼び覚ます契機になったそうです。
このような例から、シビックプライドとは市民の都市に対する誇りであると同時に、市民と都市が接することで生じる、良い相互の関係性でもあると言えます。
紫牟田さんはここでシビックプライドを育むことを、市民と都市の間に良い相互の関係性を育むことと置きます。
そして、市民と都市の間に生じる接点のうち、市民の手によってより良くデザイン可能なものとして、9つの「コミュニケーション・ポイント」を例示してくださいました。
【市民と都市との9つのコミュニケーション・ポイント】
- 広告、キャンペーン
- ウェブサイト、映像、印刷物
- ロゴ、ヴィジュアル・アイデンティティ
- ワークショップ
- 都市情報センター
- フード、グッズ
- フェスティバル、イベント
- 公共空間
- 都市景観、建築
これらを、その都市に合うように組み合わせて、市民と都市が良い関係性を持てるように方略を考える事がシビックプライドを育む上で重要であると仰っていました。
(ちなみに、ゆるキャラやB級グルメなどは、日本独特の、一種のシビックプライド醸成と関係しているものだそうです。)
"もしもあなたが今どこかに引っ越すとしたら、どのまちを選びますか?
あなたが今住んでいるまちは愛されていますか?"
シビックプライドを考えるとき、上記の質問がきっかけになるそうです。
このとき、いわゆる「お国自慢」には気をつけなければなりません。なぜならシビックプライドの目指すところのひとつに、外部からの目線で見た時のその都市の魅力を高める、ということがあるからです。
外部の人からどう見られているか、自分たちのまちにはどのようなコミュニケーション・ポイントが効果的か、という客観的な視点も持ちながら市民の一体感をお互いに高めていくことが重要なんですね。
「自分の暮らしは自分で作る。
自分たちのまちは自分たちで使いこなす。
そうしてシビックプライドが市民の中に根付けば、
その都市はもっともっと素敵な魅力溢れる"あなたの"街になる。」
そう言って話を終える紫牟田さんの素敵な笑顔がとても印象的でした。
(ボランティアスタッフ・五十嵐唯)