シブヤ大学

授業レポート

2007/5/28 UP

「東京油田開発」 

東京にも油田があるんです。みなさんご存知でしたか?しかも、その「油田」は毎年、日本国内でなんと年間20万キロリットル捨てられているんです。
その油田とは・・・そう、天ぷらを揚げた後の天ぷら油のことです!ご家庭で使われている天ぷら油の容器にすると、1億本分捨てられていることでした。なんてこった!資源が捻出できない日本で、生み出せる資源を捨てている事実…。ショックじゃないですか?
ということで、この廃油をリサイクルしてCo2排出を抑制しようするのが「東京油田開発」というプロジェクトであり、その一貫として今回の天ぷらバスが生まれたわけです。

■さてさて、今回の天ぷらバスの先生は、壱岐健一郎さん。エコシーリズム・プロデューサーとして、リボーンという会社で日本をはじめ海外にも体験できる・学べるツアーをプロデュースされている方です。WWFの会員向けツアーを作ったり、海外現地の地元に住んでいる方の暮らしを体験できるツアーを組んだりしています。

まずは国連大学内 地球環境パートナーシッププラザで、天ぷら油の回収の仕方を学びました。現在家庭から出る廃油の回収場所は都内に4箇所しかなく、かつ回収ステーションそのものの存在を市民が知らないことが挙げられました。皆さんはご存知でしたか?もし天ぷら油をリサイクルしたいという方は是非。しかも、渋谷区で発行されるアースデイマネーに変換できるチャンスもあります。天ぷら油500mlで1スタンプ。20スタンプ溜まるとアースデイマネーに換えてもらえるそうです!

廃油を回収される仕組みを知ったところで、天ぷらバスに乗りこみ、実際に廃油を回収している会社「染谷商店」さんへ向かいました。バスの中では、自己紹介!生徒さんは様々、バイオマス系を学んでいる学生であったり、ハイブリッド車に携わっている方がいたり、大学教授がいたり、保母さんがいたり。意外と今回のエネルギー系に近い人が多かったのです。バスの乗り心地はというと、至って快適。なんら加速も問題ないと鈴木は感じました。

で、染谷商店さんの事前情報を聞いてるうちに、墨田区にある染谷商店さんに到着!
ここで染谷商店の松尾さんと合流し松尾さんの案内のもと会社見学のはじまりです。実は松尾さんは東京油田開発の発起人。「生活の中で使ったものをもったいないから使おう!」と声をあげ、廃食油100%の植物性ディーゼルエンジン用燃料 VBF(ベジタブル ディーゼル フィーエル)・BDF(バイオ ディーゼル フィーエル)を商標登録し、その啓蒙活動をおこなっています。しかし、このVDFにするためにはなんとも手間がかかるということでビジネスにはまだ無理ということでした。

■墨田区は、下町の工場が数ある場所。その中に染谷商店はありました。近づくとともに油のかすかなニオイ(植物性なので嫌な臭いではないです)と、山積みされた一斗缶。床は油だらけなのでベトベトし滑りやすい状態。普段入ることができない工場の中は、おそらく生徒さんからすれば非日常。しかし、飲食店や某ハンバーガー屋や、某フライドチキンから出回る油は、僕達の日常にあり、その食べ物を選んでいる僕達がいます。食べるとき、油の行く末をみなさんは考えたことはあるでしょうか。お世辞にもキレイに完備された施設とはいえませんが、油まみれになっても環境のために社会に貢献している会社がある、働いている人がいる日常がある。ということを肌でニオイで実感しました。

廃油を軽油同等にするためには、最低でも、ろ過を含め3日は時間がかかるそうです。
100ℓで1万円の精製費がかかるということで、800ℓ~1000ℓつくらないと儲からないそう。しかし施設や時間の問題があるためできない。染谷商店は「1ミクロンのゴミもとろう」という意識で油を精製しているそうです。というのも、天ぷら油は資源のリサイクルというメリットはあるものの、燃料としたときに、車体のゴムや塗装をダメにしやすかったり、窒素酸化物をうみやすいというデメリットも一方であるのです。
過去、うまく精製ができなかったときはエンジンとガソリンをつなぐパイプがきれて燃え上がる可能性もあったとか。しかし、エネルギーにすれば軽油と同等なわけですから、害の少ない方を選択するほうが環境のため。2011年の新東京タワーの完成時にはVDFバスを走らせようという計画もあるようです。まだまだ課題が多いVDFですが、身近にある新しいエネルギー資源だということを学びました。

■染谷商店の見学が終わると、次はお台場方面。若洲公園内にある巨大風車を見学。
東京にもあったんだ…風車。と思っていたのもつかの間。地上からブレード(羽)の頭までなんと100M!!の風車がぐるんぐるんとムコウの方で回ってるじゃないですか!
でかっ!近くにきてみて、再び、「でかっ!」。ほんと、おっきいんです。カメラで写そうとすると、公園のはじ~~の方までいってやっと入りきるくらい。この風車で1000世帯の発電をまかなえるそう。ずっと回り続けているわけではなく、安全のため風速25mで風車を止めるそうです。手塚治氏のキャラクターが書かれた巨大風車は、自然の力を利用したエネルギーとしてこれから、注目されていきそうです。カリフォルニアでは、既に5000基の風車で国内発電をまかなっているそうです。しかし、風車を立てることが環境にいいとは限りません。景観、風車ができることでも風の流れの変化、開拓、様々な角度からの検証をした上での開発をしなければ意味がないと、鈴木は思いました。

で最後。風の次は太陽、ということで最後にお台場潮風公園内にある、ソーラー発電施設を見学。といっても公園内にある野外に設置してある管理箱みたいなもの。普段は管理人さんしか見れないところなのですが、今回は特別。その箱の中には、備蓄用となる電池だったりPCの画面があり、現在の発電量などが数値化で見られるようになっていました。公園内には、お弁当を広げる家族。フリスビーで遊ぶカップル。日向ぼっこをするおじさま。みんな太陽の下で、のんびりと、また活き活きとリラックスしているのが印象的でした。太陽がもたらすパワー、余すことなく使いたいですね。

あ、忘れてました。天ぷらバスの排気ガスのにおいですが、ガソリンの嫌なにおいもない、あげものをあげたようなニオイがかすかにするぐらい。色も無色透明。排気口に鼻を近づける生徒さんはちょっと異様な光景でしたが(笑)。

ということで、4時間30分にわたるロングな授業はこれにて終了。自分の知らないところでエネルギーの利用が進み、またそれを管理するシステム、管理する人がいる、ということを実感した一日でした。テレビでみるエネルギー問題は、本当に身近なところにあり、多くの人が関わらなくてはいけないことだと実感できた授業です。

(ボランティアスタッフ 鈴木高祥)