授業レポート
2014/3/21 UP
ほしい未来は、つくろう。
~グリーンズの仕事のつくり方~
■ まず、greenz.jp とは?
今回の授業は、もともとグリーンズをご存知の参加者が多かったのですが、最初は復習の意味もふくめ「greenz.jp(グリーンズ)」とはどんなものか、小野さんの言葉で改めて説明をしてくれました。
「greenz.jp」は、「ほしい未来をつくろう」を合言葉に、自分たちの未来をより良くしようと活動している人たちを紹介しているウェブマガジン。授業では、紹介動画も見せていただきましたが、これはウェブサイトでも公開されているものなんで、興味のある方はこちらをどうぞ。http://greenz.jp/about/
小野先生によると、greenz.jpは2006年の創刊から徐々に知名度を上げ、2012年の書籍発行をきっかけに、アクセスしてくる読者が増えたそうです。ウェブ専門のメディアなのに広告がほとんどない「グリーンズ」。いったいどうやってお金を得ているのか、それが今回の授業の主旨です。
■ ほしい未来をつくるお金
ところで、この授業は途中で3回ほど、まわりの参加者同士で感想しあう時間があり、かるく自己紹介などをしたのですが、びっくりしました。社会起業家と呼んでいいのかわかりませんが、僕がお話した方だけでも、「医療の専門家と住民をつながる街づくりをしている方」、「シェアハウスを運営している方」、「港区に仮想の”街”をつくる取り組みに参加している方」などアクティブな人がいっぱい。グリーンズの資金調達の話題も、まさに自分事として学ぼうと真剣です。西武デパートの売り場の一角は、静かに熱い空気で満ちていました。
さて、小野さんの話です。小野さんがグリーンズに参加したのは、創刊時ではなく2009年から。事業化をちゃんとしていこうと見なおした折りだったといいます。グリーンズは無料のウェブマガジンだけでなく、人々の出会いの場となるグリーンドリンクスなど、多岐にわたる活動をしていますが、いずれもそのままでは事業を支えるお金になりません。そこで小野さんは、グリーンズが日々の活動できずきあげた、取材先や読者らとの人間関係を、企業・行政が求めている課題解決とむすび、「Win-Winの関係」をつくることによってお金を集めています。
たとえば、「ICT技術はあるけれど、それを社会に役立てるアイデアがほしい企業」、「全国にお店はあるけれど、地域が元気になるハブとしてそのお店を機能させたい企業」などに対し、その課題に応える提案をしていくわけです。そうしたアプローチを続けるうえで大切なポイントは5つあると言います。
① 価値の棚卸しをすること
② 商品化すること
③ 値付けすること
④ 提案・営業をすること
⑤ チーム・仕組みをつくること
授業では、時間の都合で②③④⑤はバッサリ省略。小野さんが一番重要だと考える、①を中心にお話いただきました。
■ 「価値を棚卸し」ってなんだ?
「価値を棚卸しする」という言葉は抽象的で、すぐ理解できなかったのですが、どうやら「自分たちが日々やっている活動はどんな価値があるか、きちんと明らかにしておくこと」のようです。
グリーンズの場合、取材や記事制作は、取材先や読者との人間関係という資産をつくっていく活動だと言えます。グリーンドリンクスは、場作りの技術や、その場で出会った人同士が共同してこぎ進められる舟をつくる企画力を示すもの。また、活動している人たちとアクションプランをいっしょに考えていく作業は、限られた資源と経験からコンサルするノウハウにもなります、こんなふうに、自分たちが続けている活動から、外部の人に説明できる価値をパッケージに切り分けておくわけです。
ここで小野さんは、“業”という言葉を意識するよう強調しました。「すでにある“なんとか業”という言葉で言えない仕事では難しいんです。もちろん、新しい仕事を立ち上げることも不可能じゃないけど、すでに“業”として定義され、誰かがお金を払っている、需要と供給が存在しているものの方が、ずっと難易度が低いんですね」。
なるほど。僕は活動家ではないので想像ですが、「こうなって欲しい!」という気持ちから始まった活動なら、きっと何かしら新しい観点や手法があるはずで、その需要を高めることについ注力しそうな気がします。でも、そうじゃなく、ありのままの社会に無理なく入り込んでいくこと。それが、定義された“業”への意識ということかなと思いました。
説明の後、スライドにばーんと出たのは、「”業”×大切にしたいテーマ」の文字。需要供給の存在する”業”の世界に、自分が大切にしたいテーマをうまく掛け合わせたカタチをつくっていく。これが、小野さん流の、価値の棚おろしだということでした。そのほか、「課題の“解決”は、課題の“省略”でいいことも」など、興味津々ワードが次々と放出されましたが、時間切れです。
■ いろいろな質問も
質疑応答では、するどい質問によって、小野さんの個人的な思いも垣間見えました。その一部を紹介します。
Q 「(企業にアプローチしていく上で実績を示せない)最初の1年はどうやってアプローチしたのですか?」
A 「無数の、案件にならないかもしれない企画を作るしかありませんでした。ある程度の精度で受注できるようになったといえるのは最近のこと。自分はこういう世界の専門家と言えるレベルではなかったし、最初は分からないことだらけだった。けれど、もし分かっていたら、できないと結論づけてチャレンジしなかったかもしれません」
Q 「仕事において、小野さん自身の最終目標はどんなところにあるのでしょうか?」
A 「あー……すみません、答えを持ってないです。やっていったことの結果というか。ぼんやりとは、誰も見たことのない何かがってことはあるのかもしれないけれど。どちらかというと、自分が50歳くらいになって、やっと、あぁ自分はこれを見たかったんだとわかるような。いまは、夢というより、日々のアクションの積み重ねを、という感じです」
自分のやりたいこととお金を結びつける話題がちょっと苦手、僕自身をふくめ、そういう人っていると思いますが、小野さんの説明、それから自然体でゆったりと落ちついた物腰など、さまざまな示唆とヒントをたくさんいただいた授業でした。ありがとうございます。
(ボランティアスタッフ: 松本 浄)