シブヤ大学

授業レポート

2013/4/23 UP

人々の心を彩る、手段としてのストリートアート

「皆さんはストリートアートに、どんなイメージを持っていますか?」

これは、セッションの最初にTitifreak(チチフリーク)さんから投げかけられた問いです。

先生であるチチさんはとても気さくな方で、通訳の方を通して参加者とのセッションをメインに授業が進められました。下記は話された内容をテーマ毎にまとめたものです。あなたにとって、社会にとってアートとは?を考えながらお読み頂ければ幸いです。


■チチさんにとってのストリートアート

一般的なおもちゃがなかったので、物心ついた時からえんぴつで壁に落書きをしていた。

両親がその絵に才能を感じ、マウリッシュソーザさんという漫画家に連絡をしたところ、スタジオ入りできた。13歳の時からプロフェッショナルとして道を歩み始めた。

ストリートアートに惹かれたのは、かしこまって、お金を払わないと見られないものではなく、街中に自然とあって日常にアートを感じられるから。

グラフィックアートには2面性がある。街を汚すもの、いわゆるらくがき的なネガティブなとらえられ方、もうひとつはアートとしてのポジティブなとらえられ方。

自身はストリートアートをポジティブなものとして多くの人に伝えていきたい。


■ブラジルにおける教育としての仕組み

ブラジルのアートの育ち方というものにも特色が在る。サンパウロに行けばそこかしこにストリートアートがある。

合法的に絵を描いても良い壁というものがあり、認められれば海外のギャラリーやミュージアムへひろがっていく可能性もある。

システム的な部分が日本とは根本的に違っている。広い国土や行政、企業との連携で国が回っているイメージ。

ブラジルでは義務教育があるものの、満足な教育を受けられない。義務教育以外の時間にグラフィックアートを教える事が少年犯罪やドラッグを予防するのにつながると考えている。


■震災とアート、石巻での活動

おばあさんが日本人だったこともあり3.11の後、自分にできることはないか模索していた。

心の中でグラフィックアートで何かしなければならないという義務感で石巻へ行った。色の無い世界に色をつけることをしたいと思った。

仮設住宅に絵を描き始め、2日目ぐらいから何を描いているのかな?と、話題になりはじめた。

目印がなかった街において、ここは郵便局、ここは病院、というように、看板や地図の役割を表すようにもなった。

市が仮設住宅を撤去しようとしたが、住民の方々が残すようにしてくれた。

ステンシルを使ったワークショップでは、おばあさんが作品を家にかざってくれた。苦悩の中、いかに前向きに生きていこうか考えるきっかけになってくれたら嬉しい。

このプロジェクトは2回行われ、2回目は子どもが多いという事から色を多く用いた。また是非訪問したいと思っている。


■作品を描くときのアイディア、インスピレーション

石巻では、楽しさや明るさを根底におき、住んでいる方々との話し合いを膨らませて、花、雲、魚を描いた。

場所を選ぶときは、そこに呼ばれる、といった感じ。壁、場所にあわせたものを描くように、その建物や人々がどういったように融合していくのか考える。

描いてるプロセスもアートだと思っている。たとえば、いくつかの壁に描くときはバランスをみながら描いたり。


■アートにできることとは?

人の心にストレートに届き、考え方、感覚を変えることができると思う。
また、自身は絵を描く事を行政、地域のために使っていこうという気付きが産まれた。世の中に貢献していく方法を手に入れる事ができた。

授業の終わりには、一人一人にステッカーをプレゼントしてくれたチチさん。参加者とともにディナーも楽しみました。




授業の後、私は改めて3.11の事を思い出していました。どんな言葉を選んだらいいかわからない時、震災以外のことを話題にできるのは救いであるし、あたりまえの色を取り戻していく過程はそれだけで尊いものだと感じました。

震災、貧困、犯罪…様々な絶望的な状態であっても、アートは美しく映えて、人々の心を明るく照らすのではないか、そんな風に感じられた授業でした。


(ボランティアスタッフ:花輪むつ美)