授業レポート
2010/6/30 UP
香りも味も引き立つワインとグラスの粋なマリアージュ
「マリアージュ」とは、フランス語で「結婚」の意味。
互いの良さを引き出すということから、
ワインと料理、ワインとチーズのマリアージュとしてもよく使われている言葉ですが、
今回はワインとグラスのよりよい関係を見つけるという授業。
会場となった恵比寿ガーデンプレイスのサッポロビール社屋に、33人が集まりました。
講師は、ワインコラムニスト、近世史研究家の髙山宗東さんと、
ワイングラスを専門に扱うリーデル社で、
日本人初の「シニア・ワイングラス・エデュケーター」として活躍する庄司大輔さん。
授業の前半はワインテイスティング、
後半は「『甲州』にふさわしいグラスを探そう」というテーマでワークショップが行われました。
●第一部 ワインテイスティング(ソーヴィニヨン・ブランとシャルドネ)
グラスによって変わる香り、味を確かめるために、ここでは4種類のグラスを使いました。
(*はリーデル社選定基準)
1 ふくらみのない厚手の足つきグラス
2 ゆるやかなふくらみのある足なしグラス(*サンジョベーゼ用)
3 大きなふくらみのある足なしグラス(*よく熟成されたシャルドネ用)
4 ゆるやかなふくらみのある縦長足つきグラス(*ソーヴィニヨン・ブラン用)
ワインテイスティングの前に、まずはペットボトルのお茶でテイスティング。
ペットボトルのお茶をじかに飲むと、香りを感じにくいのですが、
1のグラスに注ぐと、香りも味も広がり、同じお茶でも違ってきます。
2のグラスに移してみると、さらに香りが際立ち、グラスの繊細さと相まって、
ほんのりと甘みが感じられる飲み物に。
グラスによっていかに香りも味も違ってくるかということが、これでよく分かりました。
さて、いよいよワインテイスティング。
4のグラスに注がれたのはチリのワイナリー、サンタ・リタのソーヴィニヨン・ブラン。
ハーブのような香りを楽しみながら、グラスを口にあててみると、
舌の先から喉にすーっと染み渡っていく酸味がさわやかで夏にぴったりです。
今度はそれを1のグラスに移して飲んでみると、
飲み口が広がりグラスにカーブもない分だけ、味は舌の横に広がっていきます。
こうなると、なんだかさわやかさというより、少しえぐみが出てきてしまいます。
その味の違いについて、庄司さんは、
「私たちはグラスを傾ける時、縦長のグラスなら、上を向いて顎をぐっと上げないと飲めないわけで、
すーっと舌の先端から喉の奥まで縦に流れていくことで、さわやかさを感じられるのです」
というメカニズムを実際グラスの角度を変えながら、教えてくれました。
なるほど、横に広がってしまわない味わいを楽しむために、
リーデル社では1500人のアンケートから、このグラスとソーヴィニヨン・ブランの相性が最適だとしたのです。
では、カリフォルニアのよく熟成されたシャルドネの場合は、というと3のグラスが選ばれています。
大きなふくらみがあって、片手では飲みにくいほど。
抹茶茶碗のように両手を添えて飲んでもよさそうです。
口に含むと、舌の横いっぱいに広がり、トロピカルな香り、クリーミーさが感じられます。
それを4のグラスに移して飲んでみると、今度は何か物足りない。
ソーヴィニヨン・ブランと逆になり、このグラスだとリッチな味わいが消えてしまうようです。
このように、美味しいワインが「より美味しくなる」か、そこそこで終わってしまうかは、
グラスの力がとても大きいということが、飲み比べによって、はっきりと体感できました。
●第2部 ワークショップ「『甲州』にふさわしいグラスを探そう」
まだグラスが決まっていない山梨産の「甲州」に合うグラスを見つけようと、
6つのグループごとにワークショップを行いました。
「甲州」について、髙山さんは「おそらく、仏教などと一緒に大陸から伝来した葡萄が、
平安時代ごろ甲斐に定着して、その後、甲州という品種がかたちづくられたと考えられます。
ワインとしての個性を出すのが難しい品種とされていましたが、
昼夜の寒暖差を生かして糖分と酸のバランスをとり、
醸造技術を向上させるなどの方法で造り手たちが表現力を磨いた結果、
ここ10年ほどで驚くほど躍進しました」と、解説。国産ワインへの注目度は、今後さらに高まりそうです。
ワークショップとして、テーブルに置かれたグラスは5種類
1 ゆるやかなふくらみのある足なしグラス(*サンジョベーゼ用)
2 大きなふくらみのある足なしグラス(*よく熟成されたシャルドネ用)
3 ゆるやかなふくらみのある縦長足つきグラス(*ソーヴィニヨン・ブラン用)
4 小ぶりで縦長、先が少し開いている足つきグラス(*コニャック用)
5 大きなふくらみのある足つきグラス(*ピノ・ノワール用)
各テーブルの6人ずつが、5つのグラスに注がれた「甲州」の飲み比べをし、
模造紙にどんどん感想を書きこんでいきます。
にぎやかな試飲会となり、最後にはそれぞれの研究成果を発表しました。
1や3はすっきり、あっさり、クセがない、2は酸味が強く出る、海っぽい、
4はかたい感じで、とんがっている、5は豊かに広がる、香りが強く出るなどなど。
中には、4はワンピースを着た10代の少女、ピンポンダッシュをする男の子、
5はちょい悪おやじなどというユニークな表現もあって、会場は大盛り上がり。
髙山さん、庄司さんは、
「実にさまざまな意見が出て、私たちも勉強になりました」
と感想を述べ、
「ワインは五感で楽しむもの」
ということも改めて強調していました。
「甲州」に合うグラスについては、まだまだ正解はありませんが、
マリアージュの奥深さが感じられた楽しいひととき。
参加者同士もすっかり意気投合し、「次もぜひこのような企画を!」と話しながら、
みなさん、心地よいほろ酔い気分で、会場を後にしました。
(ボランティアスタッフ 大野多恵子)
互いの良さを引き出すということから、
ワインと料理、ワインとチーズのマリアージュとしてもよく使われている言葉ですが、
今回はワインとグラスのよりよい関係を見つけるという授業。
会場となった恵比寿ガーデンプレイスのサッポロビール社屋に、33人が集まりました。
講師は、ワインコラムニスト、近世史研究家の髙山宗東さんと、
ワイングラスを専門に扱うリーデル社で、
日本人初の「シニア・ワイングラス・エデュケーター」として活躍する庄司大輔さん。
授業の前半はワインテイスティング、
後半は「『甲州』にふさわしいグラスを探そう」というテーマでワークショップが行われました。
●第一部 ワインテイスティング(ソーヴィニヨン・ブランとシャルドネ)
グラスによって変わる香り、味を確かめるために、ここでは4種類のグラスを使いました。
(*はリーデル社選定基準)
1 ふくらみのない厚手の足つきグラス
2 ゆるやかなふくらみのある足なしグラス(*サンジョベーゼ用)
3 大きなふくらみのある足なしグラス(*よく熟成されたシャルドネ用)
4 ゆるやかなふくらみのある縦長足つきグラス(*ソーヴィニヨン・ブラン用)
ワインテイスティングの前に、まずはペットボトルのお茶でテイスティング。
ペットボトルのお茶をじかに飲むと、香りを感じにくいのですが、
1のグラスに注ぐと、香りも味も広がり、同じお茶でも違ってきます。
2のグラスに移してみると、さらに香りが際立ち、グラスの繊細さと相まって、
ほんのりと甘みが感じられる飲み物に。
グラスによっていかに香りも味も違ってくるかということが、これでよく分かりました。
さて、いよいよワインテイスティング。
4のグラスに注がれたのはチリのワイナリー、サンタ・リタのソーヴィニヨン・ブラン。
ハーブのような香りを楽しみながら、グラスを口にあててみると、
舌の先から喉にすーっと染み渡っていく酸味がさわやかで夏にぴったりです。
今度はそれを1のグラスに移して飲んでみると、
飲み口が広がりグラスにカーブもない分だけ、味は舌の横に広がっていきます。
こうなると、なんだかさわやかさというより、少しえぐみが出てきてしまいます。
その味の違いについて、庄司さんは、
「私たちはグラスを傾ける時、縦長のグラスなら、上を向いて顎をぐっと上げないと飲めないわけで、
すーっと舌の先端から喉の奥まで縦に流れていくことで、さわやかさを感じられるのです」
というメカニズムを実際グラスの角度を変えながら、教えてくれました。
なるほど、横に広がってしまわない味わいを楽しむために、
リーデル社では1500人のアンケートから、このグラスとソーヴィニヨン・ブランの相性が最適だとしたのです。
では、カリフォルニアのよく熟成されたシャルドネの場合は、というと3のグラスが選ばれています。
大きなふくらみがあって、片手では飲みにくいほど。
抹茶茶碗のように両手を添えて飲んでもよさそうです。
口に含むと、舌の横いっぱいに広がり、トロピカルな香り、クリーミーさが感じられます。
それを4のグラスに移して飲んでみると、今度は何か物足りない。
ソーヴィニヨン・ブランと逆になり、このグラスだとリッチな味わいが消えてしまうようです。
このように、美味しいワインが「より美味しくなる」か、そこそこで終わってしまうかは、
グラスの力がとても大きいということが、飲み比べによって、はっきりと体感できました。
●第2部 ワークショップ「『甲州』にふさわしいグラスを探そう」
まだグラスが決まっていない山梨産の「甲州」に合うグラスを見つけようと、
6つのグループごとにワークショップを行いました。
「甲州」について、髙山さんは「おそらく、仏教などと一緒に大陸から伝来した葡萄が、
平安時代ごろ甲斐に定着して、その後、甲州という品種がかたちづくられたと考えられます。
ワインとしての個性を出すのが難しい品種とされていましたが、
昼夜の寒暖差を生かして糖分と酸のバランスをとり、
醸造技術を向上させるなどの方法で造り手たちが表現力を磨いた結果、
ここ10年ほどで驚くほど躍進しました」と、解説。国産ワインへの注目度は、今後さらに高まりそうです。
ワークショップとして、テーブルに置かれたグラスは5種類
1 ゆるやかなふくらみのある足なしグラス(*サンジョベーゼ用)
2 大きなふくらみのある足なしグラス(*よく熟成されたシャルドネ用)
3 ゆるやかなふくらみのある縦長足つきグラス(*ソーヴィニヨン・ブラン用)
4 小ぶりで縦長、先が少し開いている足つきグラス(*コニャック用)
5 大きなふくらみのある足つきグラス(*ピノ・ノワール用)
各テーブルの6人ずつが、5つのグラスに注がれた「甲州」の飲み比べをし、
模造紙にどんどん感想を書きこんでいきます。
にぎやかな試飲会となり、最後にはそれぞれの研究成果を発表しました。
1や3はすっきり、あっさり、クセがない、2は酸味が強く出る、海っぽい、
4はかたい感じで、とんがっている、5は豊かに広がる、香りが強く出るなどなど。
中には、4はワンピースを着た10代の少女、ピンポンダッシュをする男の子、
5はちょい悪おやじなどというユニークな表現もあって、会場は大盛り上がり。
髙山さん、庄司さんは、
「実にさまざまな意見が出て、私たちも勉強になりました」
と感想を述べ、
「ワインは五感で楽しむもの」
ということも改めて強調していました。
「甲州」に合うグラスについては、まだまだ正解はありませんが、
マリアージュの奥深さが感じられた楽しいひととき。
参加者同士もすっかり意気投合し、「次もぜひこのような企画を!」と話しながら、
みなさん、心地よいほろ酔い気分で、会場を後にしました。
(ボランティアスタッフ 大野多恵子)