シブヤ大学

授業レポート

2009/10/5 UP

Think恵比寿!~恵比寿について、100人でおしゃべりしよう~

【100人で話すって、どうやって?】
シブヤ大学恵比寿キャンパス文化祭の一環として行われた「Think恵比寿!」の授業のテーマは、「恵比寿について、100人でおしゃべりしよう」。

100人で話すってどうやって? そもそも、知らない人同士が100人集まって、3時間近くも話が続くのだろうか?
などなど、当日参加した人たちのなかには、若干の疑問や不安をもっていた人もいたのでは? でも、それと同じくらい新しい出会いへの期待をもっている人もいたはずで、そんなみんなと期待と不安が混じり合いながら、「Think恵比寿!」はスタートしました。

【こんな人たちが集まりました】
恵比寿に住んでいる人、恵比寿で働いている人、恵比寿で遊んでいる人、この3つに当てはまる人がほぼ同じくらいの割合で来ていたようです。年代的には、20代、30代がいちばん多く、最年長は恵比寿在住の80代(!)の女性でした。

【おしゃべりスタート】
この授業には、初対面の人々でも気軽にお話ができるような雰囲気をつくる工夫がたくさんありました。

そのひとつが、最初に行ったじゃんけんや2人ひと組になってのインタビュー。また、お菓子をつまみながらの気軽な雰囲気のおしゃべりなので、堅苦しさは一切ナシ!お互いに、ほどよくこなれた雰囲気になってきたところで、いよいよ本番です。

おしゃべりタイムは、このような流れで行われました。
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・まず4人がひとつのテーブルにつき、進行役の兎洞さんから与えられたテーマについておしゃべり。
      ↓
・テーブルの真ん中には模造紙が置かれ、メンバーはイラストやキーワードなどを自由に書き込みます。
      ↓
・ここで、メンバーチェンジ。ひとりだけそのままテーブルに残り、その他の3人は自由に他のテーブルに移動します。
      ↓
・メンバー入れ替えが終わったら、テーブルに残った人は新しいメンバーに自分たちのテーブルで出た意見を紹介。新しいメンバーたちも各自の前のテーブルで話し合われたことを紹介し合います。
      ↓
・さらに、新しいテーマが与えられ、同じテーブルのメンバーと話しあいます。このようなテーブルチェンジをもう2回繰り返して、おしゃべりタイムはひとまず終了。
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これで、ひとりの人が実際に話をしたのは合計で9人となりますが、みんなが前のテーブルから持ち寄った話を総合すると、なんとなく100人全員でおしゃべりをしたような感覚になってくる、というわけです。

さらにこのおしゃべりタイムの最後には、全員で輪になって行う「振り返り」の時間や、まだ話ができていない人や話足りないと思う人に声を掛けられる「フリータイム」まであり、「おしゃべり」から一歩進んで、各自が新しい発見や出会いを得られるよう考えられたプログラムになっていました。

進行役の兎洞さんから与えられたテーマは、恵比寿での「思い出」「その魅力」「未来について」の3つ。この流れの中で、私が実際に触れられたお話の内容を、いくつかまとめてご紹介します。

・オシャレなレストランが多くあるのに、下町的な雰囲気も残っている。でも、もっと古くからあるお店や商店街が活気づいてほしい。
・他の沿線都市に比べると住んでいる人は多いが、子どもたちの遊び場が少ない。
・大資本がつくる商業ビルではなく、個人商店や隠れ家的な店が多くあるのが良い。
・古くから恵比寿を知る人によると、恵比寿ガーデンプレイスができて街が変わっていった。
・古い住人と新しい住人の交流の場が少ない。

などなど。他のテーブルではもっと違う意見もあったかもしれませんが、私が参加したテーブルでは、だいたいこんな感じでした。総じて感じたのは、みんな「今の恵比寿が好き」ということ。その上で、もっと良くなっていけばよいなと考えている、ということでした。

恵比寿の街に関わりが深い人でも、ここまで正面を切って街について考える機会はなかなかないのではないでしょうか?
かく言う私自身も恵比寿で働いて3年になりますが、改めて「恵比寿って?」と問われるとどう答えてよいのか戸惑ってしまいました。しかし、みんなと雑談しながら、自分の考えをまとめることができました。また、誰かの発言から、新しい方向に話が発展したり、新たな気づきがあったり。始めは各自が好きなことを自由に話していただけなのに、対話を続けていくうちにそれぞれの思いがゆるやかに繋がっていき、最後にはぼんやりとみんなの恵比寿に対するイメージや、恵比寿に対して求めていることが浮かび上がってきました。

おしゃべりし尽した人も、まだまだしゃべり足りなそうな人も、それぞれの手ごたえを得られたあたりで、おしゃべりタイムは終了し、ひとまず休憩。休憩スペースには、恵比寿の街の歴史を辿る写真や、今回参加された方のご家族が描いた街の風景の絵画の展示もあり、みなさん興味深げに見ていました。

【恵比寿の歴史紹介&ビールで乾杯】
休憩後には、元・恵比寿麦酒記念館6代目館長の端田晶さんが登場。恵比寿の街の歴史をお話してくださいました。
実は恵比寿という街の名前は、サッポロビールの前身のひとつであるビール会社がこの地でつくった『ヱビスビール』が由来。そして、ビールの搬入・搬出のために作られた駅が、現在の恵比寿駅になったのだそうです。
なるほど、恵比寿とビールには切っても切れない深いつながりがあるのですね。

というプチ・エピソードを聞かせていただいたところで、いよいよビールで乾杯!
とその前に、端田さんからおいしいビールの注ぎ方のレクチャーが。
ビールのおいしさのカギは豊かな泡にあるそうで、早速、各自で教えていただいたビールと泡を7:3にする注ぎ方を実践。街の名前の由来でもあるという、かのエビスビールで、みんなでのどをうるおしました。

【みんなの感想】
授業が終わったあとも、ビール片手におしゃべりを続ける人が多数。早速このあと飲みに行くグループや、次に集まる約束をしている人たちもいる様子。何人かに感想を聞いてみました。
「この場所で友だちができると思わなかったけど、気が合う飲み友だちができた!」という30代の女性や、最年長の80代の女性からは「古い恵比寿のことなんて、みんな興味がないとかと思っていたけど、若い人たちに聞いてもらえてよかった」という感想も。
他にも、「住んでいる人と遊びに来る人の視点の違いがおもしろかった。恵比寿は好きな街だから、これからどう変わっていくか楽しみ」「恵比寿に住んで2年だが、今まであまり街のことを知らなかったので、いろいろな人の話を聞けておもしろかった。古い下町的なものと新しいオシャレなものが混在しているので、新旧の交流の場をつくることができれば面白いと思う」などなど。

最初は不安そうな表情を浮かべていた人たちも、最後にはニコニコしながらみんなとおしゃべりしていたのが印象的でした。

立場や年代が異なる人たちが集まって話し合う。そんな機会ってなかなかないですよね。
これからもいろいろな場所で、小さな「Think恵比寿!」が開かれるといいなと思います。そこから新たな人と人のつながり生まれれば、恵比寿はもっとすてきな街になるのではないでしょうか。

(ボランティアスタッフ:武政美麻)