シブヤ大学

授業レポート

2026/3/11 UP

「問い」と「解」について考える
~なぜパズルにハマるのでしょう?~

本授業は、パズル専門誌を出版する株式会社ニコリの代表取締役である安福 良直氏を講師にお迎えし、数独やクロスワード、漢字合わせ札、推理パズルといったパズルを題材に、解き方を学ぶだけでなく、実際にパズルを作る体験も行う内容でした。

授業全体の構成と概要
授業は大きく二部構成で、前半は用意されたパズルのルールや解き方などを学ぶ講義形式の授業、後半は参加者自身がパズルを作るワークショップでした。この授業を通して、単にパズルの解き方を学ぶだけでなく、「作る」という体験を通して、パズルを多角的に捉える学びの機会になったと感じました。


前半:パズルの解き方と背景について
前半の講義では、数独、推理パズル、「四角に切れ」という論理パズルを中心に、ルールや基本的な解き方について解説がありました。この講義では、単なる解法の説明にとどまらず、それぞれのパズルにまつわる歴史やエピソードも紹介されました。

ここでは、これらのエピソードの中で、私が特に印象に残ったものを例として挙げます。

まず数独については、もともとアメリカで開発された「ナンバープレイス(ナンプレ)」をもとに、1980年代にニコリの当時の代表であった鍜治真起氏によって、「数字は独身に限る」という名称で日本に紹介されたことが説明されました。この「数字は独身に限る」が略されて「数独」となり、日本国内で広まりました。さらに、この「数独」がイギリスの新聞に取り上げられ、「Sudoku」という名称で世界的に広まっていったという経緯が紹介されました。世界的に知られている「数独=Sudoku」の歴史に触れる機会となり、非常に興味深く感じました。
また、日本における数独文化の特徴についても紹介がありました。数独の読者の中には、問題を解くだけでなく、問題を作る「作家」が存在し、作品を投稿し合いながら評価し合う文化があるという説明がありました。このことから、パズルは単なる個人の趣味にとどまらず、人と人とをつなぐコミュニケーションの一形態としても発展している点が、非常に興味深いと感じました。

さらに、数独や「四角に切れ」といった論理パズルは、近年では小学校の算数教育などにも活用され始めているという話もありました。「四角に切れ」は、指定された面積を持つ四角形で方眼を埋めていくパズルですが、面積を考える際に九九を自然に使う必要があります。この説明から、「四角に切れ」は、九九、すなわち掛け算と図形の関係を理解するうえで、非常に分かりやすい教材であると感じました。このように、パズルが趣味の領域にとどまらず、教育の場でも活用されている点から、パズルの持つ可能性の広さを改めて実感しました。


後半:パズルづくりのワークショップを通して
後半は、パズルづくりのワークショップが行われました。参加者は、それぞれ作ってみたいパズルを一つ選び、講師の安福さんからアドバイスを受けながら、実際にパズルを作成しました。

パズルを「解く」場合は、与えられたルールとヒントをもとに正解を導き出しますが、「作る」場合は、まずどのような解を設定するのかを考え、その解にたどり着くためのヒントを逆算して設計する必要があります。このヒントの設計が特に難しく、作り手の工夫や試行錯誤を強く実感しました。当然ではありますが、「解く」よりも「作る」という行為の難しさを、このワークショップを通して実感しました。

このワークショップで、私は「四角に切れ」の設計に取り組みました。当初は、適当なサイズの方眼に、そのマス目を埋めるように長方形や正方形を配置し、数字を適度に配置すればよいと考えていました。しかし安福さんからは、まずどこに数字を配置するかを決め、それに合わせて四角形を配置していくという、ヒント設計の考え方を教えていただきました。

実際には、ヒントを配置する場所を決めたとしても、解が成立する四角形の配置を考えることは難しく、問題として完成させるまでに何度も修正を重ねました。ただ、このような紆余曲折を通してパズルを完成させたからこそ、実際に問題が完成したときの達成感は大きく、私にとって非常に印象に残る体験となりました。このワークショップを通して、パズルを見る視点が変わり、以前よりも深く興味を持つようになったと感じています。


パズルとコミュニケーションについての考察
授業の最後に、安福さんから「パズルは何を表現したいかが重要である」という言葉がありました。ワークショップ後の振り返りでも、多くの参加者が、自分の作ったパズルにどのような意図やストーリーを込めたのかを語っていました。私自身もこのやり取りを通して、パズルは単なる問題ではなく、作り手の考えや思いを伝える表現手段であると、改めて感じました。

この点は、前半で紹介された数独の文化、すなわち読者と作家のコミュニケーションを通して発展してきたという話とも重なります。私個人の印象として、パズルは一人で黙々と楽しむものというイメージがありましたが、実際には人と人とをつなぐコミュニケーションツールの一つとしての側面も持っているのだと感じました。



まとめ
最後に、この授業では、授業開始前に事前配布されたパズルに取り組むことができ、参加者の皆さんが授業開始前から黙々とパズルに集中している様子が印象的でした。私自身も、気づくと時間を忘れてパズルに向き合っていました。

今回の授業を通して、パズルは単なる娯楽ではなく、学びや表現、そしてコミュニケーションの手段にもなり得るものであると、私なりに理解を深めることができました。個人的には、今後パズルに触れる際には、「解く」だけでなく「作る」という視点も意識して楽しんでいきたいと感じています。

(レポート:山口圭治、写真:宮島洋人)