シブヤ大学

授業レポート

2026/1/9 UP

劇場の裏側をのぞいてみよう!
~恵比寿・エコー劇場バックステージツアー~

テアトル・エコーで『子どもとその付き添いのためのミュージカル 11ぴきのネコ』エコー版(井上ひさし:作)を上演中とのこと、そしてシブヤ大学でその「劇場の裏側をのぞいてみよう」を授業で取り上げると聞いて、私はミュージカルを早速観てきました。
これまでもシブヤ大学では恵比寿にあるテアトル・エコーの役者さんたちに先生になってもらい演劇系の授業をお願いしてきました。毎回楽しく、エキサイティングでした。でも、私はテアトル・エコーと井上ひさしさんがそんなに強い関係にあったことを知りませんでした。
馬場のぼるさんの絵本はだれでも読んだことのある名作。これを井上ひさしさんが戯曲にして作ったのがエコー版だそうで、絵本がこんなに愉快なミュージカルになっていたとは。なんと初演は54年前だったということですが、井上ひさしさんならではのユーモアたっぷりの言葉遊び、役者さんの躍動感ある踊りと歌、そして楽器演奏。小劇場でのミュージカルの楽しさを満喫しました。


さて、講師は、今回の演出補佐を務めた女優で声優の雨蘭咲木子(うらんさきこ)さんと演出家青柳敦子さんのお二人です。作品のこと、舞台の構造、舞台美術のこと、そして裏話などを聞きました。



テアトル・エコーは設立75周年、昭和45年に恵比寿に移転し、平成4年には現在の5階建てのエコービルができあがったそうです。声優が多く在籍している劇団です。当時は「ひょっこりひょうたん島」で有名な熊倉一雄さんが演出を行ったそうです。今回はエコー版をほぼそのまま50年ぶりに使ったとのこと。当時は男性だけが出演者でしたが、今回は男女が混じって演技しています。
時代背景の影響でこの作品も「決定版」に作りかえられましたが、その時代が逆戻りしているのか、50年前のエコー版の内容で違和感はありません。

次に舞台のことを教えてもらいました。
裏舞台、側舞台、緞帳、平幕、中割、大黒幕、ホリゾント。大劇場と小劇場の対比で教えてもらったのですが、小劇場にはないものもあって場面転換が多い演劇では、その分苦労も多いようです。
「ホリゾントは壊れやすいので決して触れてはいけない。」というのが劇団の先輩から受け継がれた教えだそうで、劇団員は「自分が骨折をしてでもホリゾントには触れない」ようにしているそうです。
このミュージカルで大切な道具として「魚」があります。大中小の魚を用意していて、これを狭い袖舞台に格納しておくのが大変です。その脇から役者さんが出入りするのはまた大変です。

大きな道具は5階にある稽古場でみんなで作ります。ようやく大きな魚が完成したときにはみんな大喜びしたそうです。ところが、今度は作ったものを運び出そうとすると、大き過ぎてドアから外にだせません。仕方ないので分解して窓からつるして舞台まで移動したという小劇場ならではの苦労があったそうです。

舞台装置をどのように作るのか?舞台美術家は舞台のミニチュア模型を作ります。それを見ながら関係者で議論して決めていくそうです。今回はその舞台のミニチュア模型(50分の1縮尺)を受講生ひとりひとりのぞかせてもらいました。腰をかがめてのぞき込むと、第一幕のゴミ山の舞台の様子がよくわかります。

11ぴきのネコたちの衣装はどうやって作るのか?衣装さんの描いたデザイン画に合わせて作るそうです。
古着のデニムをジョキジョキ切り取って、ぼろい服に見えるよう重ねて張り合わせて作っていきます。ただ、問題はデニムは水分を吸いやすいということです。演技中に汗をかくととても重くなってしまいます。汗っかきの人の衣装は1日2回公演の時にはたまりません。1回目が終わると洗濯機に入れ、すぐにフトン乾燥機やドライヤー、アイロンを駆使して2回目に間に合うように乾燥させるので大騒ぎです。

「あんさんぶるニェコー」のみなさんの舞台転換と音楽演奏はお芝居の合間の大切なポイントになっています。音楽演奏で使うクラリネット、バイオリン、エレキベースは劇団員の個人の所有物だそうです。たまたま家にあったものを「ちょっと持ってきてよ。」と言われ、ほとんど弾けなかったにもかかわらず、無理やり「ちょっと弾いてみてよ。」と言われ、気が付いてみれば本番で弾くことになってしまったそうです。自前で何とかする小劇団ならではのエピソードです。



恵比寿社会教育館での授業を終え、恵比寿・エコー劇場へ移動です。お洒落なイメージのある恵比寿とは少し違った風情のコースをまち歩きをしながら向かいました。時間がなく、早足になってしまいましたが、恵比寿の違った側面も見ていただけたのではないでしょうか?私があれっと思ったのは、タコのマークの商店会、それからタコ公園(俗称)があり、なんでタコなのかなあということでした。

恵比寿・エコー劇場に到着しました。ちょうど1回目の公演が終わったばかりで観客が次々にでてきていました。
この後、劇場内に入れてもらい、バックステージツアーです。舞台の上に乗せていただき、恵比寿社会教育館で教えてもらったことを実際に確かめることができました。舞台下をのぞきこんだり、さわっちゃいけないホリゾントや黒幕、袖幕などを確認できました。上を見上げて照明類がどうなっているかを見ることもできました。舞台は思ったよりも広く感じましたが、袖が狭いために苦労も多いことがわかりました。
また、「あんさんぶるニェコー」の人たちが一部残って、クラリネットの話、バイオリンの話、打楽器は稽古場のゴミ箱をみんなたたいて一番響きのよいゴミ箱を楽器として使っているなんて話も聞きました。



その後、夜の部のための舞台の仕込み直しを少し見学してから授業を終えました。
お忙しい仕込み直しの時間にご対応いただきました劇場の皆様どうもありがとうございました。
劇団員が舞台装置、舞台衣装をみんなで手作りし、音楽も自前で演奏していることをお聞きして、小さい劇場ならではのご苦労もありつつ、だからあんなに温かい躍動感あふれる舞台を作ることができるんだなあと感心しました。みんなで一体になって作り上げることっていいなあと、うらやましく思いました。

ある受講者の方が特に印象に残ったのは、「結局こういうふうに人との生の交流のために、演劇をやっているんだ。」という講師の青柳さんの言葉だったそうです。素敵ですね。

(レポート:江藤俊哉、写真:山口圭治、竹田憲一)