シブヤ大学

授業レポート

2025/12/12 UP

地域でつくる”遊び場”を知ろう!
〜大人のためのプレーパーク体験〜

今回の授業は「地域でつくる“遊び場”を知ろう!〜大人のためのプレーパーク体験〜」。
先生は、一般社団法人渋谷の遊び場を考える会から、代表理事の入江洋子さん、えびすどろんこ山プレーパーク担当理事の野澤陽子さん、プレーリーダーのりょーまさんをお迎えしました。

メインの教室である、渋谷区立恵比寿南一公園に移る前に、まずは座学でプレーパークを知ることから授業が始まりました。



【プレーパークを知る時間】

まずは、代表理事の入江さんから、プレーパークの歴史についてご紹介いただきました。

◆プレーパークの始まりは?
プレーパークの起源は、1940年代にデンマークのコペンハーゲンで始まった「廃材遊び場」にあるそうです。きれいに整備されたところではなく、「廃材置き場」という、むしろ整備されていないところで子どもたちが生き生きと過ごしている姿が見られることから、ヨーロッパ全土に広まっていきました。

日本では、これに感銘をうけた大村虔一・璋子夫妻が、自身が在住する世田谷区にアプローチをして、1975年に住民のボランティアによる「経堂こども天国」を夏休みに開設したのが始まりだそう。1979年には、世田谷区の国際児童年記念事業として、行政と住民の協働による日本初の常設プレーパーク「羽根木プレーパーク」が開設されました。その後、ネットワークが全国に広がり、日本で活動するプレーパーク(日本冒険遊び場づくり協会)の団体数は458団体にもなっているそうです。

◆渋谷区ではどのようにプレーパークが始まった?
一般社団法人渋谷の遊び場を考える会(通称:渋あそ)は、もともと、保育園や幼稚園に預けず、親同士で預け合う自主保育の会というかたちから始まったそう。保育の仕方も、「あれをやる、これをやる」と大人が決めるのではなく、「見守る、例えていうなら公園で“放牧”するように」という表現は参加者の皆さんの笑いを誘いながらも、プレーパークで大切にされている理念を感じ取った印象です。

2003年には地域団体と協力し、子どもの居場所づくり活動の一環として「せせらぎ冒険遊び場」を開園。2004年には、渋谷で初の常設プレーパークとして渋谷区公園課と渋谷の遊び場を考える会との共同事業として「渋谷区はるのおがわプレーパーク」が開園したということです。

今回の授業の舞台となる「えびすどろんこ山プレーパーク」は、2005年に加計塚小学校体育館跡地で「かけづか冒険遊び場」を年4回定期開催するところから始まりました。2007年には恵比寿南一公園に移転して「えびすアメリカ橋プレーパーク」となり、2022年9月に渋谷区2つ目の常設プレーパークとして「えびすどろんこ山プレーパーク」が開設されました。現在、渋谷区、サッポロ不動産開発株式会社、渋あその3者が協働して運営を行なっています。


◆渋あそが大切にしているコンセプト
「自分の責任で自由に遊ぶ」「五感を使って遊ぶ」というコンセプトに加え、「時間・空間・仲間の3つの”間”を自由に使えることの大切さ」や、「子どもの主体性を尊重し大人は干渉しない」という立ち位置など、共感することがとても多いと感じました。
続いて野澤さんからは、えびすどろんこ山プレーパークの特徴や現状の課題についてお話いただきました。

◆えびすどろんこ山プレーパークの特徴と、現状の課題・計画中のコト
・比較的お父さんと子どもと遊びに来る場合が多い。子どもを遊ばせに来たつもりが、お父さんのほうがハマってしまうパターンもよくあること。
・オープンから3年経過するが、手作りの遊具がまだなく、安全性という視点での難しさがある。
・夏の暑さが尋常ではなく、昼間は休園せざるを得ない現状があった。この背景には樹木の老朽化による木の伐採もあり、新たに木を植えられないか、グランドカバー植物を植えられないかなど計画中。
・雨の日でも遊べるように事務所前にひさしの設置を計画中。
・子育て仲間のコミュニティは醸成されてきているが、それ以外の地域の人たち(大人・高齢者、ビジネスパーソン等々、公園を気にかけてくれる人)との関わりをもっと増やしていくことが、まだまだできていない。

コミュニティづくりや施設の改善に向けてまだまだ計画中のことが盛り沢山で、だからこそ地域のみなさんとつくり上げていきたいと考えられており、絶讃ボランティア募集中だそうです!


【プレーパーク体験!】
さて、難しい話は置いといて、体験を楽しみに来たと言っても過言ではない私(たち?)。いよいよ授業のメインである「プレーパーク体験」のために、どろんこ山プレーパークに向かいます。

プレーリーダーのりょーまさんからの簡単な説明のあとは、約1時間の体験時間。自分の中の遊び心を思い出しながらプレーパークを自由に過ごしてみる時間です。
前半授業で予備知識は得ていたものの、実際にその場に来てみるとまた全然違うもの。「さあどうしよう...?」といって立ち止まり、既に遊んでいる人たちの様子を見たりして、どんな遊びができるだろうと考えている大人の姿が何とも言えず「素」な感じでした。

中央にはどろんこ山があり、水道のある水場、コマやけん玉が置いてある場所、ノコギリやトンカチ、釘、木の端材などが置かれている場所、事務所脇には乗り物も。ボール遊びができる場所や竹馬がある場所などなど。
私にとっては、子どものころに親しんだモノばかりでワクワクを隠せませんでしたが、参加者の中には、年代や、子どもの頃の過ごし方が大きく異なってきた方もいるかもしれないので、皆さんがどんな風にこの空間でそれぞれが遊ぶんだろうと想いを巡らすのも楽しい感覚でした。

私がまず挑んだのは、木材の端材2枚を重ねてトンカチで釘を打ち付けること。家の仕事柄、工具や端材がたくさんある家だったので、童心に帰って楽しめました。しばらくしてその場へ向かうと、必死に私が打ちつけた釘を抜いている方がいて笑えました。

その後は、既にどろんこ山の上から掘ってある道筋に水を流して色々試行錯誤していると、反対側ではかなり精巧なダムのようなものをつくっている親子もいたりして、皆楽しみながら体得しているのだなあと感じました。

ここに記した体験は無心に遊んだ私の例ですが、皆さんそれぞれに個性豊かに遊ぶ姿を見ること、それを一緒に過ごしながら感じることは、自分自身の満足感に加え、何か癒される感覚がありました。





【振り返り】
まだまだ遊び足りない!という気持ちを抑え、あっという間に振り返りの時間となりました。

◆体験を通して感じたことをグループでシェア
同じグループの皆さんの気づきをいくつかピックアップしてお伝えします。

・子どもたちは、どろんこ遊びなどの身体を通した体験が、今後もう少し成長してから頭で学習することとのつながりができていくのだと思った。大人になって遊んでみると、知識から入ってから体験するという逆の順番になるのも面白い。子どもを連れてきて大人がハマるケースも多いのも納得した。
・よい感じで放っておかれることの大切さを感じた。
・子ども用のミニバイクは、平地で乗るものだと想像していたけれど、子どもがどろんこ山の上を何の躊躇もなく乗っている姿をみて、大人の自分にはない発想に驚かされた。
・遊び場づくりの専門家「プレーリーダー」がいるというのが、プレーパークの大きな特徴だと思った。親としても見守ってくれる大人がいると思うと安心して子どもを遊びに行かせられる。

などなど、皆さんそれぞれにプレーパークでの遊びから色々なことを感じることができたようです。


◆プレリーダー りょーまさんのお話
最後に、プレーリーダーとして10年以上活動するりょーまさんにお話を伺いました。ご自身も子どもの頃はプレーパークで遊んでいたというりょーまさん。
「最初は何をしたらいいか分からず辛かったが、『何をして楽しませようか?』という考えから『自分が楽しいことをしていると、周りに伝染する』と考えるようになってから楽になった」と話されました。
大人目線でありがちな、「やってみたいことを見つけるために何かをさせる」という、目標ありき、大人の気持ちありきではないところに、大切な育ちがあるということを再認識させていただけるお話でした。

◆おわりに
授業終了後、プレーパークの活動や渋あそのボランティアに関わることに興味のある方を募ると、多くの方からの挙手がありました。
コアに活動できる方、可能なときにちょっとだけ活動希望の方、登録しておいて主には子どもと遊びに来るかもという方、その辺りも各々に合う関わり方ができるみたいです。

レポートを読んで興味を持っていただいた方も、是非是非渋あそさんにお問い合わせしてみてください!



(授業レポート:安西仁美、写真:高橋ゆめ)