シブヤ大学

授業レポート

2025/11/12 UP

『〈弱さ〉から読み解く韓国現代文学』
──“弱さ”から見える社会のかたち

「〈弱さ〉から読み解く韓国現代文学」をテーマに、アクティブ・ブック・ダイアローグ(ABD)形式の読書会が行われました。
今回は小山内園子著『〈弱さ〉から読み解く韓国現代文学』を教材に、参加者11名が一冊の本を協働して読み解きました。

授業はまず、一人ひとりが担当の章を読み、内容を白紙5枚に要約。その要約を黒板に並べて全体像を共有し、各自が“筆者になりきって”発表します。

発表を聞いた参加者は、印象に残った箇所にシールを貼り、重なった部分を中心に3つのグループでディスカッションを行いました。
 
対話では、「なぜ韓国文学では明るい主人公が受け入れられにくいのか」「“恨(ハン)”という感情が社会的な連帯を生むのでは」といった意見が交わされました。また、「“弱さ”を“選択肢を奪われること”と定義する視点が新鮮」「読者を物語に没入させすぎず、読後に“あなたはどう生きる?”と問いかける構成が印象的」との声もありました。

別のグループでは、チョ・ナムジュ作品を通して「再び書くことの意味」や「SNSでの中傷はなぜ起こるのか」が話題に。韓国では文学と社会が互いに影響し合う構造があり、芸術が社会問題に向き合う姿勢が日本とは異なるのでは、という意見もありました。

ディスカッション内容は模造紙を用いて可視化。「日本の場合…」「痛みを共有することの力」といった言葉が並び皆の思考を整理しました。

参加者からは「事前に読まなくていい読書会が新鮮」「他の人の視点で理解が深まった」「時間が足りないほど濃密だった」「脳が汗をかくような読書体験だった」「韓国文学入門として刺激的だった」などの声が寄せられました。

私自身、韓国文学が社会を映し出し、社会を動かす力を持つことを実感しました。社会について一人で読書しているともやもやが残ることがありますが、こうして考えを共有し、対話を重ねることで理解が深まり、読み進めることができると感じました。

(レポート:臼倉裕紀、写真:鈴木夏奈)