シブヤ大学

授業レポート

2025/7/23 UP

マチアソビ開発局
〜 いつもの行為を街に連れ出そう! 見慣れたあの場所が遊び場に 〜

6月28日、上原社会教育館で開かれたシブヤ大学の授業「マチアソビ開発局 〜 いつもの行為を街に連れ出そう! 見慣れたあの場所が遊び場に 〜」。

タイトルからしてちょっとワクワクする今回の授業のテーマは、ずばり、“いつもの行為を街に持ち出してみよう”というもの。読書・映画鑑賞・朝ごはんなど、普段は家でやっている日常の行為をちょっとだけ外に連れ出してみたらどうなるのか? そんな問いかけから企画された授業でした。

先生は公共空間の使い方を面白く変えてきた笹尾和宏さん。橋の上のディナーや公園での映画会・カラオケ会、河川敷の欄干を利用して持ち寄りパーティーなど、なんだか聞いただけで楽しそうなことを本気でやっている人です。普段は「水辺のまち再生プロジェクト」や「橋ノ上ノ屋台」でも活動されていて、街の公共空間を「もっと自由に使っちゃおうよ!」というメッセージを、いろんな場所で発信しています。

この授業のキーワードは「越境」。なんだか難しそうに聞こえるけど、要は“いつもの行為を、ちょっと場所を変えてやってみる”ということ。家の中にとどまっていた日常を、街のなかに連れ出すことで、見慣れた風景がちょっとだけ違って見える。そんな体験を通じて、街ともっとフラットにつながれるようになる。そのためのヒントが詰まった120分でした。



授業前半(アイスブレイク/トークイベント)

会場に集まったのは20名ほど。まずはカジュアルなアイスブレイクからスタートです。4~5名に分かれて、先生からの質問(公共空間でなにがどこまでできそうか?)をテーマに、自己紹介をしながらグループでトーク。同じ興味を持った人が集まったこともあって、みんなすぐに打ち解けていきました。

その後は先生によるトークタイム。笹尾さんが今までやってきた“街あそび”の数々を、写真やエピソード付きで紹介してくれました。例えば「陸橋の上でのディナー」や「遊歩道のスキマを使ったランチ」。日常使っている机や椅子を見慣れた街のスキマへ持ち込むだけで、即席の野外ダイニングに早変わり! シンプルなのに、気の合う仲間との非日常な食卓はめちゃくちゃ素敵な時間になったそうです。

他にも「公園で麻雀・合奏を楽しむ」や「芝生広場で映画鑑賞」など、“なんで今まで思いつかなかったのだろう?”っていうアイディアが盛りだくさん。どれも「特別な道具はいらない」「誰かと一緒にやればもっと楽しい」ってことが共通していて、みんなの想像力がどんどん刺激されていくのがわかりました。

笹尾さんからは「公共空間は私と私以外の共有の場所。周りの人たちの邪魔にならないように最大限配慮しながら、自分なりの楽しみ方を自由に考えてみるのが大切」とアドバイス。「お店や施設のサービスを利用するだけではなく、自分で楽しむ力を高めることで、“楽しいと感じる基準”を自分でコントロールできるようになる」というお話が特に印象的でした。



授業後半(グループワーク/発表)

後半は、いよいよグループワークの時間。5〜6人でチームを組んで、あらかじめ準備されていたテーマと条件を選択して「公共空間を活かした自分たちだけのマチアソビ」を笹尾さんと相談をしながら考えていきました。もうこの時点で、場の雰囲気はかなりにぎやか。笑い声が飛び交うグループ、真剣にアイディア出しをしているグループなどさまざま。笹尾さんも、ちょっとした“リアルなツッコミ”をくれたり、「それ面白いね!」と後押ししてくれたり。アイディアだけじゃ終わらない、もしかしたら実現できそう?の一歩がぐっと近づく瞬間でした。

各グループから出てきたアイディアは今すぐやってみたくなる企画ばかり。場所の選び方、時間帯、必要なもの…と、いろんな角度から話し合いが進んでいったようすが分かりました。


各グループから出てきた「マチアソビ」のアイディア

「テーマ:憂鬱な月曜日を最高の日に」×「条件:終電後から始発まで」
アイディア:MSAM(みんなで最高の朝を迎えよう)
・日曜日の夜に渋谷氷川公園に集合
・参加者は自由に過ごしながら朝を迎えて、そのまま会社や学校へ

「テーマ:見知らぬ他人との時間の共有」×「条件:15分以内で一本勝負!」
アイディア:趣味披露合戦 ~あなたの趣味を知りたい What’s your hobby?~
・代々木公園の木の下に集合
・対戦用のリングを準備して参加者が1vs1で自分の趣味や特技を披露
・意外性などの基準で勝者を判定

「テーマ:街の歴史に触れる」×「条件:参加費は無料」
アイディア:私の渋谷、あなたの渋谷 星に願いを
・渋谷駅のハチ公に集合
・七夕用の笹と記入用の短冊を準備
・自分たちや街の人たちに渋谷の思い出(歴史)などを短冊に記入して飾る

「テーマ:新しい食事のスタイル」×「条件:電源・電子機器の利用禁止」
アイディア:緊急開催! じゃない方の食事、最強のご飯のお供を決めろ
・北の丸公園に集合
・会社の備蓄や賞味期限切れ間近の食材などを持ち寄って調理
・できあがった「ご飯のお供」でコンテスト(味・持ち寄った食材の量など)

最後は、それぞれのグループがプレゼンタイム。どのアイディアもユニークで、しかもちゃんと“できそう”な手ごたえがあるものばかり。笹尾さんも「授業が終わったらそのまま移動して、ぜひ開催してみてください!」と笑いながら太鼓判?を押してくれました。




今回の授業は、街をもっと自由に楽しむためのヒントが詰まった120分でした。普段の自分の“日常”や“好き”を街に持ち出すだけで、見慣れた場所がちょっと特別な空間に変わる、日常が少しだけ楽しくなる。それって実は誰にでもできることなんだって気づけたのが大きな収穫です。アイディアを持ち寄って、話して、カタチにしてみる。このプロセス自体が、街との新しい付き合い方そのものだったように思います。次は、どこで何をやろう? そんな妄想がふくらむ、楽しくて、前向きな授業でした。

(レポート: 奥住 健一、写真:工藤英二)