シブヤ大学

授業レポート

2025/5/30 UP

初めてのアドラー心理学
~人間関係が楽になる心の処方箋

今回は株式会社子育て支援代表取締役、保育所運営、ベビーシッター、アドラー心理学、カウンセリング、人材育成・研修・講演、不登校支援、書籍の執筆などのお仕事をされている熊野英一さんを講師にお迎えして「初めてのアドラー心理学〜人間関係が楽になる心の処方箋〜」と題した授業です。

今回はとても楽しみにしていた授業でした。
若い頃に生きづらさを感じて心理学に興味を持ち少し本を読んでみたりしたのですが…悩みが解消するどころかますます迷路に迷い込んでしまった感がありました。

ところが熊野さんは自己紹介の後、開口一番に仰った言葉は「この授業が終わる頃には元気になれていると思いますよ!」でした。
これは!今まで知っていた心理学とは違うのかもしれないと期待値が上がりました。

更に熊野さんは気さくにクマちゃんと呼んでくださいとリラックスしたムードを作ってくださいました。
生徒さん達も呼んで欲しいニックネームを胸に付けて30秒自己紹介をしました。
参加した動機は、仕事や家族などの人間関係の悩みがあると言う方と、アドラー心理学の本を読んで興味があったからと言う方が多かったようです。

簡単自己紹介の後はアドラー心理学の基礎講義でした。
これは詳しく書くと長くなってしまうので超簡単に書くと…
アドラー心理学は「幸せに生きるための心理学である」と言う事です。
そのためには
(自己受容)ポンコツな自分を認める
(他者信頼)無条件で相手を信じること 
(他者貢献)自分には価値がある、謎の自己犠牲をしない
この3つがそろうと「共同体感覚」を持てるようになり、人は精神的自立が出来るようになり幸せ生きることに近づいていくと言う事なのかな?と感じました。
「共同体感覚」とは自分には価値があるということを前提にそんな自分が自分だけのためではなく他者にも貢献出来ると信じている感覚です。

座学の最後に一人の生徒さんの悩みをアドラー心理学によって解決すると言う実践篇がありました。
職場の人間関係の悩みを「課題の分離」を応用して、まず自分の問題なのか他者の問題なのかに分け、更に共同の課題に分けて4つのうちのどこに当てはまるかで考えていくと解決に近づく事が出来ると言うものでした。
相談された方もこの考え方でだいぶ心が軽くなったと仰っていました。




その後は5つのグループに別れてグループの中で話し合って悩みを解決したり感想を話すグループワークをしました。
各グループの感想は(以下順不同)

(宮本さんのグループ)
今日の授業は参加者の皆さんから課題を「自分ごと」として真正面から捉えて、なんらかのヒントが得られるという熱い気持ちが感じられた。
皆さん初対面同士ながら職場や家庭等の悩みを自己開示してくださいました。
ディスカッションでも対人関係の悩みを相手のせいにせず自分の側が相手に合わせたり自己犠牲したり相手の気分に振り回されたりする経験を踏まえて授業で教わった「課題の分離」等の手法を使って自分の気持ちを大切にしながら人間関係の問題解決を模索していきたいと言う前向きな議論がなされました。
皆さんそれぞれ何か持ち帰られた様子でした。

(木全さんのグループ)
お互いに相手の職業や年齢など知らない状況の中で「何ものでも無い自分」として話せる場になったからこそ職場や家庭のことなどセンシティブなお悩みも話しやすい場だったのかなと感じました。
皆さんそれぞれの日常生活の中で心掛けている心の持ち方などがあるようでしたが改めて感謝や思いやりを大切にしたいとおっしゃっていました。
「感謝」「思いやり」について普段改めて考えることは中々ありませんでしたが私自身いま一度見つめ直す機会になりました。 


(宮島さんのグループ)
最後のまとめでは皆さんしっかり感想や自身の思いを述べていて何かのヒントやきっかけのようなものを持てていたようでした。
もっと勉強したいと話している方もいました。先生が話し始めても会話が終わらない勢いでした。
それぞれバックボーンも異なり普段の関わりのない方同士が自然と自身の悩みを語り合う場はなんだか不思議だけど、とても有意義で素敵な空間だと感じました。
熊野先生のお言葉と授業展開の流れがそういう雰囲気を作っていたのかなと思いました。

(水井さんのグループ)
「今日の授業を受けてどうしたいか」と言う発言のところで
・子供のことを心配しすぎることをやめたい
・人と自分を切り分けて考えたい
・おせっかいや、こうでなければと思うのをやめたい
・ダメ出しをやめたいが、仕事でダメ出しをしないといけない事もあるので、まだ自分の頭の中の整理ができていない
・「共感」の本当の意味が理解できた。共感と同意は違う。今後出来るだけまず相手に共感するようにしてその上で自分の意見を伝えたい
という意見が出ました。

(片山さんのグループ)
私のグループでは活発な意見や悩みごとなどの話が出ました。
やはり仕事や家族などの人間関係の悩みを抱えている方が多く、聞く力を付けることと共感するのが大切なのではないかと言うこと、自分の問題か他者の問題かの切り分けて考えることで無駄な自己犠牲を減らし解決に近づけるのではないか、などの話が出ました。
皆さんそれぞれの悩みか少し軽くなって解決の糸口が見えて来たような印象を受けました。




全体を通して皆さんが自分自身の悩みを開示しやすくなったのは、
熊野さんが最初に
①今に集中する
②主体的に参加する
③守秘義務を守る
以上3つの約束を守ってください、と仰って安全性が確保され、話しやすい雰囲気作りをしてくださったおかげだと感じました。

最初に先生が
「アドラー心理学は幸せに生きるための心理学」
「ほんの少しの知性と勇気とユーモアのセンスがあれば、ほぼ誰にでも学ぶことができる芸術であるというのが、我々の主張である」
とおっしゃっていましたが、ほんの少しの勇気とは「嫌われる勇気」というより「不完全である勇気」なのだと感じられました。
この言葉のとおりユーモアのある語り口で場の雰囲気を和らげて、世界一分かりやすいアドラー心理学を学ぶことができました。
皆さんメモを取るなどして熱心にお話しを聞き質問もされていました。
それだけ人間関係の悩みが多くて深刻なのだと感じましたが、最後には表情も明るくなっていらっしゃった方が多いようにお見受けしました。
もっとアドラー心理学について学びたいと言う意見も多かったので、是非第二弾第三弾の授業もお願いします。


「人間関係が楽になる心の処方箋」のサブタイトルの通り心が楽になれた授業でした。
熊野さん参加者の皆様ありがとうございました。

(レポート:片山朱実、グループレポート:宮本佳幸、木全茉莉子、水井大輔、宮島洋人、写真:江藤俊哉、竹田憲一)