授業レポート
2023/12/11 UP
わたしとウクライナ Vol.1
〜避難民就労支援の現場から〜
第1章 自分とウクライナや戦争との距離感
シリーズ授業「わたしとウクライナ」第1回目の授業。 申込者100%出席の熱気の中で、講師であるNadiyaプロジェクトリーダー別當さんの「ご来店ありがとうございます」から授業が始まりました。
争いには中立の立場で、難民専門家ではないというお断りがあり、自分とウクライナや戦争との距離感についてお話しを進めるとの説明がありました。
ここから別當さんの自己紹介も兼ねたクイズタイム。100カ国をバックパックで巡り旅行の仕事もされていた経験からたくさんのスナップ写真を見せて「ここはどこ?」と問いかけると、教室内から正解の声が次々に上がりました。中には難問もありましたが、参加者の方には海外に行ったことがある方も多く、大変盛り上がる時間でした。
最後の一枚がエクアドルの赤道のラインが引かれた広場でした。
実は別當さんが初めて難民に接したのが、ボリビアで出会ったベネズエラからの難民だったそう。政治混乱とハイパーインフレ(268万%)から多数の難民が周辺地域に避難している様子をみて、難民問題に興味を持ちはじめたそうです。
別當さんとウクライナ避難民支援のきっかけは、避難民エリザベータさんの保証人を引き受けたこと。言葉など壁もあり避難民が就労する壁は高く、それなら働ける場所を作ればいいということで雇用のためのレストランNadiyaを開いたそうです。
キーウ出身のエリザベータさんとは、語学交流サイトで知り合い、別當さんが進攻前のウクライナに訪問した際に街中を案内してもらったり10年来のつながりでした。避難してきたエリザベータさんは、まず日本語が難しい、毎年更新が必要なビザの延長もできない可能性もあり、平和になったら帰国が条件、かつてITのエンジニアでも言葉の障壁からなかなか仕事に就けないなどさまざまな障壁がありました。6割くらいのウクライナ避難民が当時は、同様の状況だったそう。別當さんがワーキングホリデーでドイツに行った時言葉の障壁があっても職につけたのが、レストランだったこともありNadiyaの開店を思いついたそうです。
日本の避難民の状況は、日本財団の支援で月約8万円の給付、住居は無償貸与、日本語学習の支援などあり生活するにはぎりぎりの状況。また、身元保証人への保証はゼロであり何かと負担がかかる状況の中で新たに引受けるにはハードルが高いという課題があります。
第2章 ウクライナとは
国旗は、空と水を表す青色と小麦の輝きを表す金色、国土は日本の1.6倍で、人口は4200万人。言語は、ウクライナ語、ロシア語、ベラルーシ語、スラブ語派で、文字はブルガリアで生まれたキリル文字。ポーランド語も近い言語であることもあり多くの避難民がポーランドへという事情もあります。
通貨ウリヴニァ(発音はゲストで来てくれたウクライナ避難民ダリアさんから)、大統領はゼレンスキー氏で元俳優、実業家で映画「国民の僕」で2016年に大統領になる教師役で出演している。
第3章 ウクライナゆかりの人
セルゲイ・ブブカ(棒高跳び)ワシル・ロマチェンコ(ボクサー)、アンドリー・セフチェンコ(サッカー)ダスティン・ホフマン(俳優)、レオナルド・デカプリオ(俳優)ミラ・ジョボビッチ(俳優)その娘エバ・アンダーソン(俳優)大鵬幸喜も父がウクライナ人などなど…知られざるウクライナの著名人をご紹介いただきました。観光名所としては、愛のトンネル、聖ソフィア大聖堂。映画では、ソフィア・ローレン主演のひまわりが有名です。食べ物は、ビーツから作るボルシチ、和食と同じように無形文化遺産にもなっています。
第4章 ゲストのダリアさんからのお話し
始めは身よりの住むイタリアに避難したが、バス電車のストがひどく、街が汚い、騒々しいのが嫌で、憧れだった日本に1年前に避難することを決意。22歳のダリアさんは、アニメや漫画のコスプレが大好きで日本語学校に通っています。ヘルソンとオデーサの間にある港町ムィコライウの出身で、お父さんとお兄さんは兵役があるため出国できずいまもウクライナに住んでいるそう。ウクライナ料理のボルシチは日本の味噌汁と同じように日常的な食べ物でよく食べるそうです。日本の生活で大変なことは、ゴミ出しの分別や左側通行が慣れるまで大変だったとのこと。将来は漫画家のアシスタントになりたいと語ってくれました。
最後に別當さんから、支援疲れもあり、ウクライナに対する関心が薄れてきていることを感じているというお話しがありました。日本財団からの支援もこれからは避難してくる人には出な区なってしまい、身元保証人が経済的な負担を個人で負うことに課題があることも今後、訴えていきたいとおっしゃっていました。ニュースで見るだけの問題が、少し身近な生身の人たちのこととして引き寄せるきっかけになってくれればありがたいと参加者に呼びかけました。Nadiyaは希望という意味で、避難民運営食堂として西東京市や小平市で開店しているのでクラウドファンディングや寄付とともに、食べいくことで支援につながります。
(レポート、写真:臼倉裕紀、元木秀樹)