シブヤ大学

授業レポート

2019/3/27 UP

2限目:「ふつうの仕事」の未来を考えよう

今日はgreenz.jpビジネスアドバイザーの小野裕之さんと、Handi House projectの加藤渓一さんをお迎えしての授業です。
「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう。」
米デューク大学の研究者であるキャシー・デビッドソン氏が2011年8月のニューヨークタイムズ紙インタビューで語った言葉の引用から、授業が始まりました。
ITや様々な技術の発展により仕事の内容も複雑化した今、昔からあるような「ふつうの仕事」はこれからどうなるのでしょうか?

◆授業の内容紹介

最初に、小野さんから、greenz.jpとしてこれまでに取材をされたり、関わられた事例のお話しがありました。
「ふつうの仕事」を現代の私たちの価値観にマッチするカタチに工夫されているのかについて、小野さんなりの視点で紹介頂きました。

【小野さんからの紹介事例】
・「リビルディングセンタージャパン」
カフェを併設した古材と古道具を扱うお店、ワークショップも開催されているそうです。
https://greenz.jp/2016/11/21/ribicen/

・「ウェル洋光台」
多国籍多世代でプライベートが曖昧なシェアハウスの取り組みです。
https://greenz.jp/2016/05/25/well_yokodai_greenzpmailmag/

・「ブラウンシュガーファースト」
ブラウンシュガーを使ったオーガニック素材のジェラートとココナッツオイルを扱うお店です。
https://greenz.jp/2016/11/18/organic_brown_sugar/


続いて、加藤さんのお話。

加藤さんは、通常だったら関わることのない、施主自身が家づくりのプロセスに参加することで、家が建った後も自分たちでDIYを継続していけるような家づくりを提案しています。

【加藤さんの取り組み】
・「ハンディハウス」は、家を作る10名程度の建築家集団。カッコいい家、店、良い空間作り=良い人作りをしています。合言葉は「妄想から打ち上げまで」。一緒に作ることで、お客さん自身に「家と向き合う、勇気と覚悟」が生まれ、自分の家に愛着が持てるそう。

・「松蔭プラット」は、築50年位のアパートのリノベーションの取り組み。ここでは、工程表を外の黒板に書くと言う試みによって、子供が落書きをしたり、近隣住民との交流や何か新しい物か出来ると言う期待感も生まれ、現場にとっても住民にとっても良い結果に繋がったそうです。

最後に、今後の展開を紹介してくださいました
「何かをゼロから作ることができる」という根本の強みを活かすと同時に他業態との複合化(建築+海の家の運営など)の可能性についてや、3Dプリンタなどの新しい道具を取り入れるといった展望、建築業界は、様々な背景の人々を受け入れてきた、寛容で多様性のある仕事であることなどをお話しくださいました。

◆授業の感想
そんなお二人からお話を聴き、個人的にもあらためて疑問に感じたのは「ふつうの仕事」とは何か?と言う事でした。
参加者の中からも、「私にとってのふつうの仕事は、学校を出て会社で働くというもので、例えば加藤さんのお話しにあった、大工さんなどの特殊な技術を身につける仕事は、ふつうではない。」と言う意見が出ました。

そんな意見に対し、お二人が出されたふつうの仕事に対する答え。それは以下のようなものでした。
 古くからある仕事
 お客さまの顔が見える仕事
 自分に正直になれる仕事

お二人の先生の手掛けている仕事に共通することは、古い伝統的な仕事を残すことや、人と人、人と物を繋げる事によって新しい仕事を作り出したり、新しい働き方を提案して行くことなのかなと思いました。
その根底にあり、お二人に共通することは、自らが楽しく仕事をして、周りの人を楽しくさせるということではないかと感じました。
サービスや物を提供する側も、お客様の側も、幸せになれる仕事をすること。必ずしも大きな活動じゃなく小さなことでも、日々の努力とそれを続ける事が大切なのだと思いました。

自分が本当にやりたい仕事は何か?

小野さんが会社勤めを辞め今の仕事を始めたきっかけは、
報道されるテロや悲惨な事件を見て、どうしてこういった取り組みを
無くすような活動を報道しないとのかと思った事だそう。

加藤さんも自分が子供の頃から本当にやりたい仕事とは何かを考えて、
建築家になるより、お客様と一緒に家作りが出来る今の仕事を選んだと言う事でした。

「ふつう」の仕事とは何か?それは一人一人が違った答えになるのだと思います。

お二人とも、時にユーモアを交えながら、終始和やかな雰囲気でお話をされていて、本当に楽しんでお仕事をされていると言う様子が伝わって来ました。

(レポート:片山朱実、写真:高橋正)