シブヤ大学

シブヤ大学ツーリズム19
「人間だけがすべてじゃない~生物多様性社会のつくり方2~@長野」【いのち呼び戻すビオトープづくり】

12:00-00:00
  • 長野県飯島町
  • 松木 洋一 [日本獣医生命科学大学名誉教授(農業経済学)]
参加費
無料
定員
20名
参加対象
生物多様性って何?生き物好きっ!という方。

当日の持ち物
汚れてもよい動きやすい作業着(ジャージ等)、汚れてもよい靴、雨天時のための雨具(傘やレインコート)をご持参ください。また、宿泊施設に浴衣・タオル・歯ブラシ(洗面具)・石鹸等はございませんので各自にてご用意ください。夜は冷え込みますので防寒着をご持参されますことをお勧めいたします。
申し込み方法
上記受付期間中、当WEB上の申し込みフォームより<先着順>にて受付
※定員になり次第、受付を締め切らせていただきます。
※1回のお申し込みにつき、1名様のご参加となりますのでご了承ください。同じ方が同じ授業に2回申し込みは出来ません。
【授業料(実費)】18,000円(食事、宿泊、温泉、各種材料の代金)
【集合】集合場所へは時間までに必ずお集まり下さい。
【撮影等】本授業では、授業中以外の写真撮影のみ認めます。その他の録音機器等のお持込は固くお断りさせて頂きますので、ご了承下さい。
※1:本授業は、1泊2日の現地集合・現地解散のプログラムとなります。
参加代金については、当日現地にてお支払頂きます。
※2:本授業へのお申し込みは「先着順」となっております。申込締切日は、10月29日(木)12時までとさせて頂きます。(ただし、定員となり次第締め切らせて頂きます。)
※3:本授業は、アグリネイチャースチュワード協会との共催です。
昔ながらの小川がさらさらと流れ、ホタルやメダカ、ドジョウ、コブナが泳ぐ。小さいときに歌った世界は、今や田舎ですらなかなか見られず、生き物たちは稀少種になりつつあります。

今回は、町中で、生き物の賑わいを取り戻そうと取り組んでいる、長野県の中央アルプスと南アルプスの谷間にある飯島町という人口10,000人の町に伺います。
飯島町でも、農薬・化学肥料に頼る農法によって、かつてそこで生息していた生き物たちの生息が難しくなっていました。

町では生物多様性社会の再建に取り組むために、町全域の農地1000ヘクタールすべてを対象とした『1000ヘクタール自然共生農場計画』を策定し、地域の専門家が設立した研究所が中心となって、昭和30年代に生息していた多様な生き物の再生を実現するために生物調査や自然観察、里山整備などを行っています。

今回の授業では、里山に入り間伐を行い、さらに、この間伐材を使って休耕田にビオトープを造ります。ぜひこの機会に、里山を育てる醍醐味と生き物たちの生息地造りという普段体験したことのない世界を味わいながら、今後の私達の生き方を考えてみましょう。

【授業プログラム】

■プログラム総合 『生物多様性社会のつくり方』
今から50年前の昭和30年代の日本には、農村のみならず東京都内にも「蛍」が乱舞し、子供達は小川や田んぼでフナやドジョウ、ザリガニ、里山や雑木林に入ればカブトムシやセミを捕まえては遊んでいました。しかし、いつの間にか自然豊かなはずであった「農村」が、いま荒れ果てています。農業者が数千年にわたって管理してきた里山・水田・小川などの第二次自然(AgriNature:農業自然)が、戦後の食糧難時代からの増産政策によって農薬や化学肥料が過剰に使われた結果、その農業自然が破壊されているのです。自然を回復する。それは、一体どういうことなのでしょう。キーワードは、生物多様性。つまり、「生き物の賑わい」です。多様性がある事の意味は、生命があらゆる環境でも生き残っていくためのリスクヘッジですが、その賑わい自体に世界の豊かさがあるのです。
今回のツーリズムでは、ぜひ生物が賑わう社会の作る一役を担ってください。私たち人間は、命を「創る」ことはできませんが、「育む」ことはできます。そして育むことのその先に、多様性社会が生まれるのです。農地と森林の所有者であり経営者である農業者がもう一度多様な生物が生息していた世界を思い出し、「生物多様性社会」を再建する主体になってもらいたいものです。それには都市の消費者がパートナー(協働者)となることが不可欠です。この講座ではヨーロッパや日本の先進事例を紹介しながら「日本の自然はだれが守るのか?」を考えていきたいと思います。


【昭和30年代の景観イメージ・飯島町】

■プログラム1 『1000ヘクタール自然共生農場をめざす飯島町』
飯島町が行う生物多様性再生プロジェクトについて話を伺います。
先生:松木洋一(アグリネイチャースチュワード協会理事長・日本獣医生命科学大学名誉教授)

■プログラム2 『樹木を間伐する〝里山整備隊〟』体験
 

かつて里山は、燃料として、あるいは農業生産としての価値を持っていました。飯島町においても、化学肥料が普及する前は『刈敷』を行っていました。『刈敷』とは、里山で刈り取った草や小枝を田畑にすき込んで肥料としたものです。飯島町では、昭和30年代になって、刈敷を確保するための里山は、スギやカラマツの植林地となっていきました。しかし、この植林地も安価な外材の輸入により、整備されてきませんでした。そのため、一本一本の樹木は細く伸び、台風や雪の重みで折れてしまうものも出てきています。また、林床には光が当たらないため、下草も貧弱となります。
そこで、樹齢20年ほど経過したヒノキ植林地の現状を観察しながら、実際にチェーンソーやノコギリを使って、樹木の間伐を行っていただきます。里山は人がすでに入り込んでしまった以上、間伐していかなければ死んでしまうのです。つまり間伐とは、森を育むことなのです。
間伐を継続的に行うことも、重要です。シブ大ツーリズム参加者で、間伐材を有効利用する「ツリーハウスの里」造りプロジェクトを立ち上げていく、そんな夢もふくらみます。

先生:上伊那森林組合の方 

■プログラム3 『ビオトープ造り』体験
 

飯島町は、「飯島町1000ヘクタール自然共生農場」をコンセプトに、生物多様性で町おこしをしている全国でも珍しい町です。1000ヘクタールって東京ドーム214個分って勘定されるぐらい、広大です。そんな、ぱっとはイメージしにくいくらいに広大な土地を、生物多様な環境を整え、生き物でにぎわう町にしていこうという大胆な試みです。飯島町はいわば「町中がビオトープ」を目指しています。

今回は、休耕田となっている場所に、地元の里山から間伐してきた木材を使って、水棲生物たちが安心して棲むことができる場所を造ります。飯島町ではこれまでに、休耕田を利用して田んぼビオトープを造ってきました。そこは現在、トノサマガエルがたくさん生息しています。かつて、圃場整備事業によって埋め込まれたU字溝の用水路は、生き物たちの生活域を奪ってしまいました。一度、U字溝に落ちたトノサマガエルの多くは、水に流されその地から消え去りました。残ったのは、吸盤が発達したアマガエルだけ。さらに、オタマジャクシからトノサマガエルに変身する前に、田んぼの水が抜かれることもあり、全国的に激減しています。

そんな生き物が住みにくくなってきた、生物多様でない環境を変えていく試みの中で、身近なものがビオトープです。よく聞く言葉ですが、意味は「多様な生物が生息できる環境」。この環境造りを地元のみなさんといっしょに体験します。今回、地元の里山から間伐してきた木材を使って、水棲生物たちが安心して棲むことができる場所を造ります。
先生:吉田保晴(アグリネイチャーフィールドミュージアム研究員)

■プログラム4-1 『飯島の生き物 田んぼはいのちのゆりかごだ』講義
 

写真と解説による飯島の里山の生き物の紹介。
日本の里山の自然は稲作を中心とした農業により創られてきた、日本の豊かな自然の根底を支えてきた田んぼ。古来から人は野山から資材を調達し、田畑を耕してきた。その当たり前の日常の繰り返しが多くの生き物を育んできた。それは知らず知らずのうちに人と生き物が結んだ約束だ。その約束は人間社会の変化の早さに流され忘れ去られようとしている
先生:米山富和(アグリネイチャーフィールドミュージアム研究員)

■プログラム4-2 『生き物たちの生息場所』講義
今回、森林整備作業やビオトープ造りを体験していただきますが、その体験がどのような意味を持っているのか現場での説明や講義で知っていただきます。
カワニナが生息する用水路では、6月になるとゲンジボタルも見ることができます。暗闇の中で、点滅するその光は、日常生活とかけ離れた時間を感じ、私たちの心をいやしてくれます。このようなゲンジボタルが生息している環境とはどのようなものでしょうか。
先生:吉田保晴(アグリネイチャーフィールドミュージアム研究員)

■プログラム5 『生き物救出作戦』体験
 

かつて、農業の生産性を上げようと推し進めてきた圃場整備事業のため、多くの用水路が三面張りのU字溝になってしまいました。そのため、それまでそこにいた水棲生物が姿を消してしまいました。このことは、飯島町も例外ではありませんでした。しかしビオトープを造る予定地には、飯島町でも数少なくなった土側溝(小川)があります。そこには、ゲンジボタルの幼虫の餌となるカワニナやドジョウといった生き物たちが生息しています。今回、この土側溝をさらに広げる作業を通して、よりたくさんのカワニナやドジョウが生息できる環境を造ろうと考えています。この作業を行うに当たって、土側溝に生息しているこれらの生き物たちを一時的に保護します。実際に、小さな生き物たちに接する中で、用水路という限られた世界の中にいろいろな生き物たちがいることを実感できます。また、宿泊施設のあるアグリネイチャーいいじまでは、この地域で絶滅寸前になっているメダカの保護増殖を行っています。今回は、増えたメダカの一部をすくい取り、間伐材を使って造り上げる田んぼビオトープでも増やしていきたいと考えています。
先生:小林幸平(地元農業者)

■プログラム6 『食を楽しむ』体験
 

一日目のお昼は、飯島町で収穫された秋ソバを食べていただきます。そしてその日の夕食は、地元のお酒に自然共生栽培によって生産された季節の食材が並びます。前回は、鶏出し汁の飯島産野菜・きのこの鍋、川魚料理+地元の焼酎・有機日本酒・ワイン・ウイスキーで、好評でした。また、飯島町がある伊那谷は、昔から昆虫食の文化があります。水田の草むらに生息するイナゴや天竜川の魚の餌となっているザザムシ、そして秋には蜂の子などを食べることができます。酒のつまみには最高と思っていますが、初めての方には少し勇気がいるかも知れません。でも、そこは挑戦です。伊那谷の食文化を味わってみてください。

二日目のお昼は、ビオトープ造り現場の小林さん宅でとれたコンニャク芋から茹でたてのコンニャクと、お庭でとれた野菜で作った総菜をいただきます。その後、大島農園でこだわりのリンゴをもぎ取り、秋の味覚を堪能してもらいます。
先生:上原俊憲アグリネイチャーいいじまマネージャー

【当日の流れ】
<1日目:2009年10月31日(土)>(食事 : 朝× 昼○ 夕○)
(各自、新宿バスターミナル→飯島バス停行きにて現地へ移動。☆下記注意事項をご参照ください。)
11:36  中央高速 飯島バス停 到着
(飯島バス停から、集合場所アグリネイチャーいいじままでは、スタッフが引率します。)

12:00 アグリネイチャーいいじまで集合・受付
※アグリネイチャーいいじま(長野県上伊那郡飯島町3907-1636、TEL:0265-86-6072)
12:10 信州そばの昼食
13:00 プログラム1 『1000ヘクタール自然共生農場をめざす飯島町』 講義
    (飯島町が行う生物多様性への取り組みについて話をうかがう)
13:30 間伐体験の場所に出発・移動
14:00 プログラム2 『樹木を間伐する〝里山整備隊〟』 間伐体験 開始
15:50 プログラム2 『樹木を間伐する〝里山整備隊〟』 間伐体験 終了
    ビオトープ造りの現場に移動
16:10 プログラム3-1 『ビオトープ造り』ビオトープ現場視察・間伐材搬入 開始
16:30 プログラム3-1 『ビオトープ造り』終了(温泉へ移動)
17:00 温泉入浴(露天こぶしの湯)
18:00 温泉出発 (アグリネイチャーいいじまに移動)
18:30 プログラム4-1 『飯島の生き物 田んぼはいのちのゆりかごだ』講義 開始
19:00 体験発表&夕食&交流会
    プログラム6-1 『食を楽しむ』
23:00 就寝(任意)

<2日目:2009年11月1日(日)>(食事 : 朝○ 昼○ 夕×)
7:30  朝食
8:15  プログラム4-2 『生き物たちの生息場所』講義 開始
9:00  プログラム5-1 『生き物救出作戦』 体験 
    (アグリネイチャーでメダカ・水生植物の観察・採取)
9:30  プログラム5-1 『生き物救出作戦』 終了
    ビオトープ造り現場へ移動
9:50  プログラム5-2 『生き物救出作戦』体験 再開始 
    (土側溝にいるカワニナ・ドジョウの採集)
    プログラム5-2 『生き物救出作戦』体験 終了
10:10 プログラム3-2 『ビオトープ造り』体験
    (水路作り、休憩、くい打ち、通水、カワニナやドジョウ・メダカを放す。)
12:00 プログラム3-1 『ビオトープ造り』終了
    昼食
13:00 プログラム6-2 『食を楽しむ』体験 開始(リンゴのもぎ取り)
14:00 プログラム6-2 『食を楽しむ』体験 終了(アグリネイチャーいいじまへ移動)
14:30 ふりかえり
15:00 解散

【注意事項】
※1:本授業は、<現地(飯島町)集合・現地解散の体験型プログラム>です。
プログラム参加代金<食事、宿泊、温泉、各種材料の代金>として、
お一人あたり「18,000円」を頂戴いたします。
(飯島町までの往復交通費は含まれませんので、ご了承下さい。)
尚、参加代金については、当日現地にてお支払頂きます。

☆ご参考☆
現地への往復は、高速バスの利用をお勧めいたします。自家用車での参加も可です。
(希望者はバス停まで迎えをいたします。)
・お勧め便:3703便 7:00 新宿西口バスターミナル発 → 11:36 飯島着
・往復割引適用運賃(新宿西口バスターミナル→飯島):7,100円

■ハイウェイバス.comオフィシャルサイト
http://tinyurl.com/omea7j
(シブヤ大学ホームページ外に転送されます。)

※2:1日目に行われる交流会の際のお飲物代(アルコール類、ソフトドリンク類)につきましては、上記1の代金には含まれておりません。当日アルコール類、ソフトドリンク類をご希望の方から「1,000円」、ソフトドリンク類のみご希望の方から「500円」を頂戴いたしますので、予めご了承ください。

※3:定員20名、最少催行人員は7名以上とします。

※4:雨天の場合は、一部プログラムを変更の上、実施いたします。

※5:各体験のための、汚れてもよい動きやすい作業着(ジャージ等)、汚れてもよい靴(長靴等)、軍手、雨天時のための雨具(傘やレインコート)をご持参ください。夜は冷え込みますので防寒着をご持参されます事をお勧めいたします。

※6:宿泊施設は「アグリネーチャーいいじま」で、相部屋利用となります。(基本は男女別。)浴衣・タオル・歯ブラシ(洗面具)・石鹸等はございませんので各自にてご用意ください。トイレ・お風呂・洗面所は共同です。
※7: お客様の個人情報はお客様との連絡のために利用させていただく他、お客様がお申し込みいただいたプログラムにおいて宿泊機関などの提供するサービスの手配及び受領のための手続きに必要な範囲内で利用させていただきます。宿泊機関などへの個人情報の提供について同意の上お申し込みください。

【共催】
アグリネイチャースチュワード協会

アグリネイチャースチュワード協会は、本来の農業が持つ“自然環境を保全し生物多様性を維持していく機能”を重視し、その保全技術の開発、環境負荷低減のための農薬・化学肥料の使用削減、使われるエネルギーの節約・CO2排出削減などにより、安全な食料を持続的に生産できる自然共生農業の実現を目指します。
私たちが提案する自然共生農業は、自然と人間は対立するものではなく、古くから日本農業が実際に進めてきた“自然と相互依存する”という関係を、科学的知識を基本にして自覚的に実現することを図るものです。

■アグリネイチャースチュワード協会オフィシャルサイトへ
http://www.agrinature.jp/index.html

先生

[ 日本獣医生命科学大学名誉教授(農業経済学) ]

松木 洋一

アグリネイチャースチュワード協会理事長、農業と動物福祉の研究会代表世話人、(有)アグリネイチャーいいじま取締役、NPO法人えがおつなげて顧問、関東ツーリズム大学設立評議員。最近では、農業者が数千年にわたってつくりあげてきた「農業自然」は、農山村ばかりでなく、東京など大都市にも残っているので、市民と都市農業者とともに都市農地周辺の生き物調査を行っています。また、愛知万博の環境キャラクターであるモリゾウキッコロを生物多様性ブランドとして活用するプロジェクトにかかわって、農業がもつ生物多様性保全ビジネス開発をすすめています。また、昨年来評判になっている映画「いのちの食べ方」で取り上げられているストレスのない健康な家畜の飼い方である「家畜福祉」の実現にEUなどの国際NGOとともにかかわっています。



【最近の主要著書】
松木洋一・木村伸男編著「家族農業経営の底力」農林統計協会2003
松木洋一・永松美希編著「日本とEUの有機畜産」農文協2004
松木洋一・R ヒュルネ編著 松木洋一・後藤さとみ共訳「食品安全経済学」
日本経済評論社2007

教室

長野県飯島町

天竜川を挟んでそびえる中央アルプスと南アルプスの谷間にあり、米や野菜、キノコ類、リンゴ・梨・桃などを生産する豊かな農山村。



所在地

<当日の連絡先について>
電話:090-2981-7251(※注)
(※注)

①当日6時30分以降にご連絡頂きますよう、お願いいたします。
②場所についてのお問合せや、やむを得ない場合の当日キャンセルのご連絡の場合のみ、おかけ頂きますよう、お願いいたします。