おめでたい文様をさがして

江戸時代に作られた伊万里焼には、さまざまな文様が表されています。
こうした焼きものの器に文様が描かれたり、多様な造形が見られるようになるのは桃山時代のこと。茶の湯の道具、懐石具として登場した奇抜な形や、文様の「志野」「織部」「唐津」などがはじまりです。この食器文化を継承した伊万里焼と、その技術の粋を集めた鍋島焼に、今回は「吉祥文様（きちじょうもんよう）」を探します。

「松竹梅」や「鶴亀」など、おめでたい席に欠かせないモチーフがありますが、これらはそれぞれにそのおめでたさを表す意味を持っています。歳寒三友、千年・万年でよく知られるこれらの他、桃は長寿、石榴（ざくろ）や葡萄（ぶどう）は子孫繁栄、富貴の牡丹（ぼたん）など身近な植物を表すもの。獅子や麒麟（きりん）のような架空の動物、中国の八仙人や日本の七福神、仏教の宝物などにちなむ、ありがたい意匠も吉祥文様です。

そして、伊万里の中でも金襴手（きんらんで）と呼ばれる豪華な献上品タイプは、当然こうした吉祥が満載。将軍への献上品である鍋島焼も同様。彩りのみならず、文様の意味も華やかなのです。一方、庶民の器にも吉祥文様は浸透します。これらはずいぶんと略されて見分けるのが難しいものもありますが、蕎麦猪口の見込みに松竹梅を発見することはしばしば。吉祥の意味を離れ、自由な文様としても楽しまれています。

そこで今回は、ぜひ自宅で「おめでたい文様」を探してみて下さい。できれば食器棚の中、そこで見つからなかったらクローゼットの中でも構いません。意外なものが吉祥の意味を持つこともあるので、もしかしたら、と思ったらチェックを！そして、見つけたものを写真に撮ってきて下さい（スケッチでも構いません）。

現代の私たちの生活の中で、吉祥文様はどんな形で使われているのか、みんなで比べながら考えてみたいと思います。

（授業コーディネーター ： 嘉村 真由美）