授業レポート

2018/6/7 UP

セクシャリティ講座/恋愛結婚できないストレート

今回の授業はLGBT以外のセクシャリティ、ストレート中のマイノリティの器質(生まれ持った性質)的な部分を中心とした授業でした。
LGBT以外のストレートの恋愛や結婚についてみなさんと考えました。

村上先生は、スクリーンや資料を使わずに、黒板にチョークで図や言葉を直接書きながら授業を進めました。スクリーンや資料を使うとそれは景色の一部となってしまい、はじめから勉強した気分になってしまうので自分でノートを取るように勧められました。

先生の簡単な自己紹介の後、社会心理学についての説明がありました。
社会心理学は器質と心理の2つに分けて考えるそうですが、「今回は器質を中心に考える授業にします」との事でした。

まず、今日の目標を設定する事を勧められ、3〜4人のグループに分かれて「結婚」についてグループセッションをしました。目標を明確にする事によって学習効果が高まり、空間を共有する程目的意識が高まるそうです。
その際、①説得しない。②覆さない。③否定しない。の3つの注意点を挙げらました。

グループセッションの時に多く出た意見は同調圧力についてでした。
「どうして結婚しないの?」「早く結婚して子供産まないと!」と言う周囲の圧力が苦痛だと言う意見が出ました。

・マイノリティの苦しさは、所属出来ないこと。
・マジョリティの苦しさは、同調圧力。

「ストレート」と言われるマジョリティも自分で選んだものではない器質的なものであり、その中には「恋愛が出来ない」と言う器質的なものも存在する…ということが、徐々に明らかにされていきます。

2005年にスウェーデンのDr.サビックによるフェロモンの実験で、それまでは精神病であるとされていたLGBTが器質的なものであると証明されました。
実験は、ストレートの男女・同性愛者の男女・両性愛者の男女にフェロモンも嗅いでもらい、その反応を確かめると言うものだったそうです。
すると、ストレートの男女は異性のフェロモンにしか反応せず、同性愛者は同性の、両性愛者は両性のフェロモンにも反応したそうです。
これによってLGBTは病気などではなく器質的なものであり、治せるものでは無いと言う事が確かめられました。

LGBT以外のノンセクシャル(非性愛)※1、アセクシャル(無性愛)※2もそれぞれ器質的な問題で、他者に対して恋愛感情を抱かない、性欲を感じ無いなどの器質が存在するそうです。

※1…アセクシャル(無性愛)
他者に対して恒常的に恋愛感情や性的欲求を持たない事。
※2…ノンセクシャル(非性愛) 他者に対して恋愛感情はあり得たとしても恒久的に他人への性的欲求を持たない事。

これらの実験結果を表にすると「性はグラデーション」であることがわかります。グラデーションなのでどこからどこまでとはっきりと分けられるものではなく、どちらでもある、どちらでも無い、分からないなどの曖昧なセクシャリティも存在すると言う事になります。

先生は次に、異性愛↔︎同性愛を横軸に取り、縦軸に性自認(自分が自覚する性の形)に取った表を書きました。性自認は、性自認が一致する↔︎一致しないになります。そしてさらに縦軸に、性欲がある↔︎性欲が無い、恋愛が出来る↔︎出来ないを書き込んでいきました。その他にも、モノガミー※3、ポリガミー※4など無数の縦軸が存在すると思われます。

※3…モノガミー:単婚(一夫一妻制)
※4…ポリガミー:複婚(一夫多妻、一妻多夫など)
なお、モノアモリーは、一人と交際している間他の人とは交際しない恋愛。

ポリアモリーは、多重恋愛。 こうなると、この表はもはや平面には収まりきれず、3Dの様相を呈して来ます。
この表の中で「マジョリティ」「マイノリティ」を線引きすると、一部にストレートと呼ばれるマジョリティの中にも「どちらにも入らない」「認識すらされていない」という人達が隠れていると言う事が分かって来ます。
隠れた存在の中には器質的に恋愛出来ない、性欲が無い人達がいますが、認識されていない、あるいは問題視もされていない人達が存在すると言う事を知る事が大切だと思いました。

結論から言うと、様々なセクシャリティがあり、一人一人がみんな違っていると言う事です。

それから「好き」「恋」「愛」の違いについてグループセッションしました。
・好き=感情(ベクトルの向き)
・恋=状態(ホルモンが過剰に分泌されている状態)
・愛=関係性
愛には様々な形があって、例えば恋愛、友愛、親愛、狂愛、家族愛など沢山の種類があります。このように、感情を伴う関係性の事を「愛」と言います。
他者に対しては、この3つの感情を1つだけ持つと言うものでは無いそうです。
この3つについては良く考えてみて下さいと言う事で「宿題」にされました。
普段それ程考えたり意識する事も無く生きていますが、考え出すと深くて難しい問題です。

それから「孤独」「独立」「自立」の違いについて考えました。
・孤独=寂しいが悪いものでは無い
・孤立=支援が無い状態、いわゆる“ぼっち”
・自立=自分で独立している状態
そして「孤立」の中にも3つの孤立があり、
A、心理的(精神的)孤立…仲の良い人がいない
B、環境的孤立…家事が出来ないなど
C、経済的孤立…ニートなど
があります。

心理的孤立の中に「共依存」と言う問題があります。
依存とは略奪であり、依存の逆は相補です。
依存→自立(安全)→相補となるが、
自立とは孤立してはいないが「孤独」な状態。
相補のためにあるのが結婚法。
つまり結婚とは、社会学的には本質的に「同盟」であると言う事です。
そのため、必ずしも恋愛から結婚に至る必要は無く、様々な結婚が成り立つと言う事です。

以上の事を踏まえた上で「恋愛結婚ってそんなに大切ですか?」と問い掛けられました。

それは、一人一人違っていて良い事で、お互いが納得出来て利益があるなら「恋愛→結婚」と言う道筋は関係無く、様々な結婚が存在していて良いと言う事です。

先生の言葉で印象に残っているのは「同じ物は二ついらない」です。
全く同じ人が二人存在する必要は無く、一人一人が違っていて良い。違っているから価値があるのだと。

目を閉じて、今自分が認識している性と違う性になったところを想像してみて下さい。目を開けたら別の性になっているところを想像出来ますか?出来ないでしょう?それは自分自身で選んだセクシャリティでは無いから、変える事は難しいと言う事です。

今回の授業を受けてみて、器質的に恋愛出来ない、恋愛結婚が出来ない人が存在すると言う事を知り得たのは大きな収穫でした。
生徒さんの中には「自分は今まで結婚したくて多くの異性に声を掛けたりしていたがそれが迷惑な行為だったのではないか?と言う事に気が付きました」と言っていたのが印象的でした。

安易に「普通」とか「当たり前」と言ってしまう事や、単純に男性、女性に分けてしまう事にも疑問を持ちました。
「普通」「当たり前」と思っている世界が狭い程、悪意の無い言葉や行為で困ったり傷ついてしまう人が増えると思います。小学生くらいから教科書に載せたり授業で取り上げるべきではないかと言う意見もありました。

同調圧力によって苦しむ人が救われるためには、皆が広くセクシャリティの在り方を知り、考え、相手を尊重する事が大切だと思います。それによって、より生きやすい社会になるのではないかと思います。知ると言う事は、相手を理解すると言う大切な事です。知らないから嫌悪したり恐れたりするのではないかと思います。
先生も「マジョリティが生きやすくなる事で、マイノリティも生きやすくなる」とおしゃっていました。

本当に「今日は生徒のみなさんは眠れないのではないか?」と思う程、色んな事を考えさせられました。もっと色んな事を掘り下げて知りたい・考えてみたい、と言う意見も多く、今後の課題を残しました。第二・第三段の授業を望む声や、シブヤ大学の「ゼミ」にしても良いのではないかなどです。

生徒のみなさんはとても熱心に授業を受けてくださいました。
村上先生は終始穏やかで、みなさんが理解出来ているかなど気を遣って授業を進めて下さいました。
分かりやすく熱心な授業内容でした。 本当にありがとうございました。

(レポート:片山朱実、写真:伊東詩織)