授業レポート

2018/4/6 UP

みんなでお茶しない?
〜バリアフリーってなんだろう〜

以前、池袋の駅で、白杖をつく男性が階段横で立ちつくしているのを見ました。
「どうしたんだろう」と思いつつ、すぐに声をかけられずにいたら、近くにいた女性が声をかけて一緒に階段を上っていきました。白杖を持つ人や車椅子の人が立ち止まっているのを見るたび「あっ」と気が付くものの、その人が一人で動き出すと「たぶん大丈夫なんだろう」と自分に言い聞かせて通り過ぎてしまいます。でも本当は困っていたのかもしれない。 障がいを持つ人がどんな時、どんな助けが必要なのか知りたいという思いから、授業に参加しました。

今回の先生は9名!車いすユーザー、聴覚に障がいのある人、視覚に障がいがある人。障がいも、日々の生活や仕事も様々です。(先生の紹介はこちら


先生も生徒も、みんなで輪になってお話しました。


スクリーンの前にいるのは手話通訳の方。今回は3名が交代で通訳をしてくださいました。

先生たちの紹介の後、それぞれの障がいの視点から生活で困る「あるある」を話していただき、その「あるある」を体感すべく、チームに分かれてまち歩きをしました。




先生たちからのあるある


それぞれのチームに、各障がい(車いす・視覚障がい・聴覚障がい・手話通訳)の先生が入ります。(先生3名+通訳さん+生徒さんという構成)
歩くのは渋谷。ただでさえ人でごった返している休日のスクランブル交差点や駅、ヒカリエ、109をこのチームで歩くのか…無事に帰ってこれるか心配になりながらも出発しました。 しかし、そんな心配をよそに、チームのみんなは和気あいあいと話が尽きない様子。そこではたくさんの発見が得られました。


発見
〇車いすユーザー視点
・車いすはエレベータを見送ることが多い。たいてい上りが混んでいて乗れないので、一度空いている下りに乗ってから、上に向かうことが多い。
・車いすは立っている人よりも目線が低くなるため、前が見にくい。信号が見えない。人ごみに入ると行き交う人に気付かれなくて危険。
・わずかな段差でも車いすのタイヤがずれて方向が変わってしまう。
・坂が大変。しかも傾斜は左右にも存在する。歩いていると気が付かない傾斜や段差多し。
・地下の入り口が階段だけの場所がたくさんある。どうやって入ればいいのか。
・エレベーターで、先に乗って開くボタンを押されると入り口が狭くなって車いすが入りにくい。場合によってマナーは変わるもの。

〇視覚障がい視点
・音声情報が欲しい。「信号が青になったよ!」「その席には人がいるよ!」声をかけてもらえないとわからないことが多い。
・バスの停車駅を知らせる自動音声アナウンスが、実際の通過場所とずれることがある!降りそびれて引き返すはめになるが、反対方向のバス停位置が一人ではわからないからとても困る。
・細長い棒が並んでいる線状ブロックは進行方向を示す。〇が並んでいる点状ブロックは、そばに何かあるという警告をする。でも「何」があるのかはわからない。工事現場近くにはこの警告ブロックがあるけど、それだけだと何に注意すればいいのかわからない。
・古い点字ブロックは劣化して白杖でなぞっても感触がわからない。
・点字ブロックの上を歩かれると困る!
・点字ブロックは曲線がないため、それに従って歩くと遠回りになる。
・ガード下は周りの音が消されるので、音情報が減る。
・まちの雑踏では、救急車のサイレン等の危険を知らせる音が消されてしまう。
・白杖は高い!1本1万円位するので、踏まれて折れたら困る!
・枝が歩道にはみ出たりしているとぶつかって危険。
・舗装の凸凹に白杖がひっかかる。

〇聴覚障がい視点
・危ないときは腕を引いたり、肩をたたかれないと気が付かない。クラクションを鳴らされてもわからない。
・筆談OKと書いてある店でも、いざ頼むと嫌な顔をされることがある。
・バスで筆談OKと書いてあるところもあるが、車掌さんが運転中だと頼めない。
・写真を撮るとき、指で「3・2・1」と出してもらったりしないと、いつ撮られているのかわからない。

〇複合的な発見
・異なる障がいを持っている人同士でのまち歩きができる!車いすユーザーが「目」になり道を誘導し、視覚障がい者が「足」として車いすを押す。
・点字ブロックは視覚障がい者にとって必要だが、車いすユーザーにとっては凸凹していて段差になって進みづらい。歩道の終わりの段差も同様。
・歩きスマホをされると衝突するから本当にやめて前を見てほしい。道を譲ってほしい。

などなど。生徒さん自身が車いすにのって交差点を渡ってみたり、白杖をついて歩いたりするなど、体験したからこその発見も多々ありました。
このような「あるある」を子どもの頃から教わっていたら、クラクションを鳴らしてもよけない人がいた時に「もしかしたらきこえないのかも」と想像できるのではないか?マタニティマークのように「きこえない」「見えない」マークをつくったらいいかも!などのアイデアも出てきました。  
そして、視覚障がい者にとっては必要な点字ブロックが車いすでは段差になる等、障がいが異なると一方にとって便利なものが他方の邪魔になりうることもわかりました。「みんな」にとって便利であることは難しい。

先生の一人である大塚さんは、代表を務めるNPO法人アクセシブル・ラボで「ハードのバリアをハートで解消する」というコンセプトを掲げています。そのように、設備だけで解消できない問題は、その場で「何に困っているの?」と声を掛けて助け合うことが必要だと痛感しました。
これらの発見の一部は、リアルタイムでシブヤ大学のTwitterでも発信しました!


全く見えない?視野が狭い?小さい字は読める?

一概に視覚障がいといっても、全く見えない人もいれば、視力は失っていないけれど視野がとても狭い人もいます。視野が狭い場合だと、ものがどこにあるのか見つけられない一方で、視野に入っている小さい字は読める、ということもある。 聴覚障がいも同様で、まったく聴こえない人もいれば、補聴器があれば少し聴こえる人もいます。
視力・聴力の程度や、視力・聴力を失った時期(生まれつき、幼少期、成人後等)によっても、必要なサポートは異なるようです。

以前、駅で白杖を持っている人がiPadを操作しているのを見て「あれ、この人は見えているのかな?」と思ったことがありました。しかしそうではなく、iPadやスマホの音声機能をつかって検索したり、連絡を取ったりしていたのだと、この日の授業でわかりました。
「たぶんこうなんだろう」と勝手に思い込んでしまうと、人が困っていることに気付かなかったり、逆にひとりでできることを手伝うお節介をしてしまう。決めつけずに声をかけてみること。それは障がいのあるなしに関わらず、人とコミュニケーションをとるうえで大切なことだと改めて感じました。


「そうじゃないと、楽しくないから」

まち歩きをしている最中、白杖をつく川口さんは一緒に歩く人の腕をつかみながら歩いていました。
「そうじゃないと、楽しくないから」
川口さんは目が全く見えないわけではないけれど視野がとても狭く、信号がどこにあるか見つけられなかったり、スーパーの中で自分がどこにいるのかわからなくなってしまうことがあるそう。「だから一人の時は必死に歩く」と続けます。

通常、同行者がいる場合、視覚障がいの人は腕を借ります。
(誘導される側の背が高い場合は肩に手を置くこともあります)
  ※参考資料・日本点字図書館サイト「いっしょに歩こう ~目の不自由な人と楽しく町を歩くために~
そうすることで、障害物に衝突するのを防いだり、まわりの様子を把握することができます。

しかし、腕を借りる理由を「ぶつかって転ぶと危ないから」でも「方向が分からなくなるから」でもなく、
「そうじゃないと楽しく歩けないから」だと真っ先に言った川口さんのことが頭から離れませんでした。
腕を借りるのは、危険から身を守るためでもある (マイナスをゼロにする) けれど、
これによって、歩くという行為が楽しくもなる(マイナスをプラスにする)。
今まで、そんなふうに考えたことはありませんでした。

「助けよう」よりも「お互い楽しく過ごそう」という気持ちの方が大切なのかもしれない。腕をつかまれて歩いたときに感じたことは、ひとりで自由に歩けないわずらわしさではなく、相手の手のあたたかさでした。自分が腕を貸すだけで、誰かが楽しい気持ちになるなんてすごい。


草食動物の目をもつ

でも、まちで出会った人の目的地まで一緒に歩くのは、自分によほどの余裕がないと難しい。川口さんは、そんなときはヒッチハイクのような気持でいい、と話していました。自分の目的地があるなら、一緒に歩くのはそこまででいい。できるところまで手伝えばいい。大切なのは、視野を広げて周りを見ること。

車いすユーザーである大塚さんは「草食動物のような視野をもってほしい」と語ります。思い返せば、普段の自分は目的地にまっしぐらの肉食動物のよう。急いでいるときなど特に、自分のことしか考えていません。
とはいえ、日常生活でそんな視野を持ち続けられるだろうか。
この日のまち歩きが楽しかったのは、「一緒に歩くこと」が目的でだったからでは?用事があって急いでいたら、イライラしてもどかしかったのでは?

いつも広い視野を持つためにはどうしたらいいのか。それはバリアフリーというよりも、自分がどう日々を過ごすかという問題に思えて、まだ答えが出ていません。

1日の時間をフルに使ってタイトスケジュールを組んでいると無理なんだろうか。大事じゃないことは手放して、自分の中に、全体の1/4くらいの余裕をつくれたら、自然と周りを見渡せるんだろうか。
今の自分に必要なのは、1/4の余裕と声をかけてみる勇気。やっていくうちにそれに慣れて、声を掛け合うことが自然になるのかもしれない、と考えています。

何が正解かはわからないけど、授業を受けながら、池袋駅で白杖を手に立ちつくしていた人のことを思い出し、次は「どこに行くんですか?」って聞いてみるんだと心に決めました。

(レポート&写真:中野恵里香、写真:松田高加子、菅井玲奈、菱山久美、吉川真以)  




協力:
NPO法人 アクセシブル・ラボ
障害者目線で広く一般市民及び何らかの障害をもつ人々に対して、バリアフリー、アクセシブルな環境づくりの提案及びその情報提供、並びに心の教育に関する事業を行い、障害の有無に関わらず、みんなが笑顔で楽しく外出できる社会づくりを目指し、様々な活動を行なっているNPO法人。


一般社団法人 ありがとうの種
誰もが「ありがとう」をもらえる社会を目指す、当事者の当事者による当事者問題解決を支援するプラットフォーム。空間を彩る手話を魅せるスープカフェ「Social Cafe Sign with Me」や、手話でいきるこどもたちのための放課後デイサービス「あ〜とん塾」などを運営している。

 




   本授業はTokyo Good Manners Projectとのコラボレーション講座です。


  TGMPでは、東京で暮らす一人ひとりが自分たちのグッドマナーに誇りを持ち、
  東京を訪れる世界中の人々に文化としてのグッドマナーを楽しんでもらうために
  “TOKYO GOOD“というコンセプトを掲げ、さまざまなアクションを
  起こしていきます。