シブヤ大学

授業レポート

2018/2/19 UP

繕(つくろ)うアート ~ダーニングの魅力

今回はイギリスをベースに活動するニットデザイナーの野口さんを先生にむかえ「ダーニング」を学びます。
先生がダーニングと出会った思いで話も交えつつ、和やかにダーニングの説明がはじまりました。

「ダーニング」とは、ニットなどの修復の手法です。穴が開いてしまったり、染みができてしまったところに縦糸と横糸を織り込んで覆います。
ふつうは見えないようにお直しするのですが、先生が紹介するのは「装飾ダーニング」という見える形でお直しする手法。
カラフルにダーニングされたセーターは、まるで新しくデザインされた作品のようです。

この「ダーニング」に使うものは、ダーニングマッシュルームと針と糸です。
ダーニングマッシュルームとは、木でできたキノコ型のコロンとした道具です。今回は先生がかわいいコンパクトなダーニングマッシュルームをご用意してくださいましたが、もしもなくても大丈夫!ひょうたんや電球、こけしの頭でも代用できるそうです。
針は、クロスステッチ針、ニットのとじ針、フランス刺繍針などを糸通し穴の大きさや針先のとがり具合などと修復する生地や使用する糸との相性で選ぶとよいそうです。
糸は、コットン・リネン・ウールの刺繍糸、ラフィア、モヘア、毛糸、ラメ糸など直すものの用途に合わせて、柔らかさや丈夫さも考えて選ぶと良く、モヘアは冬のイメージですが丈夫な繊維で発汗性も良いので夏場の靴下のダーニングにもおすすめだと先生のアドバイスもありました。

説明が終わったら、いよいよ作業開始です。
まずはたくさんご用意いただいた中から持参したニットに合う糸を選びます。
毛糸にモヘアに刺繍糸、ラフィアやラメ糸とたくさんの糸とニットを合わせて、「こっちのほうがいいかな?こっちかな?」と生徒さん達は楽しそうにワイワイと悩まれていました。
先生のデモンストレーションが始まると、先生の近くに集まって真剣に作業を見学。
ダーニングマッシュルームのてっぺんに修復したい穴を持ってきて、少しきつめに引っ張ってキノコの軸にゴムを結んで固定します。
上下左右を決めたら、縦糸を張っていきます。
最初のひと目は穴の右上5mmくらいのところから刺し始めます。ふため目は右下に。マッシュルームの向きをくるんと変えて常に右から左(右利きの場合)に刺していきます。
穴が覆われたら、今度は横糸です。 穴の5mmくらい外側から縦糸を上下交互にすくい取って織り込んでいき、端まで来たら生地をひと目拾います。
ここで注意するのが下の生地を拾わないことと縦糸を割らないこと。
端まできたら糸始末をして完成です。
マフラーなどは裏側からも行うと穴が覆われて見えなくなります。

黙々と作業に没頭すること1時間。
小さな穴を修繕していた方々はひとつ目が完成していきます。
ひとつ完成するごとに先生が作品を持ち上げてみんなに作品をお披露目してくれます。
「かわいい」「おつかれさま」などと声を掛け合い会場に一体感が生まれていました。
ひとつ目が終わる頃には作業にも慣れてきて、気持ちにもゆとりが生まれ、近くの席の方々とおしゃべりしながら針をすすめられており活気ある和やかな空気が流れていました。

今回生徒のみなさんが持参したお気に入りのニットは、セーター、ワンピース、靴下、タイツ、子どものズボンなど。
「20年来ていたニットが復活してうれしい!」
「高めのタイツも恐れず買えるようになるかも」
「ていねいに暮らす、とてもうれしい時間でした」
などの感想が聞かれ、
ダーニングされてかわいらしく姿を変えたそれぞれのお気に入りのニットを手に大満足なのがみなさんの笑顔に表れていました。

すきま時間にできて幸福度が高くなる「ダーニング」、編み物が苦手な方でもすてきな作品が完成させられるかも?!
まだまだ外は寒いこの季節。あたたかいお部屋の中でお気に入りのニットをダーニング。来季に向けて生まれ変わらせてみるのはいかがでしょうか。

(レポート:角 佳子、写真:高木夕子)