シブヤ大学

授業レポート

2017/7/5 UP

映画を観るだけで終わらせない!
映画でつながる、新しい場づくり

日常的に映画を観るのが好きな人は、おのずと映画館にも足を運んでしまう。
なぜなら、劇場で味わえる体験もまた、そこにはあるからだ。

たとえば、1つの作品が終わり、エンドロールが場内に流れた後。
パッと場内は明るくなり、映画の世界観とは異なる、今まさに私たちがいる現実がまじまじと姿を現すわけだが。
なぜか観る前と後では少し現実が変わっているように思える。
人は、映画という「心揺さぶられる」エンターテインメントを前にして、この感情を1人で消化しきれいない。
誰かと共有したいという感情が沸き立ってしまう。
しかし、自己完結をさせない映画とのかかわり方はあるのだろうか。

今回は、kino(映画)+dialogue(対話)=kinologue(キノローグ)という切り口から、実際に映画と対話を合わせた企画を考える授業が行われた。
kinologueとは、ドイツ語で映画をさす「kino」と対話を意味する英語「dialogue」を合わせた造語であり、映画を観た後に各々テーマに合わせて対話し学びを深めていく活動だ。

まず、この言葉が生まれたキッカケなどを、本日の先生である森下詩子先生からお聞きしながらkinologueの実践例を振り返った。



映画の配給宣伝を行っていた森下さんは、自分が長年手がけて公開した作品がどのように人に伝わったのか掴めない葛藤があった。そんな折に、フィンランドで得た「映画が学びになる」という体験からkinologueをスタートさせた。
ここでいう「学び」とは変わることである。
映画を観た前と後で変わる変化を、対話によって更に深めていく。
つまり、対話できるテーマや場づくりが企画者には求められる。

森下さんが企画する上で大切にしているポイントは次の5点だ。

 ①  自分事になるテーマがある作品選び
 ②  映画の知識は必要なし(できるだけ映画から離れる)
 ③  一人参加をオススメ
 ④  対話のルール(耳を傾け、否定しない、言わないのもアリ)
 ⑤  学ぶこと=変わることの「芽」をつくる

実践例では、森下さんが過去に開催した様々なワークショップが紹介され、どれもユニークなものばかりだった。

後半からは、いよいよ「自分で開催してみたいkinologue」を考え提案していく。
最初は個人で企画を考え全体で分かるように貼りだし、今度は自分が開催してみたい企画を選び、グループでより詳しく企画を練り上げ、全体発表を行った。



参加者からは、映画に出てくる食事を実際食べる「おいしい映画祭」から、リメイク作品とオリジナル作品を比較してみる企画、『シンゴジラ』でゴジラが通った経路上で、どこに避難すれば生き残れるか実際に歩きながら考える企画など、幅広い案が出た。

それぞれ先生からのリフレクションをもらいながら、この企画を「実際に」行うためにはどうしたらいいのかという核心に迫った。
まず上映したい映画の権利者を探し、作品によって異なるが、上映規模に合わせた上映料を権利者に支払うこと。上映できる場所と人数を確保することが重要になる。

最後に。
森下さんはkinologueを通して、映画の魅力を伝え、新たな場づくりが出来たらと語っていた。
映画は「多様性のドア」。
もしかしたら映画の世界のように、たった一言、たったワンシーンで、今ある日常さえ変わっていくかもしれない。
そんな可能性をkinologueに感じた授業だった。



(レポート:清水佑華、写真:野原邦彦)