シブヤ大学

授業レポート

2017/6/17 UP

車いすでお茶しない?

今回の先生は、大塚 訓平さん(株式会社オーリアル 代表取締役、NPO法人アクセシブル・ラボ 代表理事)、そして「アクセシブル・ラボ」メンバーの是永 小百合さん、千葉 俊之さん、野崎 圭一郎さんの4名です。
当日は激しい雨だったため、安全性を考慮して敷地内での車いす体験となりました。

授業内容は、はじめに車いすユーザーの現状のお話、NPO法人アクセシブル・ラボの取り組みについてのほか、実際の車いす体験、質疑応答の流れになりました。

プロローグ:車いすユーザーの現状について

393.7万人(全人口の3.1%)という数字は、横浜市の人口を上回るほどの人数だそうで、このうち車いすを使用される肢体不自由の方々は約200万人(全人口の1.57%)と一番多いそうです。
車いす使用者の方が日頃の生活で不便に感じられていることは様々です。

①住環境問題:段差、手すりの位置、部屋の面積、ドアの位置等
②外出環境問題:外出手段の確認・確保、使用可能なトイレ場所の確認、宿泊利用が可能な宿の確認等
③就労環境問題:雇用手当問題や職場環境の問題等

『行きたいところ』よりも『入れるところ』。
本当に必要としている情報とは… ”画像” ”数値” ”welcome”。



NPO法人アクセシブル・ラボとは、どんな取り組みをしているのか?

大塚さんは、車いすユーザーや、そのご家族様が日々直面している様々な社会的制約やバリアを取り除く為、「住環境・外出環境・就労環境」の3つの環境整備に取り組んでいます。特に、外出する機会を創出するサポートをしていくことで、社会参加・就労意欲向上に繋げることにご尽力されています。

このほか、今回のような講演会・研修事業や覆面調査なども実施されています。


実際に車いすに乗って、体験してみよう!

車いす体験をする前に、先生方の車いすのお話や、車いすでありがちな体験などのお話がありました。 車いすによって、電動・手動の違いからハンドルに特徴があるものや・・・・、
折り畳みが出来るものや出来ないものや、電動車いすでも、モータ―の違いなどがあります。










いよいよ、車いす体験です!!まずは車いすの用意をします。  
 
 
経路は、会場入り口から多目的トイレまでを往復します。



スタート!入口を出ます。



慣れないスロープはゆっくり慎重に…!廊下を渡ります。
車輪が点字ブロックに引っかかりやすいので注意です。



角の方向転換が難しい! 到着しました!

多目的トイレの中では、手すりの形状や位置、便座へのアプローチの他、洗面台の高さ、鏡の形状などの違いを学びました。障害の種類や程度によっては、設置された機器が使いづらい・使えないということがあることもあり、誰にとっても完璧なバリアフリーを創ることは不可能と言えそうです。


 
一通り、お話を聞いた後、会場入り口へ戻ります。
帰りのスロープをのぼるのが大変です!入口の自動ドアもあるため、車いす操作が難しいです。



グループごとに車いす体験をしている間、質疑応答の時間がとれらました。
是永さん、千葉さん、野崎さんに、外出先での出来事や、通勤時のお話など、ひとつずつ丁寧に答えていただきました。その一部をご紹介したいと思います。

トイレ
・多目的トイレに折りたたみ式のベビーベッドがある場合が多いが、良かれと思って畳まない人がいる。でも、筋力がない人がトイレを使う場合、畳めないのでとても不便。”便利か便利でないか”で考えるんじゃなくて、”可能か可能でないか”で考えて欲しい。

エレベーター
・エレベーターに乗る時は、一度は見送ることが多い。(先に乗せて欲しいか?という質問に対して)みんな順番だから、待つのは普通なこと。でもたまに順番を抜かす人がいる。それはマナーとしてどうなの?と思う。
・乗る時は、中が空の状態で乗り込みたい。勢いをつけて乗るので、人が居るとぶつかってしまうことがある。

電車
・電車は手すりにつかまっていないと揺れるので、手すりにつかまりたい。
・乗り降りでスタッフを呼ばないといけないので、過去に最大40分待ったことがある。
・道案内のアプリより、30分くらい多めに時間をみて動いている。
・「永田町で乗り換えてはいけない」が、車いすユーザーでの合い言葉。


・トイレやお風呂は、乗り移る用の椅子を用意している。湯船は浸かれない。
・お風呂のドアが閉められないので、シャワーカーテンでしのいでいる。

買い物
・たくさん持てないので、最近はネットスーパーを利用している。
・試着が大変なので、普段着ている服を持って行って、「これと同じサイズをください」と言うこともある。
・スロープの途中で自動ドアがあると、坂で止まらなきゃいけないので踊り場があるといいなあと思う。気付いたらぜひ、ドアを開けておいてくれると嬉しい。


今回、車いす体験をしていくことで、バリアフリーの重要性や現状などを目の当たりにしました。今回の体験を通して周囲の環境への視野が広がったのではないでしょうか。互いに声を掛け合い、多様性を受け入れることで、物や環境だけでなく、心のバリアフリーに繋げていきたいですね。

合言葉は、「ハードのバリアをハートで解消する。」

(レポート:岡田智美、写真:竹内七重)





 
協力:NPO法人 アクセシブル・ラボ
障害者目線で広く一般市民及び何らかの障害をもつ人々に対して、バリアフリー、アクセシブルな環境づくりの提案及びその情報提供、並びに心の教育に関する事業を行い、障害の有無に関わらず、みんなが笑顔で楽しく外出できる社会づくりを目指し、様々な活動を行なっているNPO法人。

 




 本授業はTokyo Good Manners Projectとのコラボレーション講座です。


  TGMPでは、東京で暮らす一人ひとりが自分たちのグッドマナーに誇りを持ち、
  東京を訪れる世界中の人々に文化としてのグッドマナーを楽しんでもらうために
  “TOKYO GOOD“というコンセプトを掲げ、さまざまなアクションを
  起こしていきます。