シブヤ大学

授業レポート

2017/5/15 UP

オーダースーツから考える「わたし」

今回の教室は、cocoti 5FのUNIVERSAL LANGUAGEでした。

綺麗にスーツが並んだ会場に入ると、少し背筋が伸びるような気持ちになります。
いつもはなかなか来る機会のない会場の雰囲気に緊張しながらも、徐々に会場に人が増えていきました。

先生である石田さんの「こんばんは!」という明るい声のもと、授業がはじまります。


授業は、スーツの基礎知識を学ぶ「座学」、オーダースーツを通して自分のことを考えてみる「ワーク」、そして、実際に生地やボタンを選んでみる「実践」の3部構成です。


座学では、スーツが大きく2つの種類があることを学びました。

イギリスのブリティッシュスタイルは「渋めの色柄でカチッとした鎧スタイル」。
そしてイタリアのナポリスタイルは「発色のよい色気のある生地の柔らかなスタイル」。
それぞれ実際にマネキンが着ているスーツを見ることで、違いを確認していきます。




「雑誌では正統派コーディネートが参考になります。
 お店のスタッフはやりすぎなところもあるので参考にならないこともあります」

すぐに使える着こなしのポイントを「柄は2種類・色は3色・ほどよくトレンドを取り入れる」と
紹介してくれた石田先生。「ほどよいトレンドって何ですか?」という生徒さんのコメントには
雑誌のコーディネートを参考にしてみるとよい、とアドバイスがありました。

生徒さんはそれぞれ、手元でメモをとりながら熱心に聞いていました。


話は、今回のテーマである、オーダースーツの紹介へ。

石田先生にとってオーダースーツとは、をこうお話していました。

「日々の生活を豊かにするもの。自分だけの1着に袖を通した時の高揚感があります。
 今日は少しでもオーダースーツのことを知ってもらえたら」


はじめに、実際にどんなお客さんが来るのか、どんな風に相談に乗っていくのかを寸劇で紹介してくれました。どんなスーツを持っていて、これからどんな風に着こなしたいのか、
その人自身の思いを聞き出していくのが石田さんの仕事です。

「せっかくオーダースーツですし、普段は着ないこの色味に挑戦するのはどうでしょう?」
と少し背中を押すやりとりが印象的でした。


UNIVERSAL LANGUAGEでは、3Dスキャンの独自の技術を開発し、
お客さん1人1人アバターを製作します。



それによって、1つずつ着替えずとも、パネル上で着せかえをすることができるんです。
希望者の生徒さんが、3Dスキャンの体験を行うと会場からは「すごい!」と歓声が。


ここからは後半の実践に向けて、今回の授業タイトルにもある自分について考えるワークです。
まずは、自分自身で「今持っているスーツ」「どんな自分になりたいか」を考えます。



ここから、2対1のペアになって自分がどんなスーツを着たいか、どうなりたいかを話します。
1人で考えていたときの静寂とは打って変わり、お互いの話をするのに盛り上がりました。

今回の授業の参加者は、なんと半分が女性!自分自身を表現するツールである服への関心が伺えます。
実際にどうして参加したのか、男性・女性それぞれの方にお話を伺いました。

まず男性のご意見は「若いけどしっかりしてそうだという印象を与えるためには、どんな色や形、素材を選ぶべきか学びたかったため」と答えていました。

また女性は「背が小さく顔が童顔なため、せめてスーツをしっかり着てお客様に安心感を与えたいため」とのことでした。いずれも「わたし」の見え方を、見栄やエゴではなく、ビジネスツールとして、また自分を知るためのヒントとして捉えているようでした。


自分がどうなりたいか、イメージを膨らませた上で、実際にオーダースーツを作る過程を体験してみます。
ここから、チームに分かれて、実際に型・生地・裏地・ボタンを選びます。


数ある裏地やボタンから「選べない!」という声も聞こえながらも、皆さん参加者同士で話したり、
先生に「この裏地に合うものはどれでしょう?」と相談をしながら、考えていきます。



最初の緊張が嘘のように、会場は和気藹々とした和やかな雰囲気に包まれていました。

もう一度、2人組のペアに戻って、どんなスーツができたかをそれぞれ共有し、最後には全体で自分の考えたスーツを発表しました。思いが違えば、できるスーツも異なるように、16名それぞれのオーダースーツができました。


最後に、先生からメッセージが。

「オーダースーツは自分だけの特別な思いを込めた1着を仕立てる喜びがあります。
 既製品にはないフィッティングを楽しんでみてください。」


私自身は、先生の「正統派」「一生もの」という言葉が印象的でした。

普段服を選ぶ際に正統派を意識することも、一生ものを意識することもありません。
しかしオーダーメイドをすることにより首筋が伸び、
凛と生きるような意識に変わるのだろうことを改めて感じさせられました。

「オーダーメイド」に関して、普通なら学ぶ機会などありませんが、
今回のように座学で学ぶ機会は非常に有効だったのではないかと思います。

会場がショップであり、実際販売されている方の声を、じっくり聞かせて頂ける……

大人のキッザニアではありませんが、お店シリーズの授業の魅力を感じました。





(レポート:浅井由起子 / 写真:田中健太)