シブヤ大学

授業レポート

2017/4/3 UP

わたし、ダンスで人生変わりました
〜元経理 くはっちの、記号カラダンス〜

「自分表す記号を体で表現してみてください」といきなり言われて、思わず日本酒を持つ姿を表現してしまった…。
でもこれが私らしさなのかもしれない。お調子者なんだなぁ。

これは、「わたし、ダンスで人生変わりました~元経理 くはっちの、記号カラダンス~」の冒頭で、自己紹介をする時に「私を表す記号」を考えていた時の一コマです。
授業の冒頭に参加者全員で輪になって名前と自分を表す記号を表現し、その人らしらが垣間見えました。
登山や、自転車などのスポーツを表す人、楽器を弾く姿や歌う姿の人。
楽しそうにやる人もいれば、恥ずかしそうにやる人。色々な人がいました。

伝えようと一生懸命な表現者と、感じとろうとじっと見守る受け手の温かい視線をみて、
「あー、コミュニケーションって思いやりなんだぁ」
と、改めて感じました。

今回の授業は、授業コーディネーターと、ストライドクラブという精神障害の人のため活動施設で働く原さんが話している中で生まれました。
ストライドクラブのメンバーは「友達が欲しい!」と思っています。ただ、詳しく聞いてみると、「友達」の定義が、毎日電話をしたり、悩みがあったらいつでも相談したり、そんな青春ドラマのイメージを想像しているようです。その話を聞いた2人は「そんなら私たち、友達1人もいないよ!」と突っ込みましたが、じゃあ改めて友達ってなんだろう?と考えた結果、難しく考えず、みんなでコミュニケーションをとってみたらいいんじゃない?ってことで、ストライドクラブのメンバーと一緒に記号カラダンスをやることになりました。


記号カラダンスってなぁに??


これは、自分の好きなものや、今日食べたものなど、テーマを自分の体で表現すること。
音に合わせて自分の記号を作るのですが、限られた時間で考えるからかその人らしさが飛び出します。
同じものでも表現者が変われば記号も変わります。そこには正解も不正解もありません。

もともと、くはっち(今回の先生)がダンスを始めたきっかけが、会社での人間関係に悩み、人生どん底な状態となってしまったことでした。そんな時、ふと目にした「ダンスワークショップ」のチラシに興味を持ち、気分転換のつもりで参加してみると、思いのほか楽しく、ダンスの持つエネルギーに元気をもらいます。

そして続けていく中で、自分の心次第で人生は楽しくなることを学びます。
働いていた時よりもお給料は激減したけれど、自分が心から楽しめることをしていきたい!と、ついには仕事を辞めてダンスの道で生活していくことに決めました。 電気や水道が止まったり、大変な日々もありますが、会社員として働いていた時よりも心は豊かで、笑顔も増えました。
そう話すくはっちの表情はキラキラしていて、働く上で大切なことは人それぞれなんだなと感じました。


それではみんなでレッツダンス♪


そしていよいよみんなで記号カラダンス!まずは円になって自己紹介。名前と自分を表す記号を一緒にやって、みんなで記号を真似します。リズムに合わせて体を動かすと、体だけでなく心もだんだん解れてきます。初めは緊張していたみなさんも、だんだんと笑顔が出てきます。

今度は自己紹介にプラスアルファ好きなものを体で表現していきます。手話でチョコレートを表現する女の子、全身を使ってお餅を表現する人、牛乳パックを表現する人。たくさんの記号が生まれます。中にはカウントをはみ出したり、記号が途中で変わったり!
でも、枠にとらわれない自由な発想のおかげでたくさんの笑顔が生まれました。

私はダンスが苦手で人前で踊るなんて!!と思っていましたが、円になって自分の好きなものをみんなが笑顔で表現してくれているのをみて、他の人のダンスも楽しく踊りたいと気が付けばノリノリで参加していました。名前は思い出せないけど、何度もダンスを踊ったので「海老の人!」「お煎餅の人!」と勝手に会話が生まれて、まさに記号カラダンスは「コミュニケーションの導入部分」だなぁと思いました。

授業の最後には全員でくはっちが教えてくれたダンスを踊り、ハイタッチと握手をして回りました。
その時の様子は誰に障害があるのかなんで全くわかりません。
みんなで楽しくわちゃわちゃすれば、障害は個性になるんだと思います。

今回の授業は、Tokyo Good Manners Projectとのコラボ授業だったので、冒頭にマナーってなんだろう?という問いがありました。
みんなが居心地が良いように、風邪を引いたら周りの人に移さないようマスクをする。生産者に対して感謝の気持ちを込めて「いただきます」という。こういったちょっとした心遣いがマナーであり、一人ひとりがグッドマナーに誇りを持ち、日本の文化としてのグッドマナーを楽しんでもらうというのが、Tokyo Good Manners Projectのコンセプト。やっぱりコミュニケーションって思いやりなんだぁと再認識しました。

「おもてなし」の心も素敵だけれど、「もてなす人と、もてなされる人」に分かれてしまう感じがする。
それよりも「お・も・い・や・り」「思いやり」の方が、これからの社会を豊かにすると思います笑


難しく考えるのではなく、「自分と相手は違う」ということをベースにそれぞれの心地よさでコミュニケーションをとることを大切にしていきたいと思いました。

(レポート:伊藤扶美子、写真:吉川真以)






  ストライドクラブとは、精神障がい者のための“クラブハウス”を運営し、
  ハウスを維持していくために必要な仕事を
  メンバーとスタッフの共働ですすめています。
  様々な活動を通じて、メンバーが自分の価値目的を取り戻し、
  社会参加の道を模索していくことを支援しています。

 




 本授業はTokyo Good Manners Projectとのコラボレーション講座です。


  TGMPでは、東京で暮らす一人ひとりが自分たちのグッドマナーに誇りを持ち、
  東京を訪れる世界中の人々に文化としてのグッドマナーを楽しんでもらうために
  “TOKYO GOOD“というコンセプトを掲げ、さまざまなアクションを
  起こしていきます。