授業レポート

2017/1/31 UP

日常と地続きのフェス「西荻ラバーズフェス」を創る人達と街との関わり方を考える

「本気の愛着さえあればいい!日常と繋がるフェスのつくりかた」

 みなさんは、「自分が住むまち/生まれ故郷の魅力を伝えるイベントをつくりたい、まちづくりがしたい」と思ったこと、ありませんか?私はそう思ってまちづくりワークショップや関連イベントに行くも、日常に還元されぬまま何も変わらない、なんてことを繰り返していました。
 でも、高橋成彰さんが実行委員長として開催している西荻窪のお祭り「西荻ラバーズフェス」*は、打ち上げ花火のような一過性のイベントとはならずに、そこで生まれた繋がりを日常生活にも繋げ、より深く西荻と関わり始める人も多いとか。

*西荻ラバーズフェス
   今年2年目の開催となる「西荻を愛する人達へのフェス」
   http://nishiogi-lovers.com/


なぜそんなことができるのか?疑問を晴らすべく、授業に参加してきました。

30名弱いる生徒さんの中で西荻窪在住の方は4~5名。西荻に住んでいるからもっと深く関わりたい、西荻在住ではないけれど他の地域でイベントのディレクションをしているから運営ノウハウを知りたい、高橋さんのつくるキャンドルイルミネーションのファンだから話を聞きたい、まちづくりについて知りたい、と参加動機は様々です。



 授業は、前半で実行委員長である高橋さんからフェス開催に至るまでのストーリーを、後半で現在実行委員である4名の方々から其々のフェスとの関わり方をお話いただきました。
 かつてはメカニックとして輸入車のインポート会社で働いていたという高橋さん。幼稚園のころから憧れていた職業に就き、駆け抜けた11年間は突然一変します。なんと会社が負債20億(!)を抱えて倒産。


 無職となった高橋さんは、アメリカ・アリゾナに渡ります。そこでお土産にキャンドルを購入したことをきっかけに「幸せな人生を送る方法」について考え始めました。メカニックとして整備していた高級車のエンジンは一部の富裕層に刺激を与えてはいたけれど、そこに切実な感謝はあったのだろうか?一方で、余裕が無い人や自分のことで精一杯の人の気持ちが少しでも安らぐようなことが、キャンドルならできるんじゃないか。そこで生まれる本気の感謝が人生を幸せにするんじゃないか。そうして高橋さんは2010年からキャンドルアーティストへと転身します。


 そして使い勝手のいいアトリエを探し、物件を見つけたのが西荻窪でした。


高橋さんの経営する「Greenbecks」
http://g-becks.com/candle/


 オープンしたお店で飲み会を開催して近所の友達が増えたころ、商店会から秋のお祭りにお店近くの児童公園で行うキャンドルナイトを依頼されます。そのキャンドルナイトは好評で、今度は同じ場所でイルミネーションを行うことに!商店会の協力を得て準備したイルミネーションは、2か月半寒そうな児童公園に明かりを灯し、近所の方にも喜ばれました。


 
西荻南児童公園「サクラ」「ケヤキ」「ヤマボウシ」の三本の樹に、イルミネーション装飾を施した「ひかりのにわ」。
http://hikarinoniwainfo.wixsite.com/nishiogi

 すると撤去後、一人の男性が高橋さんのお店に入ってきて一言、
「公園、とても綺麗でした。毎日、仕事帰りに公園の光に癒されていました。ありがとうございました」
 その言葉を聞いた高橋さんは、アリゾナで得た思いがひとりよがりでなく人に伝わったと感じて、震えました。その時、自分なりの「幸せになる方法」がようやく形になりそうだと考え、一晩で企画書を作成。それを近所の知り合いに見せると、一週間で10人が一緒にやりたいと名乗りを上げました。


そうして2015年、西荻ラバーズフェス実行委員会が結成されました。
 実行委員のメンバーには、西荻に住む人、職場がある人、かつて住んでいたけれど今は離れて週末に訪れる人もいて、関わり方は様々です。


 でも、実行委員をやり始めてからの変化を伺うと、口々にまちとの関係が密接になったと語ります。


「西荻がまちから「村」に変わった」という装飾担当の矢口さん。道を歩いただけで次々に知り合いに会うんだとか。ほんとに、村のような近い距離感ですね。


高橋さんも初めてお祭りに参加した時、あの子のお母さん・あの人の彼氏…と、これまで見えなかった人間関係が見え、まちの解像度が上がったと話していました。

 商店活性担当の中村さん(半年前まではOL、今では西荻にあるスナックのママ!)は、
「前まではこの店に行ってみたいけど行きづらい、っていうのがあったけど、今は誰かにそれを話すと「その店の人は知り合いだから一緒にいってみる?」と言ってもらえて。それでそこに行くとまた新しい知り合いができて、ってどんどん知り合いが増えていくんです」と話します。

 昨年のフェスには2万人をこえる来場者が訪れ、出店店舗は76店舗にも及びました。規模拡大を目指さしていないにも関わらず、沢山の「西荻ラバーズ」の共感を得ているのは、西荻という場所、そこにいる人に愛着を持つ人たちがつくっているからかもしれません。

 授業の後、隣にいた生徒さんに感想を聞いてみました。
「今日来たのは、今関わっている渋谷でのイベントの運営の改善やスタッフを集める方法を知りたいと思ったからでした。でも、高橋さんたちの話を聞いていて、そういえば私、(品川区小山にある)西小山が好きだなぁって思い出したんです。住んだり働いたりしてないけど、そこにあるお店とか商店街の雰囲気が好きで、時間があるとつい足が向く。西小山の人ともっと関わりたい、と思いました。」




 人それぞれ、愛着のある場所は違います。自分の足がつい出向く、居心地のいい場所でしか日常と繋がるイベントはできないのだと思います。自分が行動に移せないのは、大して好きな場所じゃないからかもしれない。お店や公園、道…自分が好きな場所と今の自分ができること・やりたいことを掛け合わせて、小さく実行してみる。その輪が自分の友達からそこに住む人たちへと少しづつ広がって、まち全体のイベントへと育っていくのではないでしょうか。


私も自分が愛着をもてる場所をもっと増やしていこう、そんなことを考える授業でした。



☆「わたしは西荻が好き、もっと西荻に踏み込みたい!」という方は、まずは3月19日開催の西荻ラバーズフェスにボランティアスタッフとして参加してみませんか?
http://nishiogi-lovers.com/2016/12/27/volovers/

☆西荻ラバーズフェスティバルH.P.にも、別の視点から当日の授業の様子がレポートされています。こちらもぜひご覧ください。
http://nishiogi-lovers.com/2017/01/22/shibuya-univ/

(レポート:中野恵里香 写真:大竹悠介)