シブヤ大学

授業レポート

2017/1/13 UP

世界最古のワインってどんな味?
―ワイン発祥の国、ジョージア―

「世界を食べるゼミ」主催の授業、今回は「世界最古のワインってどんな味?」をテーマに、黒海やロシアのお隣の国「ジョージア」にクローズアップしました。

食べることに加えお酒を飲むことも大好きなゼミのメンバーが、世界で最初にワインが作られた国がジョージアという事を知ったのをきっかけに、授業計画を立ち上げました。今回はジョージアの料理と一緒に現在ジョージアで作られているワインを飲んでみたい、ということでゼミとしては初めて授業でワインの試飲に挑戦です。

今回の講師は、現役の在日ジョージア大使館一等書記官であるピクリア・ゲキゼさん、そしてご主人であるニコロズ・ショニアさんです。試飲するワインのチョイスもこちらのお二人にアドバイスいただきました!

授業はまずゲキゼさんによるジョージアについての講義から。街の様子や自然風景などを映したジョージアの紹介ビデオを流し、国のイメージを軽くつかんだ上で講義は進みます。





<文化・宗教>
ジョージアはヨーロッパ最初の文化発祥地。旧首都の地域は、街ごと世界遺産に認定されています。シルクロードが通り、ヨーロッパとアジアの文化が混じりあっています。
キリスト教・ユダヤ教等の教会・建物が街に混在しています。

<自然・環境>
ヨーロッパで最も標高が高く、国土は小さいけれど、山・海・砂漠がありとても自然豊か。一日の内に海でリゾートを楽しんだ後、山でキャンプやハイキングも出来てしまうような立地だそうです。

<お酒>
古代ワイン発祥の国ジョージア!ジョージアのワインは、ワインをクヴェリという素焼きの壺に入れ、地下に埋めて発酵させる製法でつくられています。壺は大人の身長ほどの高さのものや、中に入って人が掃除できるくらいの大きさのものがあります。壺一つで、1tもの量のワインが作れてしまうそうです。このクヴェリによるワインの製造方法は、2013年に世界遺産に登録されています。また一般の家庭で自家用ワインを作る習慣もあるそう。ワインの搾りかすで作る蒸留酒「チャチャ」も愛飲されています。度数は40℃~80℃と、火がついてしまうほどの高さ。風邪を引いたときには、チャチャに胡椒を入れて飲み生のにんにくをかじる、という凄い民間療法があるのだそうですが、ゲキゼさんも風邪をひいた際、ショニアさんに勧められて試してみたところ本当に治ったそうです!

<料理>
料理にも多様性が見受けられるジョージア。9つの地方でそれぞれ異なったタイプの料理を楽しめるそうです。またチーズをとにかくよく食べるお国。ジョージア全土で300種類のチーズが存在し、西側の地域だけでも100種はあります。「ハチャプリ」というチーズナンのような料理が、一番ジョージアで有名な料理。上にチーズと卵を乗せたり、中にチーズを織り込んだり…と同じ料理でも地域によって様々なバリエーションが存在します。

<食事・お酒の楽しみ方>
「スープラ 」 という食事会を、ジョージアの人は良く開催します。一度にズラッとテーブルに並べられた料理を好きなように食べるスタイルです。毎回スープラには「タマダ」という幹事の人を決め、乾杯の際にはタマダが5分位長く挨拶をし、他の人にもその順番をどんどん回していきます。お祝い事の際にももちろん乾杯をしますが、各お祝い事によって乾杯のバリエーションが存在します。ジョージア人、特に男性にとってはこの乾杯がとても重要だそうです。日本にもそういった盃はありますが伝統的なお酒用のグラスは角笛のような形をしており、簡単にテーブルに置けない形になっています。

<季節の行事>
クリスチャンの国なので、春には卵の飾りやケーキを作りイースターをお祝いします。秋のぶどうの収穫時にはチュルチヘラという、くるみを紐に通し、煮詰めたぶどうジュースに通して固めたお菓子を作ります。見た目はサラミの様で自分で切って食べます。硬めのぶどうグミの中にくるみが入っているといった味で、添加物を使用していないとても体に優しいお菓子です。新年には、ナッツとはちみつで作ったお菓子を食べて祝います。

講義がひと通り終わり、質問タイムに入ります。以下のような質問をいただき、ゲキゼさんとショニアさんに回答していただきました。

<Q:現代のジョージアの人はどんな生活をしている?>
A:例えば、スープラも昔ほどの回数では無いが若い人も開催している。親戚や祖父母の集まりとして開かれる。

<Q:チャチャはどんな風に蒸留している?>
A:一回蒸留しただけだと度数があまりにも濃いので、蒸留の回数を調整し度数を調整している。

<Q:ジョージアの人の主食は?>
A:朝昼晩必ずチーズを食べます。

<Q:ジョージアの人はお酒に強い?>
A:基本皆強い。瓶ではなく「リットル 」単位でのむ。「ドラフトワイン」というのも存在する。

<Q:ジョージアで今流行っていることは?>
A:ジブリなどの日本のアニメが人気。音楽はEDMのようなクラブミュージックが好まれている。スポーツはラグビーが盛んで最近日本のチームとも試合をした。文学では村上春樹の作品がジョージア語に訳されて出版されている。

<Q:どんなチーズの種類がある?>
A:スーグニというチーズが有名でモッツァレラやフェタチーズに似ている。ハチャプリの材料に使われている。
日本に来てからは手に入らず、別のチーズでハチャプリを作ってみたがやはり味が違った。

<Q:ぶどうの品種は?>
A:国全土で800種ほどある。気候・地域により様々。
クバンチカラという地域で採れるぶどうで作られるワインはとても貴重で手に入りにくい。


質問タイムも終わり、いよいよ調理実習に入ります。
メインの先生はここでショニアさんへバトンタッチ。普段からもご自宅で料理の腕を磨かれているので、とても手際よくお手本を見せて下さいました。

当日のメニューはこんな内容です。
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・チヒルトゥマ(鶏肉と卵のスープ)
・チキンソテーとバジェソース(くるみとスパイスのソース)
・ジョージア風サラダ 
・ムチャディ(トウモロコシ粉のパン)
・ジョージアワイン
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まずはチヒルトゥマ作りから。骨付きの鶏肉をお湯の沸いた鍋に入れ、ベースのスープをとります。しばらく煮続けるとアクと鳥の脂が浮いてくるのですが、アクだけを取り除き、脂は残しておきます。後ほどこの脂を利用し玉ねぎをにんにくを炒めてスープに投入します。普段、脂にも美味しさが詰まっているのでこの方法だと材料を無駄なく味わえますね。


スープをある程度煮続けたら、鍋から半分程鶏肉を取り出しチキンソテーに取り替かかります。取り出した鶏肉はバターを使ってフライパンで焼いておきます。ソテーにかけるバジェソースは、かなり贅沢な量のくるみを使用しているので仕上がりはなかなか濃厚。ソースの味付けは各テーブルでショニアさんに確認していただき完成です。


スープは仕上げにディルとコリアンダー、卵液を投入します。卵液を入れることで少クリーミースープになるのですが、急に熱いスープの中に投入するとボソボソのかき卵汁のようになってしまうので注意です。卵液に先に少し冷ましておいたスープを入れることで、スープ全体にきれいに馴染むようになります。 白く少しトロッとなったら成功!




ジョージア式のサラダは、バジル・イタリアンパセリ・ディル・コリアンダーの香草類をふんだんに使用した爽やかな香りのサラダ。トマトと香草の色合いが鮮やかです。


最後にとうもろこしのパンに取り掛かります。コーングリッツというとうもろこしを粗目に挽いた粉にオリーブオイルと塩とお湯を入れて記事を練り、生地は丸く形にしてフライパンでこんがり焼き上げていきます。焼き目がつくと香ばしい匂いが立ち込めました。


料理が完成し、実食!の前に皆さんお待ちかねのジョージアのワイン登場!今回は赤・オレンジのワイン2種の他に、講義にも出てきたチャチャを用意しました。お酒が行き渡ったら、ショニアさんに「タマダ」を務めていただき、ご挨拶からの乾杯!形式は違いますが、本場の「スープラ」気分で食事の開始です。




<スープ>
鶏のダシがきいたやさしく とても 上品な味のスープ。ディルとコリアンダーの香りが爽やかでアクセントになっています。ワインビネガーで酸味も効かせてあるので、 やさしい味ながらも物足りないということはありません。

<チキンソテーとバジェソース>
バジェソースはくるみをとても贅沢に使用しているのでもはや主役級の存在感。濃厚ですがしつこさはありません。まろやかなくるみの味だけではなく、にんにくも効いていて、少し淡白な鶏肉のソースによく合います。


<サラダ>
口に入れると、香草の香りがふわっと広がります。スープにもコリアンダーが入っているのですが、タイ料理や中華料理で食べる時とはまた違い、爽やかさが引き立てられています。生の青唐辛子を刻んで使用するのがまたアクセントになっていました。

<ムチャディ>
かりっと焼きあげているのでとても香ばしく、よくかむとトウモロコシのほのかな甘みがします。シンプルな材料の素朴で家庭的なパンです。バジェソースもこのパンととても相性が良いです。


<赤ワイン>
辛口の濃厚な味を想像していたのですが、フルーティーで甘口寄りなのでとても飲みやすいです。これなら確かにジョージアの方は1リットル単位で飲んでしまいそう。今回のような料理はもちろん、じつは甘いお菓子とも相性が良いそうです。

<オレンジワイン>
日本ではめずらしいオレンジ色のワイン。こちらは辛口寄りです。ぶどうというよりも、別の果物を使ったリキュールを飲んでいるかのような、華やかな香りがとても少し不思議で印象的でした。

<チャチャ>
度数の強い蒸留酒なので、小さめのグラスに注いでいただきます。同じ原料のブランデーなどのような芳醇な香りがふわっと広がります。のどがカッとするほどのお酒ですが、確かに寒いとき、風邪をひいたときには一気にぐいっと飲むと体がポカポカしそうです。(もちろん飲み過ぎには注意です。)




受講生の方たちは、ほとんど知らない方同士なのですが、一緒に料理を作り、おいしいお酒を一緒に飲むことで教室がとても和気藹々となり、和やかな雰囲気に包まれていました。チャチャをおかわりされる方もちらほらと。お酒と料理を楽しんだ後は全員で記念撮影。お疲れ様&ごちそうさまでした。

最初はジョージアという国の文化、お酒や料理ってどんなものがあるんだろう?と想像がつかなかったものの、目と胃袋で楽しく知ることができました。 


(写真:竹原舞/レポート:小笠原あおい)