シブヤ大学

授業レポート

2017/1/10 UP

学生注目!未来働き方会議@シブヤ大学
「個の時代のワークスタイルを考える」

学生注目!未来働き方会議@シブヤ大学
「個の時代のワークスタイルを考える」

お給料、会社の知名度、福利厚生などの待遇面、やりがい、自分の時間とのバランス。


仕事を選ぶ上で大切にしたいことは、人それぞれ異なりますが、


できれば楽しく仕事をしたい!という想いは誰もが持っているのではないでしょうか。


 


今回の「未来働き方会議@シブヤ大学 ~個の時代のワークスタイルを考える~」では、


4人の異なるタイプの先生をお招きし、それぞれの働き方についてお話を聞かせていただきました。


 


【未来働き方会議 生みの親 YADOKARI株式会社 ウエスギ セイタさん】


 


YADOKARI株式会社の共同代表取締役で、「ミニマルライフ」「タイニーハウス」「多拠点居住」などを紹介する、「未来住まい方会議」を運営されています。


ウエスギさんが「住まいを考える」から、「働き方を考える」に至ったきっかけは、3.11の東日本大震災でした。それまではバリバリ働いて稼ぐ日々でしたが、3.11によって、これまで当たり前だと思っていた日常が壊れ、「本当に自分が感じる幸せは?」と、価値観を見直すようになったそうです。


 



  • 与えられたフィールドで輝くのか?それとも自分で環境をつくるのか?


  


終身雇用の崩壊、人口減少、経済衰退、核家族化などなど。


私たちの親世代が過ごしてきた時代の当たり前はすでに崩壊。


それなのに毎日残業して終電で帰宅。そんな働き方を続けていいのか?と感じ、豊かな働き方を再編集することに取り組まれました。


そして、全社員出社義務なし、スーパーフレックス制度導入、パラレセルキャリア推進(副業OK)、2年で独立支援制度導入、10年間で50人のフリーランサー、14人の起業家輩出などを新しい働き方として取り入れました。


 


その結果、移住者増加、2拠点居住者増加、また多くのパラレルキャリアを持った人が育成されました。


しかし、出社義務がないことで朝起きられない人が続出。打ち合わせなどに遅刻したり、社会人としてやっていけなくなったり。合う、合わないがあり、半分以上の社員が辞めてしまったそうです。


 


自由であるがゆえ、各自の責任が大きくなり、自己管理ができないとやっていけない。


組織の中で感じる窮屈さは、守られているからこそ感じるものなのかもしれません。


 


責任を背負う代わりに自由を手に入れるのか?


早くも私の中で働き方会議が始まりました。


 


【未来働き方会議 議長 4th PLACE COMPANY, FIREPLACE  代表 渡邉 知さん】


 


大学卒業後、電通グループ に入社。人事等を経験し、その後リクルートへ転職するも、連日の残業と仕事の山。そんな忙しい日々を過ごす中で、東日本大地震を経験。宮城県出身ということもあり、このままの働き方で良いのか?と強い疑問が生まれます。組織改編や上長やお客様の交代など、組織の中で動くことは自分の人生をコントールできていない!と感じ、2015年5月 4th PLACE COMPANY, FIREPLACE設立されました。


 



  • 自分の人生をコントロールするには?


 


家庭や職場だけでなく、「人」と出会える場=オフラインコミュニティの大切さを感じている渡邉さん。


多層的な繋がりが産まれ、良質な人間関係を育む場所、場に火を灯し、場に集まる人の心に火を灯す会社、


ファイアープレイス(暖炉)を設立されました。


 


そして、『協働型:VENT VILLAGE 』『投資型:ROCKHILLS GARDEN 』『共同型.シェア別荘 』を手がけています。どの活動も、場とそこに集まる人の心に火を灯す魅力的な事業ですが、今のような形になるまでにはたくさんの苦労がありました。


 


開業当時は銀行の残高がどんどん減っていき、買ったばかりの車を売って、予算を工面。


銀行に融資をお願いして、、と苦労の連続でした。


今でも当時のトラウマから銀行の残高は見られないそうです。


 


大企業で働いた後、起業して華やかに仕事をしている人。


そんなイメージで話を聞いていたので、この言葉はとても印象に残りました。


華やかなイメージの影にたくさんの努力と挫折。


 


大変なこともたくさんあったそうですが、周りへの感謝の気持ちを改めて感じることができ、仕事に対してのやりがいも増したと話すその姿は、やりたいことを一つ成し遂げたかっこよさで溢れていました。


 


【4th PLACE COMPANY, FIREPLACE CMO(最高マーケティング責任者)小澤亮 さん】


 


建築系の学校に進学されていましたが、在学中におこなったヤフーショッピングでの仕入れとネット販売を膨大な量繰り返すうちに売れる商品の見せ方のノウハウをつかみ、このスキルを生かし、2008年にヤフーへ入社。コンサルタント業務に従事した後、2012年にヤフーから独立し、2016年より、4th PLACE COMPANY, FIREPLACE CMOを兼任されています。


 



  • 強みを生かして働く


 


個人事業主となり、よいものを作る生産者の出口をたくさんつくりたい!と数々のHPを時に無料で製作する日々。千葉にあるバウムクーヘンを販売するお店はHPを変更したことで、3ヶ月で売り上げが6.6倍にもなったそうです。


 


小澤さんのコンサルの強みはマーケティング、プロモーション、それに関わる写真撮影からWEBデザインまでをすべて一貫してできること。そして、相手に対して尊敬の想いを基にインタビューができこと。


 


「誰かが困っているときに手を差し出せる人になりたい、手が届く範囲を救いたい」と話す小澤さん。


 


自分の強みがわかると、救える人がわかり、そしてそれが仕事になる。


好きなこと×得意なことから生まれる仕事は、今はまだ存在しないものもあるのかもしれません。


でも、各自が誰かを笑顔にしようと仕事をしたら、お金とは別の価値がたくさん生まれてくると思いました。


 


【4th PLACE COMPANY, FIREPLACE 社長室 長谷川 哲さん】


 


電通グループに入社後、プロジェクトマネージャなどさまざまな業務を経験されたのち、2016年12月、Square 社へ中途入社。そして4th PLACE COMPANY, FIREPLACE 社長室を兼任されています。


 



  • 安定して働きたい?それとも常にワクワクしていたい?


 


契機は電通グループで長く働いていく中で6割の力でも120%の結果が出せるようになってきた時のこと。


仕事を有名なRPGゲームに例えるならば、ラスボスを倒してもゲームが終わらず、レベル上げを繰り返し、もうMAXでこれ以上あがらない!という状態。そんなゲーム(仕事)は果たして楽しいのか?そんなときに転職の話があり、現在に至るそうです。


 


つまらない現状から抜け出すため、軸足(給料が月払いでもらえる会社員)を持ち、もうひとつの足を届く範囲で広げて、やりたいことを楽しむ働き方。


1対1のトレードオフの働き方から、分数のように分割した働き方ができることで、安全を確保しつつパラレルキャリアにチャレンジできるように。


 


やりたいことがあっても、失敗したら?お金がなくなったら?と一歩を踏み出せない自分に、パラレルキャリアの可能性を知ったことで、働き方の新しい価値観が生まれました。


 


【働き方会議@シブヤ大学】


 


4人のお話を聞き、自分はどう働くのか?を各自が深く考えるきっかけとなりました。


そして質疑応答では、世代ごとに感じた疑問、また回答者よって異なる考えを聞くことができました。


 



  • 大企業から独立を決意できた根拠は?


→お客さんを勝たせる方法(自分にしかできないやり方)を見えるようになったから(小澤さん)


 



  • プライシングのつくりかたは?


→コントロールを放棄し、決めてもらいつつ最後は「えいや!」で言ってみる(渡邉さん)


 相場を見つつ、時間を割いてまでやりたくないことはせず、いくらならやるか?で考える(小澤さん)


 



  • 会社を辞める際に引きとめられる力にどう対応したらよい?


→自分にしかできない強みを持ち、組織で仕事をする必要性を逆に会社に問う(小田切さん)


 


 


どれも聞けてよかった!と思う内容でしたが、中でも私が印象に残ったのは高校生からの質問でした。


 


 



  • 安全を捨てられない・・


果敢にチャレンジしていく働き方を聞いたが、どうしても安全を捨てられない。何かのために勉強しているというよりは言われたからしている気がする。でも、勉強しないとどうなるのか?を考えるとやはり怖い。そんな自分に 虚しさを感じてしまう。


 


→ここにいる全員が怖がりだから勉強していい会社に入ろうと思った。そして、働いているうちに力と自信がついて、誰かに言われたからやるのではなく、自分の意思で動けるようになった。初めからうまくできなくて当たり前。やりたいと思うことができたときに動けるように、考えたり、力をつけていくことが大切だと思う。


(渡邉さん)


 


この言葉を聞いて思わず泣きそうになってしまいました。それは、疑問に思ったことを質問できる環境と、真剣に応えてくれる大人がいることのすばらしさからでした。


 


また質問されたことで自分自身も「なぜこの仕事をするのか?」と問われているように思いました。


やりたいことを見つけて進んでいる人への憧れと焦り、でもなかなか一歩を踏み出せない自分へのもどかしさと虚しさ。そんな想いに真摯に応えてくれる場所があったこと。


 


いろんな世代が参加したことで多様性に溢れた自由な場となり、それぞれの中で第2回、第3回と働き方会議が開かれるきっかけになった授業でした。


数年後、この授業をきっかけに新たな働き方が生まれる、そんな予感を感じました。



(レポート:伊藤扶美子 撮影:星野真希子・門育子)