シブヤ大学

授業レポート

2016/10/19 UP

カンチャンさんの花嫁キッチン
~インドのいまどき結婚事情~

カンチャンさんの花嫁キッチン ~いまどきのインド結婚事情~


 


「シブヤ大学 世界を食べるゼミ」主催の今回の授業のテーマはずばり、「インドの結婚事情とインド料理」。「世界を食べるゼミ」のコンセプトは、世界各国の料理を通して、食べ物だけでなく、その国の文化・歴史・社会、といった幅広い学びを得ることにありますが、今回は新婚生活を満喫中のカンチャンさんと、ご主人のダーラムさんを講師としてお迎えし、前半はカンチャンさんとダーラムさんの馴れ初めから結婚に至るまでのお話を、そして後半はお二人の思い出のインド家庭料理を皆で作って試食しました。


 


<カンチャンさんの生活・結婚の紹介>


インドでは今でもお見合い結婚が主流で、女性が24~25歳になる頃に両親が花婿を探し始めるそうです。最近ではお見合いサイトで探すケースが増えていて、カンチャンさんの場合は彼女が25歳になった頃に、ご両親と一緒にお見合いサイトを見始めたそうです。このお見合いサイトが日本と違ってなかなか興味深く、登録をすると相手の両親にコンタクトできるようになっていたり、宗教やカーストなども見られるのだそうです。実際のお見合いサイトも当日見せていただきましたが、宗教とカーストの組み合わせの選択肢が非常に多く、カンチャンさんとダーラムさんも全種類把握できていないとのことでした。


更にサイトでは生年月日、生まれた時間と場所によって相手との相性を占うマッチング制度があり、36点中20点以上だと相性がいいと言われていて、その場合は男女、そして双方の両親を交えて実際に対面するのだそうです。


カンチャンさんはそんな中、結婚よりも自分自身のキャリアに興味があったため、ご両親の反対を押し切り来日し、エンジニアとして東京で働き始めます。しばらくして、インド人のコミュニティーで出会ったのが現在のご主人のダーラムさんでした。初めは仲間内の友人の一人として出かけていた二人でしたが、あることをきっかけにお付き合いを始めるようになります。


とある日の夜中の0時過ぎに、カンチャンさん、ダーラムさん、そして友人数名で散歩に出かけ、自転車に乗ることができなかったカンチャンさんに対してダーラムさんが、「自転車の乗り方を教えてあげる代わりに、乗れるようになったらアロープラタ(ジャガイモ入りチャパティ)を作ってほしい」とお願いしたそうです。その夜、カンチャンさんは見事に自転車に乗れるようになり、「今夜は遅いから翌朝作るね」とカンチャンさんが言うと、「いやいや、今作ってほしい」言われ、なんと夜中の1時過ぎにカンチャンさんはルームメイトに怪しまれながらも、ダーラムさんのためにアロープラタを作ってあげたそうです!このことがきっかけで二人はお互いに好意を持ち始めましたが、カーストが違うために、結婚までの道のりは困難が多かったそうです。


ダーラムさんのご両親はカンチャンさんの写真を見ただけでOKしましたが、カンチャンさんのご両親はダーラムさんの写真すら見ようとせず、カンチャンさんの粘り強い交渉により、やっと会うことになったとか。いよいよカンチャンさんのご両親とダーラムさんの対面の日がやってきましたが、ダーラムさん曰く、ご両親による「面接」は3時間続き、「誰とどこに住んでいるの?」「何をしているの?」など矢継ぎ早に質問を受けたそうです。カンチャンさんのご両親はダーラムさんを気に入りましたが、そこからダーラムさんのご両親に会うまでに更に1か月ほど時間がかかったそうです。そんな長い道のりを経て、ようやく二人は周りに結婚を認めてもらい、結婚の準備を始めます。


インドの結婚式は日本のものよりも規模が大きく、カンチャンさん達の場合はゲストを500名招待し、5日間に渡って複数のセレモニーが行われたそうです。式の前日は、ダンスパーティーが開かれ、食事が振る舞われます。そして、翌日の20時~0時に披露宴、更に夜中の1時からセレモニーが始まり4時半頃終了。更に、翌朝の11時からまた別のセレモニーがあるという多忙ぶり!なぜこんなに遅い時間から式が行われるかというと、カーストによっても開始時間は異なるそうですが、ラッキーになれるベストな時間を僧侶が決めるのだそうです。国によって結婚式もだいぶ形式が違うようです。


 


<調理実習>


カンチャンさんとダーラムさんの結婚話を聞いた上で、いよいよインドの家庭料理の調理実習タイムです。本日のメニューは、お二人が付き合うきっかけとなったアロープラタ(ジャガイモ入りチャパティ)、トマトチャツネ、セビヤンキール(デザート)、チャイ、の4種類です。


まず前でカンチャンさんがデモンストレーションをしてくれ、それを見てから皆で実際に調理をしていきます。デザートも含め、どのレシピにもたくさんのスパイスを使っているのがとても印象的でした。カンチャンさんがやっていると簡単そうに見えたチャパティを綿棒で伸ばす作業が意外に難しく、それでも回を重ねるごとに皆作業が上達していきます。


デモンストレーションを見て作り方を覚える人、切る人、炒める人、焼く人、洗い物をする人、など、後半に行くにつれて作業がどんどん増えてきて忙しくなりましたが、各テーブルでチームワークを活かして美味しい料理がついに食卓に並びました。そしていよいよ待ちに待った試食タイム。うーん、美味しい!どのテーブルにも美味しそうな笑顔がたくさんこぼれていました。


最後にカンチャンさんとダーラムさんから生徒さんに向けての一言がありました。「皆さんのチームワークが素晴らしかった。インドではこんなのは経験したことがない」(ダーラムさん)。「家族に今回のことを話したら皆喜んでいた。特に母は自分のレシピなので、とても喜んでいた。私もこれを機に新しいレシピを作っていきたい」(カンチャンさん)。



何よりも、終始仲睦まじいカンチャンさんとダーラムさんが微笑ましく、とても印象的でした。ごちそうさまでした!



(写真、レポート:児玉美奈子)