シブヤ大学

授業レポート

2016/10/4 UP

自分を見つめてよりよい人生を!
~ 聞いて・話して・考える ~
定年後に本当にやりたい事

定年後に何をするか?

日本人の平均寿命は、男性で約80歳、女性で約87歳と世界でも有数の長寿国です。
そんな日本における一般的な定年は60歳。
これからの人生として、定年後の過ごし方を検討されている方も多いかと思います。


実際、世の中にはいろんなモノ・コトがあるし、できる環境ではあるけれど、
自分はいったい何をしたいのか?そんなお悩みを持つ人にとってのヒントとなるよう、
前半は3名のゲストスピーカーからのお話、後半は参加者同士の対話会という2部構成で、
自分が本当にしたいことを見つめていきます。



■ 所 英明さん 柏市役所地域づくりコーディネーター

父親の介護が必要になったのをきっかけに私立大学の職員を辞めて、オンライン古書店を開業した所さん。

これまでに、大学図書館のボランティアや「本まっち柏」という古本のフリマ、
「かしわ市民大学」という地域課題をテーマにした講義から地域活動へつなげる取り組みなど、
さまざまな活動に参加されており、現在も地域づくりコーディネーターとして、
「オヤジ☆イノベーション」という男性の地域デビューに焦点を当てた活動をされています。

「この10年間、気が付いたらば地域とかかわっていた。」とのこと。

地域とのかかわりを通して、ボランティア(市民活動)とビジネスとでは、
スタンスが違うということを意識するようになったそうです。

地域デビューのヒントとして、社会経験が豊富であっても、新人の気持ちで入っていく。
地域の中で困っていることが見えてくるまで待ってみる、そのくらいのスタンスがちょうどいい。
また、「好きでやっている」ことを忘れないことが大切で、活動していく中で問題なども出るが、
最終的には、その団体が何を目指しているか目的意識を共有していくことが大事とのことでした。

今回のお話から、地域デビューがうまくいかない理由の一つに、
スタンスの違い=ギャップがあげられるのかな、と解決のヒントが見えてきた気がしました。



■ 岡田 考司さん インテリアデザイナー/街づくり実行委員

インテリアデザイナーとして、商業施設のデザイン―レストランの内装や、デパートやブティック
といった売り場のデザインなど―をされてきた岡田さん。

商業デザインをしていく中で、デザインにはもっと違うことができるのではないかと考え始め、
ソーシャルデザインと言われるコミュニティーの中で、システムや仕組みを作っていくことに
興味を持ち始めたそう。

最初に、「三茶de大道芸」という三軒茶屋で実施されているフェスティバルの中で、
アートボランティアという、「大道芸をやっているとき、その街はちょっと非日常になる。
その非日常を作り上げるような装飾を街の中に飾り付ける」ボランティア活動に参加。

そこから地域の人たちとお付き合いをするようになり、「目黒のさんま祭り」や「三軒茶屋まち道楽」
などの実行委員を務めたり、「ワークショップデザイナー育成プログラム」への参加を通して、
コミュニケーションの場をデザインすることに目覚め、色々なことにかかわるようになったそうです。

「あるテーマを与えられて、それを企画して現実化していくことがすごく楽しい。」と岡田さん。
そういうことが地域の中でできるのが楽しいと感じて、活動をされているとのこと。

自分のできることを地域に役立てて、またそれを本当に楽しんでいることがとても伝わるお話でした。



■ 古田 光吉さん 耐震コンサルタント/住宅ローンアドバイザー

木造住宅の耐震化をコンサルタントする「古田アーキテクト」を起業された古田さん。

以前は大手住宅設備メーカーに就職し、30年以上勤めていましたが、
M&Aにより吸収合併されたのを機に早期退職。時を同じくしてがんを患われたそうです。

「病と災難はいつ来るかわからない。」

治療により思うように仕事ができないことを実感。自分のやりたいことをやってみたいと思うようになり、
創業者の卵を育てる勉強会に参加し、創業してやってみようという気持ちが次第に強くなっていったそう。

そこで、「倒れないまちを戸建住宅の耐震化で実現する」という事業を展開。
日本は有数の地震国であり、建物が1日倒壊せず保てれば、『圧死』の被害は抑えられるということから、
耐震化に力を入れているとのこと。

また、がんを患ったこれまでの経験から、患者には身体的・精神的・社会的な苦痛があり、
今ではやっと、がんは治るんだという見方もされるようになったが、
家庭だけでなく地域社会の協力も必要で、より良い世の中を作っていけるよう様々な活動に取り組まれているとのこと。

思いもよらぬ経験でも、それを活かして社会を良くするために活動されていて、
前向きな姿勢が大切なんだと感じました。



後半は、参加者同士の対話会。

ゲストスピーカーの方々にもご参加いただき、1チーム4~5人で各々が
自己紹介、講話の感想、4つの質問の回答などを伝え合い、聞き合い、話し合いを行いました。
年の差、男女差、それぞれ違う立場からの対話会でしたが、話しをしていくうちに盛り上がり、
時間が足りないと思うくらいみなさん活発に話されていました。

また、自分の意見を人に話すことで、普段意識していなかったことがより鮮明になったり、
他人の意見を聞くことで、自分の中になかったものが現れたりと、
対話会を通して、自分の考えをより深めていく良いきっかけになったのではと思います。


今回ゲストスピーカーの方々から共通して感じたのは、
「自分の能力(経験)を人のために役立たせる」ということに喜びを感じていて、
それを活かせる場を作っているからこそ、生き生きとされている。

まずは動くこと(活動すること)が何事も大切なのかなと感じました。



(写真:喜多村祐介 レポート:塩出京子)