シブヤ大学

授業レポート

2016/10/4 UP

渋谷の坂のものがたり
~まち歩き@渋谷駅周辺編

渋谷の坂のものがたり
~まち歩き@渋谷駅周辺編

■第一部 坂巡り編


9月10日に実施されたこの授業の教室は、「渋谷の坂」です。


みなさんが、普段何気なく歩いている坂には一つ一つ意味があります。本日は渋谷の有名なよく知られた坂から、繁華街からは少し外れた坂までまち歩きをしながら計7つの坂を巡りました。


改めて由来や歴史を楽しみながら坂を巡ることによって様々な発見がありました。


 


今回の先生は坂学会の理事 渡邊一夫さん です。まち歩きは近年のブームにもなっていますが、なぜそのなかでも先生は「坂」に興味を持たれたのでしょうか。


10年前、病気を患った際、主治医から血行を良くするために歩けと言われたことがきっかけだそうです。東京内の階段坂120余りを半年で制覇し、その後10年にわたり、都内と都内近郊、さらには全国の中を巡っているそうです。また、海外に足をのばすこともあるそうで、韓国にも行かれたとか。


 



  • 金王八幡宮、八幡坂


まず初めに向かったのは金王八幡宮です。金王八幡宮は、かつての渋谷城の跡になります。繁華街から10分ほど歩いたところに位置し、神社周辺は、渋谷とは思えない緑や静けさに包まれていました。


その後、八幡坂へ。この坂の名前の由来が前述の金王八幡宮です。実は、神社仏閣は坂と深いかかわりがあります。坂という言葉は、聖なる場所と俗の境から来たと言われています。聖なる場所である、神社や仏閣、お寺は高台にあり、俗なる場所である低地の境にあたります。後に紹介する氷川神社、御嶽神社、千代田稲荷神社も同じく高台に位置しています。パワースポット巡りなどをする際に、坂も少し意識してみるとまた、新たな見方ができますね!




  • 氷川神社、金王坂


氷川神社は、金王八幡宮よりさらに、東に位置しています。当日、お祭りの準備が進められており、普段はひっそりとしている神社もにぎわっている印象でした。ここには、珍しく、神社内に土俵があります。柵があり、子供が遊ぶことも許されていません。相撲は本来、神様に奉納するものだからということでした。急な階段があり、名前はないものの、他の神社の男坂に相当するものだそうです。


次に、国道246へ出て、金王坂へ向かいました。この坂は新しい坂です。金王八幡宮に由来する歴史ある町名、金王町が廃止されるときに、旧町名を惜しむためにこの名がつけられました。昔の地名が残っているだけで、歴史が感じられますね。


 



  • 宮益坂、御嶽神社


宮益坂まで来るとなじみがありますね。以前は、ここから富士山が見えたそうです!そのことから富士見坂とも呼ばれていました。今ではたくさんのビルに囲まれていますが、当時がうらやましいです。


御嶽神社は、坂を上り中腹左手に位置しています。ビル4階にひっそりとあるのですが、繁華街に近いからこそ神社の厳かさが強調されているように感じました。お祭りのときには、センター街をお神輿が通るという渋谷ならではの光景も目にすることができます。


 



  • 道玄坂、百軒店、千代田稲荷神社


道玄坂も言わずと知れた渋谷の代表的な坂ですね。この坂を上って右手に入ると百軒店が続きます。ここは、関東大震災後、復興のために人工的に開発された商店街だったそうです。当時は、有名な老舗が出店していました。百軒店を上っていくと、千代田稲荷神社があります。これは、かつて江戸城内にあった神社です。震災復興のため、五穀豊穣をまつるこの神社がこの百軒店に遷座されたようです。


その後、東急本店の近くを歩きました。曲がりくねった道を見つけ、先生が、ここは、かつての渋谷川の支流があったところ、と解説してくださいました。現在の道にもしっかりと川の歴史が残っているのだと実感しました。宇田川周辺ではそのような道が見られます。



 



  • 間坂(まさか)


この坂は、名前がとてもユニークですよね!渋谷LOFTの脇にある坂です。多くの方が、この坂の名前を知らずに歩いているのではないでしょうか。由来は西武とLOFTの間にあるから間坂と名付けられたそうです。渋谷には間坂(あいだざか)という坂があったため、間坂(まさか)とされました。


 




  • スペイン坂、オルガン坂


スペイン坂は、ラジオスタジオが閉鎖されたことが記憶に新しいですね!パルコ周辺にあり、階段のある小道から、ローマのスペイン広場とそれに続く階段の連想からスペイン坂と名付けられたのではないか、というのが渡邊さんの意見です。オルガン坂は、井の頭通り、東急ハンズからパルコへ続く坂です。私は、坂の名前までは、意識せずに歩いていました。音楽関係のお店が名前の由来だそうです。写真はスペイン坂になります。





以上が本日回った坂になります。


当日は天気に恵まれすぎて、日差しも強めでしたが、先生を始め、参加された方みなさんが足早に、興味津々で坂巡りをされているように感じました。


渋谷といえば、スクランブル交差点や109といったイメージが強いですが、「坂」という視点でまち歩きをするとまた違った渋谷の顔が見えました。そこに坂があるということから、それまでのいろいろな歴史を実際に歩いて実感しました。


ここ本当に渋谷!?と思うような場所があり、また、いつも通るこの坂にはこんな由来が!?と驚く場面がたくさんありました。


 


まち歩きやパワースポット巡りがブームになっているなか、「坂」にも注目してみるとより一層まちへの理解が深まると思います。


また、何気なく歩いている普段の坂にも由来があるはずです。少し足を止めて歴史を感じるとおもしろいですね。


 


■第二部 坂トーク編 


 


 約2時間強の坂巡りを終え、某カラオケ店での坂学第二部「坂トーク編」!


冷たいドリンクを飲み、談笑しながらゆるっと始まりました。


先ずは参加した生徒の皆さんから、改めて自己紹介と坂を巡ってみての感想を一言。


特に多かったのが「渋谷駅の近くに沢山の神社があり、こんなに落ち着いた場所があるんだ!」と驚きの声。


坂巡りを通して高台は神聖な場所と学び、坂の多い渋谷は「賑やかな都会」というイメージから「歴史ある街」へと少しイメージが変わったように感じました。


 


 皆さんが感想を話し終えると、渡邊さんから坂に関する講義が始まります。


講義の冒頭から衝撃!


実は坂には名前が無いことが一般的!と渡邊さんは語ります。


坂に名前があるのは日本だけで、日本でも東京が目立つ程度で、東京以外の都市では少なく、海外、特に欧米では坂に名前がないことが普通だそうです。


欧米の方からすると、「なぜ○○ストリートのように道に名前があるのに、わざわざ道の斜面にだけに名前があるの!?」という感覚なのだとか。。。


言われてみると坂も道の一部であるからわざわざ名前をつけなくても良いのでは?と思えてきます。


 


 では何故、日本で坂名がつき始めたかと由来をたどると江戸時代まで遡ります。


昔、江戸の街で町名があったのは町人在住地のみで、高台を占めていた武家地や寺社地には町名がなかったそうです。


しかも武家屋敷には表札がかかっていなかったそうで、町人達が道を説明するのに不便な状況だったとか。。。


そこで、武家地へ行く際に、同じように武家地の間を上がる坂がいくつもあり、区別がつかないので、目印となるものを付けて名前をつけたことが、江戸の坂名の由来だと考えられている、と渡邊さん。


名前をつける際も榎の木が見えるため「榎坂」と名付けたり、ちょっとした特徴からつけられており富士見坂や桜坂のように同じような名前がつけられていたことも多いようです。


 


 そんな日本独特とも言える坂名ですが、全ての坂名が江戸時代につけられたいうことではありません。一つの例が渋谷で有名な坂の一つであるスペイン坂。


この「スペイン坂」という名前は1970年代半ばにつけられ、認知度も高まったこともあり「スペイン坂=お洒落な坂」というイメージがつきます。


坂名がつくことで街並みも変わることが坂の面白さ!と渡邊さんは語ります。


 


 坂トークの盛り上がりは尽きませんが締めの時間も近づき、最後に生徒の皆さんから自身の好きな坂を一つ挙げて貰いました。


「そこまで坂に詳しくないのですが~」と皆さん前置きしながらも、スラスラっと坂名が出てきており、


坂に興味をもたれていたことが伝わってきます。


そのなか、生徒のお一人が新潟県にあるどっぺり坂のお話をされると、渡邊さんがすかさず「行ったことがある!」とどっぺり坂についてご説明。


さすが渡邊さん、新潟へも行かれているとは坂への熱意が半端ではないです!


 


 渡邊さんの坂への熱意と生徒の皆さんの坂への思いを共有したところで授業は終わります。


何も意識しないと上って疲れるだけの坂だけれど、周辺の歴史や坂名の由来を知るとワクワクして坂を上れることに気づけた今回の授業。


坂の多い渋谷の街を歩くことが今まで以上に楽しくなりそうです!!


(第一部レポート 高橋瑞希 第二部レポート・写真 原 貴行)